この一枚を聞け! [THE GREAT ROCK’N’ROLL SWINDLE / SEX PISTOLS]
今回、紹介するアルバムは1979年バンド解散後に発表された、SEX PISTOLSのドキュメンタリー映画「THE GREAT ROCK’N’ROLL SWINDLE」のサントラ盤です。数多くのアルバムを紹介してきましたが、このバンドをまだ紹介していなかったのは我ながら不覚でした。
1970年代中期、イギリスではあらゆる音楽スタイルが生まれた時代でした。70年初頭にTHE BEATLESが終焉を迎え、ハードロックが世に生まれ、音楽そのものが生き生きしていた時代であります。しかし、その反面で階級制度に対する反発で労働者階級が不満をぶつける手法のなかに音楽も含まれていました。そのような中で生まれた音楽こそが“パンク”なのです。そのパンクロックの筆頭に掲げるバンドこそがこのSEX PISTOLSです。
1975年、ロンドンの街で不良をしていたスティーヴ・ジョーンズ(ギター)とポール・クック(ドラム)でバンドの母体を作り、ブティックの店員だったグレン・マトロック(ベース)にオーディションで選んだヴォーカル、ジョニー・ロットンを加入させたのがバンドのスタート。しかも、この仕込みを行ったのがグレンが雇われていたブティックのオーナー、マルコム・マクラーレンであったのです。この人物は後にSEX PISTOLSには無くてはならない人物となっていきます。
1977年にベースのグレン・マトロックが脱退。その後釜にベーシストとして加入したのがシド・ヴィシャスであります。シドはこの時、まだ20歳の若者でありました。そしてこの伝説のメンバーでデビューアルバムのレコーディングに入るのですが、シドのベース演奏技術が著しく低かったので、デビューアルバムのベース・パートは全て、ギターのスティーヴ・ジョーンズが弾いている事は有名な話です!
デビュー間際にはレコード会社とのゴタゴタで、幾つかの契約破棄の後、ついに1977年オリジナル・ファーストアルバム「NEVER MIND THE BOLLOCKS HERE’S THE SEX PISTOLS(邦題:勝手にしやがれ)」を発売します。今まで存在してきた音楽シーンには無い、端的なドライブ感あるサウンドに、反体制的な歌詞がのり、前記の労働者階級の人たちに大ウケのバンドとなったのです。
ただ歴史的なバンドの中でこれほど短命だったバンドがあるでしょうか? 1978年初頭の初のアメリカツアーの最中、バンドはいきなり解散してしまいます。結成からわずか3年に満たない間でシーンを駆け巡ったバンドであります。実にパンクだ(笑)
解散後にそのバンド・ヒストリー?! ともいえる映画が製作されました。その映画こそが「THE GREAT ROCK’N’ROLL SWINDLE」であります。しかもジョニー・ロットンはバンドに嫌気がさしていたので、このアルバムの制作に加わっていません。したがって、ジョニー・ロットンが歌っているオリジナル・ヴァージョンがこのアルバムに含まれていないのです。しかし、そこはPISTOLS! 1曲目の交響曲っぽい“God Save the Queen”で始まり、ディスコメドレーのPISTOLS、THE WHOのカバー曲、“Substitute”やフランクシナトラの名曲、“My Way”をシドが適当に歌う。最後は自分たちをだれが殺したんだと言わんばかりの歌、“Who Killed Bambi”で締めくくっているところなど、全てが笑えるのです!
その本気なのかどうだか解らない楽曲にカッコよささえ感じるところがこのアルバムの素晴らしいところですね。奇しくもこのアルバムがリリースされる直前にシド・ヴィシャスが他界することも含めてパンクなのだと感じます。ただ、ジョニー・ロットンのファンの方には不評かもしれないアルバムですが・・・(苦笑)
そして、そのジョニー・ロットン率いるPUBLIC IMAGE LTD(P.I.L)がナント、今夏日本にやって来ます。やはりレジェンダリーなアーティストは観ておくべきですねネ。そんなこと思いつつ、とにかくこの1枚を聞け!!