この一枚を聞け! [THE TIN MAN WAS A DREAMER / NICKY HOPKINS]
今回紹介するアルバムは、あらゆるアーティストのアルバムでピアノを弾きまくっている英国のキーボーディスト、NICKY HOPKINSが1973年に発売した通算2枚目のソロアルバム「THE TIN MAN WAS A DREAMER(邦題:夢みる人)」です。
NICKY HOPKINSといっても日本ではあまり馴染みのないアーティストでありますが、知らない間に彼のピアノやオルガンを聞いているほど、有名なキーボード奏者なのです。1994年50歳で他界してしまった事から、活躍のほとんどは70年代に集中しています。
NICKY HOPKINSはもともとスタジオ・ミュージシャンでありましたが、1967年にジェフ・ベックとの共演がきっかけで、初期のジェフ・ベック・グループへと加入することになります。この活動こそが彼の大きな転機となります。「素晴らしいキーボーディストがいる」と英国で話題となり、ローリング・ストーンズやビートルズ、T・レックス等からアルバムへの参加が舞い込んでくるのです。ストーンズの“Sympathy for the Devil”や“Gimme Shelter”、ビートルズの“Revolution”でキーボードを弾いているのがこのNICKY HOPKINSなんですね!
活躍は主に70年代が中心と前述しましたが、60年代に交友を得たアーティストがその後もNICKY HOPKINSを採用し続けたことが、彼の大きなステップアップとなるわけです。キーボードのスタイルはこの時代ですからシンプルにピアノとオルガンで時たまメロトロンを弾く程度でありましたが、そのスタイルは奇抜で、バンドのサポートでツアーに参加した際もリハーサルはほとんど行わない、という変わり者だったようです(笑)。
60年代にはジェフ・ベックと2枚のアルバムを作り、69年にはジェファーソン・エアプレインのメンバーとしてウッドストックに出演。70年初頭にはストーンズのサポート・キーボーディストというとてつもない経歴から作られたこのソロアルバムも、なかなかとてつもない作品として仕上がっているのです!
まず、参加メンバーが凄い! ギタリストにジョージ・オハラなる人物が参加しています。実はこの方、何を隠そうビートルズのジョージ・ハリスンなのであります。インストナンバーである2曲目の“Edward”で、ジェフ・ベックばりの素晴らしいギターを弾いています。しかもこの曲以外に3曲も弾いているのです。他にもストーンズのミック・テイラーやロキシーミュージックのツアー・ギタリストでもあったクリス・スペディング、そしてストーンズの“Brown Sugar”で素晴らしいソロを吹いたサックス奏者のボビー・キーズも参加しています!!!
これだけ凄いアーティストが参加しているソロアルバムってなかなかないですよね。しかし、その凄いアーティストに埋もれず素晴らしいピアノプレイをしているのがNICKY HOPKINSなのです。合計3曲のインストが収録されていますが、1曲目に収録されているピアノのみのインスト、“Sundown In Mexico”などはクラシックを思わせるフレーズを匂わせたブルージーな曲に仕上げてきています。この辺に彼の才能が溢れているように感じるのです。
若くして他界してしまったNICKY HOPKINSでありますが、晩年は日本のドラマ音楽なども手掛けていたというではありませんか。生きていれば74歳、きっと渋いピアノを弾いていたに違いありません。私も今一度じっくりこのアルバム聞き直します! とにかくこの1枚を聞け!!