この一枚を聞け! [MIRACLE ROW / JANIS IAN]

MIRACLE ROW / JANIS IAN
 今回紹介するアルバムは、元祖歌姫ともいえるJANIS IANが1977年に発表した、通算9枚目にあたるオリジナルアルバム、「MIRACLE ROW(邦題:奇跡の街)」です。
 
JANIS IANと聞いて“懐かしいナ〜”と思う方は確実に50代を超えている方と思われます(失礼)。実際、JANIS IANはアメリカ生まれであったが、日本とヨーロッパでは絶大な人気を誇っていたアーティストであります。デビューは60年代後期ですが全く売れずにほぼ引退状態でありました。しかし74年にカムバックを果たし、75年に発売したアルバム「BETWEEN THE LINES(邦題:愛の回想録)」が大ヒット! その年にグラミー賞も獲得し、一躍スターダムに伸し上がったのです。ほんとアメリカンドリームですよね。

 私はJANIS IANを聞いた事の無い方に説明する際に、よくエルトン・ジョンの名前を出していました。ピアノを弾きながら切々と歌うところが、エルトン・ジョンの姿と重なったからです。そしてなによりサポート・アーティストに著名なアーティストを使わないところも好きな所でもあります。確かにクラプトンが参加しているとか、ポールがベースを弾いているとか言ったら、それだけ注目されることもありますよね。採用しない潔さがとても好きな所でもあります。

 またなぜ日本で人気が出たかと言うと、当時日本で放映していた人気ドラマの主題歌に、76年に発売したアルバム「AFTERTONES(邦題:愛の余韻)」に収録されていた“Love Is Blind”が使われたことでした。この時代は今よりドラマというテレビ番組が、日常生活にしっかりと定着していた時代で、視聴率なんかも今とは比べ物にはならないほど高かったのです。当時のテレビドラマ番組で外国人が歌う主題曲が何とも新鮮だったのを覚えております。

 そして翌年にこのアルバム「MIRACLE ROW」が発売となります。当然ですがテレビ局も黙ってはいませんよネ。今度は崩壊していく家族を題材にしたドラマの主題歌に、このアルバムに収録されている“Will You Dance?”を採用します。じっくりと歌い上げるバラードが、ドラマのシリアスさとリンクして何とも言えない雰囲気を出していたのです。その辺が昨今のドラマのタイアップ曲とは大きく違うと思うのです。機会があったらこちらのドラマもDVDとかで借りてご覧になってください。タイトルは「岸辺のアルバム」といいます。

 そしてこのアルバムですが、1曲目は“Party Lights”という曲で始まります。そのピアノの音がしっかりと耳に残りミディアムテンポの曲ですが、バラードのように聞こえるのもピアノ・マジックなのではないでしょうか。そしてナントいってもお気に入りは5曲目の“Candlelight”です。部屋を暗くして酒でも飲みながら聞くと泣いてしまいそうなくらい素晴らしいメロディーです。しかし、何でピアノの音がこんなにイイ音なんでしょう! 当然ですが、前記の“Will You Dance?”もしっかりと8曲目に収録されています。最近、日本ではアンジェラ・アキさんがカバーアルバムの中で日本語で歌っていました。こちらも中々ですね。

 実は私、こんなにいいんですと書いていますが、JANIS IANを生で観た事がありません(苦笑)。70年代と80年代に1度づつ来日しておりますが、その頃は全く興味が無いころでありました。興味を持ち始めた頃には、来日しないアーティストとなっていたわけです。しかし、2000年代に入ってからビルボードやブルーノートといった小さいライブハウスでライブを行うようになってくれたのです。嬉しいのですが、私はどうも短い時間でセカンドステージまでやるタイプのライブに慣れておらず、どうしてもフルライブが見たい派なんです。是非ともオーチャードホールあたりでゆっくりと観たいアーティストの一人ですね。

 とにかくこの1枚を聞け!!