この一枚を聞け! [NO SLEEP ’TIL HAMMERSMITH / MOTORHEAD]
今回紹介するアルバムはイギリスが生んだ極悪集団、MOTORHEADが1981年に発売した通算5枚目のアルバム「NO SLEEP ’TIL HAMMERSMITH(邦題:極悪ライヴ)」です。相変わらず邦題がさく裂しています!
1970年代半ば、まだこの世にHEAVY METALというカテゴリーが存在していない頃にMOTORHEADは誕生しています。70年代初頭から活動していたサイケデリックバンド、HAWKWINDでベースをを弾いていたレミー・キルミスターがこのバンドを解雇され、その勢いで作ったバンドこそがMOTORHEADです。バンド名もHAWKWIND時代に自身が作った曲から取っているのは有名な話ですね。
メジャーデビューは1977年。ベースはレミー、ギターにエディー・クラーク、ドラムにフィル・テイラーという3人で、一時期4人組の時もありましたが、この後もMOTORHEADは3人組というのが定番になるのです。冒頭でも申しましたがこの時、HEAVY METALというカテゴリーは生まれていませんが、この時代からスピード感は尋常でなく、大音量でツーバスがドコドコというスタイルを貫いております。80年代に入る間際に「New Wave Of British Heavy Metal(後のHEAVY METAL)」というムーヴメントが生まれ、MOTORHEADもHEAVY METALのカテゴリーに含まれるようになるのです。
しかし、レミーは一貫して我々は“HEAVY METALバンドではない!”と言い続けていました。確かに今聞くとスピード感は尋常ではありませんが、音は荒削りでブレイクもキッチリとしているわけでもない(失礼)。どちらかと言うとパンク等に通じるものがあると痛感します。確かAC/DCのアンガス・ヤングも“我々はHEAVY METALバンドではない!”と言っていたような...。こちらも通じるものがあるように感じるのです。
そしてこのアルバムは“HEAVY METALではない”MOTORHEADの魅力が最も伝わる初のライブアルバムです。前作のスタジオアルバム「ACE OF SPADES」はデビュー以来のヒットアルバム。このヒットアルバム直後のライブとあって、バンドの黄金期を収録したライブアルバムなのです。タイトルにHammersmithとありますが、ロンドンの有名なホール、Hammersmith Odeonで収録した音源ではないのです。この辺はこの時代によくあったことですね。
1曲目の“Ace of Spades”が疾走感が半端ありません! この時代に聞いたときはナント速くて、ナントえげつない音なんだと感じましたが、今聞くと普通に聴けるハードロックです。それくらい時代が流れているという事なんでしょうか...。アルバムに収録されている曲は“The Hamme”、“Overkill”、“Bomber”、“Motorhead”と、今となっては名曲ばかりが収録されている物凄いライブアルバムなんですね。
レミーのMarshallでガンガンに歪ませたベース音、エディー・クラークのソリッドな歪み、そしてやや走り気味なフィル・テイラーのドラムも正にこれが、This Is MOTORHEAD! なんです。ただこの黄金期のMOTORHEADは6年間しか続いていません。もともとレミーのバンドですからレミー・キルミスター= MOTORHEADであります。そしてこの後、何度もメンバーチェンジを重ねることになるのです。
バンドは近年まで精力的に活動を続けてきましたが、2015年にオリジナルドラマーのフィル・テイラーが死去。しかも同じ年にバンドの中心人物であるレミー・キルミスターもこの世を去ってしまいました。この時点でMOTORHEADは活動終了となった訳です。そしてこのアルバムを紹介するきっかけになってしまったのは、最後に残されたギタリスト、エディー・クラークの死去でありました。この音を奏でたアーティストはもうこの世に一人もいないという事です。残念ではありますがMOTORHEADのマインドは新しいジャンルのバンドの中で、しっかりと生き続けているという事が凄いですね。そんなことを思いながら今一度聞き返すとします。
とにかくこの1枚を聞け!!