この一枚を聞け! [PARADISE AND LUNCH / RY COODER]

PARADISE AND LUNCH / RY COODER
 今回紹介するアルバムはアメリカの職人派ギタリスト、ライ・クーダーが1974年に発売した通算4枚目のアルバム、「PARADISE AND LUNCH(邦題:パラダイス・アンド・ランチ)」です。

 ライ・クーダー、日本ではあまり馴染みのないギタリストであり歌手です。しかし、母国アメリカではプロ・ミュージシャンが憧れる“ミュージシャンズ・ミュージシャン”で、そのプレイスタイルは多くのアーティストに多大な影響を与えているのであります。

 ライ・クーダーは1960年代半ばにアメリカのブルース・アーティスト、タジ・マハールと共にライジング・サンズというバンドを組みます。タジ・マハールというアーティストも日本では余り馴染みのないアーティストですが、ローリング・ストーンズが60年代後期に企画制作したテレビ「ロックン・ロール・サーカス」にも参加しているアーティストです。同タイトルのCDにも収録されていますので、こちらも是非聞いてみてください。

 その後、ライ・クーダーはキャプテン・ビーフハートなどに参加した後に転機が訪れます。それはローリング・ストーンズが1969年に発売したアルバム「LET IT BLEED」への参加です。2曲目に収録されているロバート・ジョンソンのカバー曲、“ Love in Vain ”にてマンドリンを弾いています。このアルバムをきかっけにギターのみならず、多くの多種にわたった楽器の演奏技術が開花していきます。この事からライ・クーダーの活躍のきっかけにローリング・ストーンズが関わっているのは間違いないのです。

 そしてライ・クーダーの魅力はその音楽性であります。ロックやポップスと言うだけで片付けてはいけないその多彩なジャンルが最大の魅力なのです! 母国アメリカではルーツ・ミュージックなどと呼ばれていますが、ブルース、カントリー、ゴスペル、ラテン、ハワイアンなどあらゆるジャンルを取り入れており、実にそのロハスな感じが休日に会う音楽なのです(笑)。

 1曲目の“Tamp 'Em Up Solid”はトラディショナルなナンバーをライ・クーダー風に見事にアレンジし、1曲目から休日のホッコリした時間を演出してくれそうな曲なんです。5曲目にはロッド・スチュワート&フェイセスも演奏しているボビー・ウーマックの名曲“It's All Over Now”が収録されており、フェイセスのロックンロール色強いヴァージョンとは大きく違い、レゲエ感漂うそのアレンジが非常に心地よいのです。そしてラストはやはり影響受けた戦前ブルース・ミュージシャン、ブラインド・ブレイクの名曲“Ditty Wah Ditty"”で締めくくっているところも実に渋いのです!!

 また、ライ・クーダーはスライドギターの名手として知られています。スライドギターと言えばオールマン・ブラザーズ・バンドのデュアン・オールマンとよく言われますが、個人的にいうとライ・クーダーの方が圧倒的に好きなサウンドであります。くわえてライ・クーダーの更に凄いところはフィンガー・ピッキングの名手でもあること! あらゆるオープン・チューニングを駆使してプレイするスタイルは、他の追従を許さないと言ったところでしょうか。

 90年代になるとライ・クーダーの活躍はさらに幅広くなります。インドのミュージシャンと共演したり、キューバのミュージシャンとアルバムを作ってみたりと、まさにワールドミュージックにどっぷりです。その活躍からなのかグラミー賞に何度も受賞しているところも凄いのですヮ。ここ数年は来日していませんが、最近是非見ておきたいアーティストの一人であります。とにかくこの1枚を聞け!!