この一枚を聞け! [TEN YEARS AFTER UNDEAD / TEN YEARS AFTER]
今回紹介するアルバムはアルヴィン・リー率いるTEN YEARS AFTERが、1968年に発売したライブアルバム「TEN YEARS AFTER UNDEAD(邦題:アンデッド [90年代頃まで]、イン・コンサート [現在])」です。
TEN YEARS AFTERは1966年にイギリスで結成されたブルース・ロックバンドです。60年代中期と言えば「第1次ブリティッシュ・インヴェイジョン」の真っ只中で、ビートルズやローリング・ストーンズ、キンクス、ザ・フーといった多くのバンドがデビューし、一世を風靡し出した頃です。その中で、更に泥臭いブルースを母体とした、ギター中心のバンドがデビューしました。そのバンドこそがTEN YEARS AFTERです。
TEN YEARS AFTERの中心人物はギタリストのアルヴィン・リー以外の何者でもなく、アルヴィン・リー=TEN YEARS AFTERと言っても過言ではありません。そしてこの時代に活躍していたバンドのギタリストと大きく違っているところがアルヴィン・リーにはありました。それは“速弾き”です! この時代はコード中心で構成していたバンドがほとんどですが、アルヴィン・リーは“速弾き”に非常にこだわっていたのです。多分ですが“速弾き”というカテゴリーはアルヴィン・リーから生まれたと私は思っています。だだ現代の“速弾き”と比べると「遅いじゃん!」っていう方もいると思いますが、時は1960年代であって、今から50年も前の話であることをお忘れなく(笑)
デビューは1966年ですが、本作品は2作目です。いきなり2作目がライブアルバムってと思うでしょうが、それくらいアルヴィン・リーのギターは当時衝撃的であって、ライブの方が凄さが伝わる事から、ライブ盤になったとも言われています。それにしても2枚目からライブ盤って今では考えられない事ですよね。
1曲目に収録されている“I May Be Wrong, But I Won't Be Wrong Always“”からインプロ全開で、70年代に初めてこのアルバムを聞いたとき、ナント速いギターソロだと感じたほどでした。前記のように今聞くとそれほどではありません(苦笑) 4曲目にはジャニス・ジョップリンも歌った、“Summertime”がインストで演奏されています。これがまた実にスウィングしていてカッコいいのです。そして最後に収録されている曲がTEN YEARS AFTERの代表曲である“I'm Going Home”です。
このアルバムが発売された1年後に行われた伝説のフェスティバル、「Woodstock Music and Art Festival」に出演した際に演奏した“I'm Going Home”が、TEN YEARS AFTERを不動の人気にしたとも言われています。とにかく、ギターを弾きまくっている曲なのです。同時に出演したジミ・ヘンドリックスは同じ弾きまくっているのでも、明らかに違うタイプのギタリストとわかるのも面白い点ですね。
またこの時代、レスポールやストラト、SGといったソリッドのギターが主流であった音楽シーンでありましたが、アルヴィン・リーはGibson ES-335を使い続けていました。なかなかファンキーな仕上がりになっていますので、興味ある方は是非ググッて見てください。2000年初頭にはこのギターをシグネチャーモデルとしてGibson社が発売したのも懐かしい思い出ですね。
バンドは1974年に解散してしましますが数回の限定結成の後、1988年に再結成をし、アルヴィン・リーも2003年から参加して順風満帆にバンドは動き出していました。しかし2013年、病気の為にアルヴィン・リーは手術を行いましたが、術後に合併症にて他界してしまったのです。68歳でした。
現在では“速弾き”という言葉は聞きなれた言葉ですが、やはり60年代にこのムーブメントを作ったという事は本当に凄いことです! そんなことを噛みしめながら、このアルバム再度聞くこととします。とにかくこの1枚を聞け。
*文中ではオリジナル盤の曲順にて解説しております。