この一枚を聞け! [LATE FOR THE SKY / JACKSON BROWNE]
今回紹介するアルバムは2年半ぶりの来日公演を終えたばかりのJACKSON BROWNEが、1974年に発売した通算3名目のオリジナルアルバム「LATE FOR THE SKY(邦題:レイト・フォー・ザ・スカイ)」です。
JACKSON BROWNEは1972年、アルバム「SATURATE BEFORE USING」でデビューします。この時代、イーグルス、ドゥービー・ブラザーズなど、多くのウエストコースト・サウンドのアーティストが世に出てきます。60年代後半まで盛んであったフラワー・ムーブメントが少しずつなりを潜めて、新たにアメリカ西海岸で生まれた“明るい音楽”こそがウエストコースト・サウンドでありました。
その中でバンドではなくソロアーティストとして絶大な人気を誇っていたのがJACKSON BROWNEであります。交友関係も幅広く、デビュー当時にはイーグルスの故グレン・フライ等と同じアパートに暮らし、イーグルスのデビュー曲である“Take It Easy”はグレン・フライとJACKSON BROWNEの共作なのは有名な話です。ちなみにJACKSON BROWNEの2枚目のアルバム「FOR EVERYMAN」にはJACKSON BROWNEヴァーションの“Take It Easy”が収録されています。
さて今回何故このアルバムを紹介するアルバムに選んだかというと、70年代に発売された5枚のアルバムの中で、このアルバムは最もミドルテンポやバラードが多いアルバムになっている点です。1曲目に収録されているアルバムタイトルでもある“Late For The Sky”はとにかく素晴らしいメロディーライン! この曲を1曲目に持ってくるかという潔さや切々と歌い上げるこの曲こそ、JACKSON BROWNEの魅力ともいえる曲だと思います。そして作詞面でも感動させてくれます。この曲のタイトルである“Late For The Sky”という言葉は、メロディーの最後の部分である1箇所にしか出てきません。そこも実に粋な作りです! また、5曲目に収録されている“For a Dancer”もまた良いバラードです。夜暗くした部屋で聞いていると、急にお酒を飲みたくなるような曲なんです(笑)
特筆する点はJACKSON BROWNEの初期のアルバムには、デヴィッド・リンドレーなるアーティストが参加しています。日本では大々的に有名なミュージシャンではありませんが、アメリカ国内ではミュージシャンズ・ミュージシャンとして超有名なギタリストです。ギターのみならず、バンジョーやマンドリン、ワイゼンボーンなどを巧みに操り、スライドギターなどは名手の一人と言われています。このデヴィッドがこのアルバムでも大活躍している事は見逃せない点といえますネ。
私が初めてJACKSON BROWNEのライブを初めて見たのは1989年、神宮球場で行われた「JAPAN AID」なるライブでした。この頃ライブエイド等、世界的にチャリティーを目的とした多くのコンサートが各国で開催されました。「JAPAN AID」も各国から多くのアーティストを集って行われたコンサートで、トリはピーター・ガブリエル。そのトリ前がJACKSON BROWNEで実にこの時、前記のデヴィッド・リンドレーもそのバンドに参加していたのです。この時演奏された”For Everyman”は今でも忘れることができません。
そして先日、JACKSON BROWNEの来日公演を観てきました。70歳目前だと言うのに素晴らしい歌声が健在であることにビックリ! そしてここ最近、盟友であるイーグルスのグレン・フライ、オールマン・ブラザーズ・バンドのグレッグ・・オールマン、そしてトム・ペティーを亡くし、セットリストにそれぞれの曲をトリビュートしていたのが実に悲しく、印象的でありました。そして観客からのリクエストに答え、セットリスト外の曲を多く演奏したことに更にビックリ!! その中にナント“Late For The Sky”も含まれており、涙腺崩壊状態で観ていた筆者であります(苦笑) やはりレジェンダリーなアーティストはゼッタイ観ておかなければならないことを痛感した公演でした。その思いを噛みしめながら、またこのアルバムを聞くとします。とにかくこの1枚を聞け!!