この一枚を聞け! [NOTHIN’ BUT TROUBLE / BLUE MURDER]
NOTHIN’ BUT TROUBLE / BLUE MURDER
今回紹介するアルバムはメタル界の貴公子、ジョン・サイクス率いるBLUE MURDERが1993年にリリースしたセカンドアルバム「NOTHIN’ BUT TROUBLE(邦題:ナッシング・バット・トラブル)」です。
ジョン・サイクスと言えばへヴィーメタルが全盛だった1980代に、日本で人気のあるギタリストの5本の指に入るくらい有名なギタリストでありました。NWOBHM時代(*)の先駆けとなるバンドTYGERS OF PAN TANGで世に出て、その後にTHIN LIZZYのフィル・リノットに認められ解散間際にLIZZYに加入。ここから彼のスター街道が広がっていきます。LIZZY解散後にはWHITESNAKEに加入し、名作「WHITESNAKE(邦題:白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス )」で確固たる地位を得ました。WHITESNAKEを脱退後は、バンドで活動を共にしていた渡り鳥ドラマーことコージー・パウエルと共に、BLUE MURDERの始動に動き始めます。
しかし活動には様々な支障が生じ、最終的にはドラマーにはVANILLA FUDGEやジェフ・ベック率いるBECK,BOGERT & APPICEのドラマーであるカーマイン・アピス、それにジミー・ペイジとポール・ロジャースが結成したスーパーバンド、THE FIRMのベーシストであるトニー・フランクリンという布陣でバンドは結成されました。
1989年にデビューアルバム「BLUE MURDER」で華々しくデビュー。来日公演も行われバンドは順調に活動を始めていました。しかし、その後一切音沙汰はなしで数年が経過し、90年に入ってもBLUE MURDERの動きは全く見えてきませんでした。1992年になるとその活動しない状況に耐えきれずにカーマイン・アピスとトニー・フランクリンが脱退してしまいます。3人のバンドなのに、と思うのですが、このバンドはジョン・サイクスがいればBLUE MURDERなのです(笑)
翌1993年に遂にこのアルバム「NOTHIN’ BUT TROUBLE」が発売されます。中ジャケには新しいメンバーで微笑むサイクスの顔が・・・。アルバムを聞いてみると1曲目の“WE ALL FALL DOWN”はスピード感溢れるリフに冴えわたったサイクスのギターソロが冴えわたります。2曲目にはなんと、スモールフェイセスの名曲“ITCHYCOO PARK”が収録されています。3曲目の“CRY FOR LOVE”を聞いているときに気がつきました。独特のフレットレースベースの音。そうなんです、明らかにベースはトニー・フランクリンの音。しかも聞き返してみるとドラムもアピスなんです。1曲目のオカズの部分なんて正にカーマイン・アピスの音なんです。
実はこのアルバムはカーマイン・アピスとトニー・フランクリンが在籍している時に、ほぼリズム録りが終了していたらしい作品なのです。ギタートラック、ヴォーカルや一部の曲を除いては黄金期のBLUE MURDERサウンドが聞けるアルバムでもあるのです。クレジットには中ジャケに写っているメンバーの名前が記載され、ゲストミュージシャン扱いでカーマイン・アピスとトニー・フランクリンの名前が載っているところもこのアルバムの面白いところです。
このアルバムを発表後、BLUE MURDERの活動はほとんどなくなり、SYKESとしての活動に移っていきます。2004年、一時的のBLUE MURDERのメンバーと活動を行い、LIZZYの再結成に一時的にその姿を現しました。しかし、最近ではジョン・サイクスの活動も表立ったものがありません。一世を風靡しギタリストのだけに、再び一戦に戻ってきてほしいですね! 黒のレスポール・カスタムを首をかしげ、一心不乱に速弾くサイクスが是非見てみたい、そんな風に思う今日この頃っす。そして、とにかくこの1枚を聞け!!
*NWOBHM/ New Wave Of British Heavy Metalの略で、70年後半にイギリスで起こった音楽ムーブメント。