この一枚を聞け! [ROMANTIC WARRIOR / RETURN TO FOREVER]

ROMANTIC WARRIOR / RETURN TO FOREVER
ROMANTIC WARRIOR / RETURN TO FOREVER

 今回ご紹介するアルバムは、ジャズ界の重鎮とも言われるスーパーミュージシャンが一堂に会したバンド、RETURN TO FOREVERが1976年に発売した「ROMANTIC WARRIOR(邦題:浪漫の騎士)」です。

 RETURN TO FOREVERはジャズ界に君臨するキーボーディスト、チック・コリアとギターみたいにベースを弾くベーシスト、スタンリー・クラークを中心に作られたバンドです。初期の頃のRETURN TO FOREVERはあまり詳しくはないのですが、このアルバムだけは特別なのです!

 結成は1972年ですが1973年になるとドラムにレイニー・ホワイトが参加、その後何人かのギタリストが参加するが、1974年にバンドのサウンドが劇的にロック色が濃くなってきます。その原因になったともいえるのが、ギタリストにアル・ディ・メオラを参加させたことでしょう。この時ディ・メオラはまだ20歳! しかしその年齢をも超越するギターテクニックは完璧ともいえました。

ディ・メオラが参加したことでロック色が濃くなったジャズバンドでありましたが、好転した理由のひとつがロック・ファンにもジャズアルバムが売れたことにあります。70年代中期はプログレッシブ・ロックが全盛の時代でありました。その音楽性がジャズを基本としたプログレ・バンドのSOFT MACHINEや初期のU.Kなどにも共通性があることから、多くのプログレ・ファンもこのアルバムをこぞって聞いたのです!

 また、プログレ・ファンが聴いた理由として変拍子もポイントでした(笑) さらに、アルバムそのものがコンセプト・アルバムであることと、ALLインストという事も好き嫌いをなくしたポイントともいえます。そして、このアルバムの中でディ・メオラはギターを弾きまくっています。特に20才の新人が書いた曲とは思えない、“Majestic Dance”などはホントにビックリするような難解曲なのです。世の中には凄い人がホント居るもんだと当時は感心いたしました。

 しかし、そんなに長く続かないのがこの時代のバンドの運命! ディ・メオラとレイニー・ホワイトがこのアルバムを発表したあとバンドを脱退してしまいます。そして、ディ・メオラはRETURN TO FOREVER時代の人脈から集結させたメンバーに、キーボーディストであるヤン・ハマーを加えて制作したアルバムこそが、1977年に大ヒットしたソロアルバム「ELEGANT GYPSY」なのであります! うまいことハマりましたね〜(笑)

 1981年、単独で初来日を果たしたアル・ディ・メオラの公演を中野サンプラザに観に行っております。その際、「ELEGANT GYPSY」ではパコ・デ・ルシアを共演したナンバー“Mediterranean Sundance”を、マリンバとギターのデュオで演奏したのにはビックリ仰天だったのを憶えております!

 ジャズは聞かないけどそのテクニックに浸ってみたいという方には超お勧めのアルバムでございます。また、RETURN TO FOREVERは在籍していたアーティストが有名なジャズ、フュージョン系のアーティストの宝庫でもあります。スティーブ・ガッド、アール・クルー、フランク・ギャンバレと挙げたらきりがありません(笑)その点も要チェックですね。とにかくこの1枚を聞け!!