この一枚を聞け! [PHANTASMAGORIA / CURVED AIR]

PHANTASMAGORIA / CURVED AIR
今回ご紹介するアルバムは、イギリスを代表するプログレッシブ・ロック・バンド、CURVED AIRが1972年に発売したサードアルバム「PHANTASMAGORIA (邦題:ファンタズマゴリア -ある幻想的な風景-)」です。

 日本では全く馴染みのないバンドかもしれませんが、母国イギリスでは代表的なプログレ・バンドで、女性ヴォーカルで形成されたバンドではアニー・ハズラム率いる“ルネッサンス”と人気を二分するバンドなのです。70年代数多くのプレグレ・バンドを流出させたイギリスですが、女性ヴォーカルのバンドは当時でも珍しく、女性ならではの声域からあらゆる表現を可能にしたとも言えるのです。

 そもそもプログレッシブ・ロックは1960年代後半に誕生しました。当時、演奏する曲の長さは長くても4分程度だったのに比べ、プログレは10分超えはざらで、そのすべてがクラシックやジャズが基本となった楽曲となっていました。特に自身の音楽グラウンドをクラシックから学んだアーティストが多く、バンドのどれもが変拍子や起承転結がはっきりした曲作りになっていたのも特徴的と言えるでしょう。

 このCURVED AIRもご多分に漏れず、クラシカルな部分にブリティッシュ・フォークを加えたような壮大なサウンドがバンドのサウンドの中心となっています。プログレバンドのほとんどがキーボードがその中心にあるのですが、このバンドのさらなる変化はそのサウンドにヴァイオリンを加えているとことなのです。オリジナルメンバーであるヴァイオリン&キーボードのダリル・ウェイがこのバンドのキーポイントともいえます。4曲目に収録されている“Cheetah”ではその存在感を前面に出しています。

 また、CURVED AIRの特徴として非常にメンバーチェンジが激しいこと(笑) ヴォーカルは終始ブレずにソーニャ・クリスティーナが担当していますが、前記のダリル・ウェイも70年代中期にバンドを一端離れてします。その不在時に加入していた人こそ、フランクザッパやロキシー・ミュージックで活躍していたエディー・ジョブソンであります。彼もキーボードとヴァイオリンを巧みに操る事から、CURVED AIRにとっても好都合の人材だった思います。実際はアルバム1枚しか参加せず、再びダリル・ウェイがバンドに戻るところなどはプログレバンドに起こりうるアルアルなのです。

 そして、もう1名後にブレイクするドラマーがこのバンドに在籍していました。それは後にポリスのドラマーとなるスチュワート・コープランドです! 1975年から76年までの間に在籍し、2枚のアルバムを残して脱退しています。その後に結成したバンドこそがあの“ポリス”なのです。なかなか熱い話ですよね〜!! プログレッシブ・ロックは素晴らしいミュージシャンの宝庫とも言っても過言ではありません。

 先日、日比谷野音で開催された「PROGRESSIVE ROCK FES 2016」に行ってきました。オープニングアクトで日本のピンク・フロイド・トリビュート・バンド「原始神母」が登場のあと、ジェネシスのギタリストでもあったスティーブ・ハケットが登場! 前半、オリジナル曲を披露した後、ジェネシスの曲のオンパレード!! “The Lamb Lies Down On Broadway”、“Firth of Fifth”、”Dance on a Volcano”はもちろんのこと、”The Cinema Show”を演奏した時には泣きそうになりました。そしてトリを飾るはCAMEL!! もう貫禄の一言。演奏性からギターサウンドまで全てにおいてパーフェクトでした。オープニングに名曲“Never Let Go”を演奏し、“Rhayader”ではギターのアンドリュー・ラティマーが見事なフルートを披露。そして“Lady Fantasy”まで披露するという豪華版。本当にプログレッシブ・ロックの素晴らしさを体感できたイベントでした。

 ここの所、レジェンダリーなプログレ・アーティストの他界が続き、シーンに悲しみをもたらしていますが、まだまだ素晴らしいバンドが沢山います。このようなイベントでドンドン日本に来日してくれたらいいナ! いまはとにかくCURVED AIRをもう一度聞き直すとします。とにかくこの1枚を聞け!!