スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」最終回

Fender Custom Shop / The George Harrison Tribute Rosewood Telecaster



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 今年1月のNAMM SHOWでそのプロトタイプが展示され、注目を浴びていたモデルです。フェンダーカスタムショップでジョージ・ハリスン・トリビュート・ローズウッド・テレキャスターが製作されることが正式に発表されましたのでご紹介しましょう。

 本器は1968年末、ロジャー・ロスマイズルとフィリップ・クビキ(フィル・クビキ)によってジョージ・ハリソンに手渡されたオールローズウッド・テレキャスター All Rosewood Telecasterを完全再現したものとなります。Let It Beセッションやルーフトップ・コンサートで有名なギターですが、オリジナルは1969年にデラニー&ボニーのデラニー・ブラムレットが譲り受け、2003年以降はオリヴィア・ハリスン夫人が所有していると言われております。

 カスタムショップでは、これまでも何度かオールローズテレをリイシューしてきましたが、今回はマスタービルダーのポール・ウォーラーPaul Wallerが、その実物を徹底的に検証、細部まで緻密にプロファイリングを行ってレプリカしております。

 ポール・ウォーラーは、これまでもCharモデルの「カリズマ Charizma」や「フリースピリッツ Free Spirits」を製作するプロジェクトを牽引しており、日本国内でもとりわけ人気の高いビルダー。アリゾナ州フェニックスにあるロベルト・ベン・スクール・オブ・ルシアリーでギターの製作を学んでおり、2003年にフェンダーに入社した後は、当時カスタムショップの中でリーダー格であったマーク・ケンドリック(2016年1月にFMICから独立)の助手としてキャリアを積んできました。

 とても気さくな人柄で、非常に丁寧・端正な仕事をしてくれる印象があり、イシバシ楽器店ではマスタービルダーになる以前より、彼に監修(oversee)してもらったカスタムオーダーを多数依頼してきました。2010年当時の工場出張のとき、私もポールのマスタービルダー昇格が発表されたディナーに参加していましたので、個人的にとても馴染み深いビルダーです。

 このモデルのために、大量に確保されたローズウッド材の中から品質・木目を特別に厳選した4ピースのローズウッドボディは、当時と同様に0.30インチの薄いメイプル板を挟み込んだサンドウィッチ構造になっております。ネックはワンピースではなく、ローズウッド指板をラミネイトした貼りローズ指板となるため、製作工程でトラスロッドを埋め込む際のスカンクストライプやヘッドキャップがないのも初期モノならではの特徴となります。

 インスペクションの結果、ナット幅は従来のヴィンテージタイプより1/8インチ(約0.3mm)広くなっていることが分かり、また、その当時の年式で標準となっていたトランジションロゴではなく、60年代前半のスタイルで塗装の上にスパゲッティロゴ・デカールが貼られています。ストリングスガイドの位置もナットに近いところに位置しており、ナット部分にかかる弦の角度・テンションが、ややきつめになっているというディテールまで精巧に復刻されていますね。

 電装系では、2013年に現役を引退したフェンダーレジェンドであるアビゲイル・イバラ女史(1956年にフェンダー入社)が手がけたハンドワウンド’68ピックアップを搭載。ジョージへの敬意に満ちあふれた美しく明瞭なトーンは格別でしょう。史実に基づき、全体の仕上げは、クローゼットクラシック・フィニッシュによる軽めのエイジングに留められております。

 ボディ内部構造に関しては、近年ソリッドボディ説が有力となっておりましたので、ポールに聞いてみましたが、実際に分解してみたところ、後発品のようにセミホロウだったことが判明したそうです。エクストラキャビティなしのチェンバードボディだったとのことで、興味深いところであります。

 こちらのトリビュート・テレキャスターは世界100本限定での製作となるため、あいにく店頭に並ぶ可能性はあまり期待できませんが、イシバシ楽器店では現在キャンセル待ち予約ご希望の方向けにウエイティングリストをお作りしております。販売価格は178万円(税別)でのご案内です。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。

 最後に、お楽しみいただきました「スターキー星の月刊 GUITAR TALKING」ですが、今回が最終回となります。ギターを愛する事がしっかりお伝えできていれば幸せでございます! 来月号からは“新しい案内人”が素晴らしい楽器をお伝えできるはずです。ぜひ新しいコーナーにご期待くださいませ。2011年4月より5年間、ご愛読いただき誠にありがとうございました。 またどこかで皆さんとお会いできること楽しみにしております。

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!





<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店〜御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてサブマネージャー(副店長)を務めている。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。