スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」第28回

Fender USA 1971年製 Bronco Red



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 みなさん、こんにちは。スターキー星です!

 1967年から1980年代初頭のCBS時代に製作されていたスチューデントモデルであるブロンコが入荷しましたのでご紹介しましょう。1968年当時のカタログを見てみると、ラップスティール・チャンプのアンプセットが$167.50で掲載されている隣に、Fender Bronco Setとして同様のアンプセットが$265.50で並んでいます。このセットアンプは8インチスピーカーのヴァイブロ・チャンプを基にしたものです。カラー表記は上位機種と異なり、単に「Red」と記載されております。

 ギターの特徴としては、ミュージックマスターやデュオソニックといったエントリー機種の系譜を継ぐモデルで、デュオソニックIIと同様に1964年に発売されたムスタングのオフセットウェストボディ(左右非対称にくびれたシェイプ)を流用して製作されています。ミュージックマスターやデュオソニックと異なる大きな特徴は市場のニーズに応えてトレモロ機構を搭載していることが挙げられます。

 画像でもご覧いただけるように「ブロンコ・ヴィブラートシステム」という当時新しくデザインされたトレモロを採用しています。フェンダー社のお家芸でもあるヴィブラート機構のなかで、シンクロナイズドトレモロ(ストラトキャスター)、フローティングトレモロ(ジャズマスター/ジャガー)、ダイナミックトレモロ(ムスタング)に続く第四弾にあたります。ボディ内部には垂直に1本のスプリングが仕込まれており、ブリッジを支える2本のスタッドボルトの窪みが直接ブリッジプレートのエッジに噛む構造は、1979年にパテント承認されたロック式トレモロで一世を風靡したフロイドローズの構造にも通ずる部分があります。スプリングと噛むネジの締め具合によってブリッジプレートのスラント具合が調整できますので、任意のテンションがかけられる仕組みになっています。

 24インチ・ショートスケールネックで、ムスタングでいうジャックプレートの部分にまで伸びた3プライのピックガードは15点留めで、6弦側ホーン部のRとソンブレロ風ノブとの組み合わせがチャームポイントです(笑)。ピックアップだけでなく、ジャックもピックガードにマウントされておりますので、ボディ側への結線はなく、ポン付けされているだけという、いかにもフェンダーライクで合理的な設計となっております。

 CBSフェンダーというと産業化、形骸化しているダーティな印象をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、このようなエントリークラスのモデルにも、独自デザインのブリッジ機構を搭載したりと、次世代のミュージシャン(未来のお客様?(笑))を丁寧に育成するフェンダー社の真摯な姿勢が垣間見えて、何とも言えない情趣が感じられます。単純にかっこいいし、音も良いです。
「ブロンコ」というネーミングは、北米西部平原に生息している野生馬を指す言葉で、ムスタングに近いニュアンスがあります。これまで、ブロンコアンプやブロンコベースの再発はありましたが、ギターそのものは今のところレギュラーモデルとして本格的にリイシューされておらず、なかなかニッチな人気があるモデルと言えるでしょう。

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!





<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店〜御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてサブマネージャー(副店長)を務めている。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。