スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」第16回

Gibson Custom 2014 Custom Crimson Byrdland Alnico V PU-480 Venetian Cutaway VOS Antique Natural



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 みなさん、こんにちは。スターキー星です!

 十二月となり寒さも深まってくると、ジャズギターの温もりあるサウンドに心惹かれるのでしょうか。自ずとアーチトップへの注目が高まってきます。私が今夏にギブソンカスタムのナッシュビルファクトリーを訪問した際にオーダーしたワンオフモデルのご紹介をしましょう。

 1955年に発表されたバードランドはジャズギターの王道であるL-5同様の17インチ(約43.18cm)幅でありながら、小回りの利く薄胴シンラインボディ/ショートスケールネックを採用していることが最大の特徴です。現行ラインナップでは、2ハムバッカー仕様の1950年代後半スペックのみがプライスリストに掲載され、少数製作が行われておりますが、こちらはそれ以前の仕様をレプリカしています。

 本器は端的に言ってしまうと、エリック・クラプトンEric Claptonが愛用している1950年代中盤のバードランドのイメージです。ギブソンカスタムのソリッドアーチトップは通常グロスフィニッシュなので、ナチュラルカラーですとかなり白い色味です。今回のようにVOSフィニッシュが採用されること自体が大変珍しいのですが、それに加えて、トップコートのラッカーもアンティーク調が強いものを指定しておりますので、格別に良い雰囲気のブロンドに仕上がっています。また細かいところではありますが、セレクターも黒いラバーグロメットのないスイッチを選んでおり、トラスロッドカバーもワイドホワイトリムのプレーンタイプを選択しているのがご覧いただけます。

 今年2月のEC来日公演時に作成した特集ページ(http://store.ishibashi.co.jp/ec/sp/shtml/201402_eclapton)でもECに馴染みが深い機材についてご紹介しましたが、バードランドは以前より愛用されております。とりわけ有名なのは、盟友ジョージ・ハリスンと共演した1971年のバングラディッシュ・コンサート。ホワイトアルバムの「While My Guitar Gently Weeps」を演奏する際にヘッドストックに煙草を挟んだバードランドを物悲しく咽び泣かせており、それはスプリット・パラレログラムインレイが印象的なハムバッカー仕様のナチュラルフィニッシュでした。

 また、1990年代のブルースツアー以降では、本器のようにアルニコ5ピックアップ(PU-480)を搭載した仕様の個体を頻繁にプレイしております。一部クリスティーズのチャリティーオークションのログで見られるように、サンバーストやナチュラルが複数本あり、フロム・ザ・クレイドルのオープニングに録音されているリロイ・カーの「Blues Before Sunrise」はエルモアよろしくの迫力満点なホットなスライドで瞬時にノックアウトされてしまいます。2000年代に入り、一時期アンコールでよく演奏していた「Somewhere Over The Rainbow」ではL-5やバードランドを携えた肩肘張らない自然体の演奏で心打つものがあります。こちらもアルニコ期のものならでは甘くウッディな響きが一役買っていると思います。

 所謂フェンダースケールである25 1/2インチのL-5と異なり、通常のギブソンスケールである24 3/4インチより更に短い23 1/2インチのショートスケールネックは、やもするとルーズで心許ないサウンドになってしまうのではないかと危惧する方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそうならないのが心憎いところです。しっとりと美しい艶のある音色は、適度な硬質感があり、タッチへの反応がとても俊敏ですので複雑なコードワークや速いパッセージでもストレスを感じません。

  実際にギブソン工場を訪れると分かるのですが、アーチトップ・ジャズギターの製作部門はカスタム・アート&ヒストリックのディビジョンのなかでも、おそらく皆さんの想像以上に小規模なエリアです。カラマズー時代から継承されているような治具や工具を使いながら、精鋭の職人によって多くの工程を手作業で丁寧に仕上げられています。チゼル(のみ)やフィンガープレーン(カンナ)といった、伝統的なツールと技法で丹念にボディを削り出して仕上げるのは大変気の遠くなるような作業ですが、一切の妥協を廃した真摯な姿勢で、熟達したルシアーの研ぎ澄まされた感性のもと、たっぷりと時間をかけて丁寧に仕上げられている至高の名器です。ギブソンカスタムのソリッド・アーチトップ・ジャズギターの概説を主要モデルごとに一覧できる特集ページ(http://1484.bz/shibuya/gibsoncustom/archtop/)も作成しましたのでこの機会にそちらも合わせてチェックしてみてください。

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!




<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店~御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてインポートギターを担当している。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60~70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。