スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」第10回

Gibson Custom Japan Special Run 1965 Firebird V VOS Ebony



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 みなさん、こんにちは。スターキー星です!

 ギブソンカスタムから日本限定モデルとしてヒストリック・コレクションのファイアーバードが入荷しましたのでご紹介しましょう。

 根強い人気を持つモデルにも関わらず、バンジョーペグの供給がストップしてからしばらく生産が滞っておりましたが、こちらはギブソンファクトリーに残っている当面最後のストックを使用したリミテッドランです。当初は4色での展開を予定しておりましたが、チューナーの在庫数が足りずヴィンテージ・サンバーストとエボニーブラックの2色のみの製作となりました。

 オリジナルのファイアーバードは1963年の春に発表されたギターで、フェンダープレイヤーをターゲットに据えた意味合いが強いモデルです。一見するからに、従来のギブソンギターとは趣向が異なりますが、ギブソンの社外からカーデザイナーであるレイモンド・H・デートリッヒ(レイ・デートリッヒ)を招いて設計された流線型のオフセット・ウェストボディのフォルムはその最たるところです。

 彼は1932年から1938年にかけて、クライスラー社のトップデザイナーを務めていた輝かしいキャリアがあり、1960年代にリタイアしてミシガン州カラマズーに移住していたところをギブソン社の社長テッド・マッカーティにスカウトされたそうです。ファイアーバードには、わずかにボディバックコンターも施されており、18フレットジョイントのスルーネック構造でサイドウィングを配した革新的構造。ヘッド、ボディともに凹凸のついた立体的なデザインで、正面からはペグボタンが見えない特注のバンジョースタイルのチューナーも大変ユニークなところです。

 ボディから大きく突き出したネックはハイポジションでの演奏性能が高く、ジョニー・ウィンターのレコードなどで聴けるような濃厚でダイナミックなスライド奏法にも最適です。初期のものですと2ピースネックもありますが、1963年後半までにはマホガニーとウォルナットの9ピース・ラミネイトネックが採用されるようになり、その剛性を高める工夫が施されています。

ファイアーバードは発売当初から、カラーラインナップにサンバーストだけでなく10色のオプションカラーが用意されていたようです。これも1960年以降、カスタムカラーでのオーダーが一般的になっていったフェンダー社を強く意識した戦略のひとつに違いないでしょう。カスタムカラーはフェンダー社同様、キャデラックなどで使用されていた車のペイント用ラッカーが流用されております。特に塗料メーカーであるデュポン社の名前は広く知られていますね。

 皆さんご存知の通りFBには、「1,3,5,7」と奇数の番号が振られた4パターンのラインナップがあり、数字が大きいほど上位モデルとなります。ファイアーバード「1」は、シングルピックアップでセルバインディングなしの指板による廉価版で、バーブリッジと板バネ・ショートヴァイブローラが搭載されています。「3」になると、指板にセルバインディングが施され、2ピックアップの2ボリューム/2トーン配線へとアップグレードされます。「5」がいわゆるスタンダード仕様で、ヴァイブローラにはライル(竪琴の意)プレートが付き、チューンオーマチック・ブリッジが組み合わせれます。ポジションマーカーもトラペイズド・ディッシュ・インレイが採用されます。「7」になると、カスタム仕様にあたりエボニー指板で3ピックアップ、ゴールドハードウェアを組み合わせた最もゴージャスな仕様となります。今回のジャパンランで復刻されたのはファイアーバードの「5」で、実用性の高いストップテイルピース仕様となっております。

 そのオリジナル・ファイアーバードですが、わずか2年あまりで、1965年6月にはフルモデルチェンジが発表されました。逆向きのヘッドやピックアップ違いなどの過渡期の仕様も存在するのですが、いわゆる「ノンリバ・ファイアーバード」と通称されるデザインに変更されます。オリジナルファイアーバードのボディを引っくり返したような思い切ったデザインにクルーソンチューナーが搭載され、「1」と「3」はアルノコ5・バーマグネットによるミニハムバッカーではなく、P-90ピックアップへと換装されることになりました。

 ノンリバ・ファイアーバードへのモデルチェンジに関しましては、オフセット・ウエストボディやバックコンターデザインがフェンダー社の所有しているパテントに抵触する恐れがあったためと言われることもありますし、単に売り上げ不振を打開するために特異な製作工程の難を減らし、採算が取れるようにコストダウンを図ったとも言われています。モデルチェンジ後は、より一般的なセットネック仕様で、全体に簡素化されたデザイン、そして、「1,3,5,7」というバリエーションの中で、ポジションマーカーも含め、ボディとネックの仕様はいずれも共通で、主にハードウェアを換装させるだけというフェンダー的な思想に近いアップデートです。1963年から1966年にかけてのシッピングデータを追ってみると、「1」が1,377本、「3」が2,546本、「5」が1,425本、「7」が303本という出荷記録が残っています。

 ファイアーバードは1969年には生産完了となってしまいましたが、その後にはいくつかの再生産モデルが発売されています。有名なところでは、1972年頃に発表されたメダリオン・ファイアーバード。記念メダルがボディトップに埋め込まれた印象的なルックスで、トラペイズド・ディッシュ・インレイを配した「5」ベース。そのネックはマホガニー2ピースネックに変更されています。また、1976年には、アメリカの建国200年記念モデルとして、ストップテイルピース/ゴールドハードウェア/ドットポジションマーカーで復刻されたモデルがあります。星条旗風にアレンジされた鳥ロゴがピックガードに描かれたリイシューで人気があります。他にも1980年代に入ると、フィギュアド・メイプルトップでアクティブサーキットのものなども製造されており時代性を感じさせますね。近年はギブソンUSAブランドからスタインバーガーのギアレスチューナーを搭載したモデルが発売されていますので、お探しのモデルがあれば当店にお気軽にお問合せくださいませ。

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!




<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店~御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてインポートギターを担当している。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60~70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。