スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」第7回

Gibson Custom / Byrdland Venetian Cutaway Natural



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 みなさん、こんにちは。スターキー星です!

 いよいよ新生活スタートのシーズン。増税間近ということもあるのでしょう、渋谷店の店頭も毎日とても賑わっております。今春からは増税だけでなく、出荷価格/希望小売価格の値上げを発表しているメーカーも多いため、「増税前のラストチャンス」と銘打って当店でもお買い得なバーゲンを各種開催しております。ギター選びには非常に良いタイミングですね。

 さて、今回はギブソンカスタムのナッシュビルファクトリーにて製作されているバードランドのご紹介をしましょう。バードランドは、セッションギタリストの雄デヴィド・T・ウォーカーの長年の愛器として広く知られています。つい先日、ビルボードでのラリー・カールトンとのジョイント公演にて、いぶし銀の安定感あるプレイを見せてくれました。デヴィド・T・ウォーカーはマーヴィン・ゲイ、ボズ・スキャッグス、スティーヴィー・ワンダー、マリーナ・ショウ、ダイアナ・ロス、キャロル・キング等をはじめとする数え切れれないほどの名盤のレコーディングに参加し、そのシグネチャートーン、流麗なオブリガートで楽曲に最高の彩りをそえています。

 1955年に発表されたバードランドは、17インチ幅ジャズギターのスタンダード・モデルL-5同様に単板を削り出したソリッド・カーブド・スプルース材によるボディトップ、カーヴド・プレスされたメイプルによるサイド/バックというスタイルを踏襲しながら薄胴のシンラインボディに仕上げられています。ネックも所謂フェンダースケールである25 1/2インチのL-5と異なり、通常のギブソンスケールである24 3/4インチより更に短い231/2インチのショートスケールネックを配しているというのが大きな特徴です。熟達したヴェテラン職人によって、当時の工具や製法を再現した大変手間隙のかかる伝統的な製作工程が踏襲され日産本数が極めて少ない上位機種です。その独特な深みのある甘さとタッチレスポンスに誰しもが惹きつけられます。

 ちなみにこのモデル名は当時テネシー州のナッシュビルでスタジオミュージシャンとして活躍していたビリー・バードとハンク・ガーランドの名前に由来します。仕様の変遷という部分に着目すると、発売当初は通称アルニコ5ピックアップ(PU-480)をマウントしていましたが、後にセス・ラヴァーの開発したオリジナル・PAF・ハムバッキング・ピックアップ(PU-490)が搭載されるようになります。ボディデザインも1950年代のバードランドは丸みを帯びたヴェネチアン・ラウンデッド・カッタウェイですが、1960年代に入ると先の尖ったフローレンタイン・ポインテッド・カッタウェイが採用されます。カスタムオーダーモデルなどの例外こそありますが、見た目で大まかに年式が判別できる大きなポイントです。このカッタウェイデザインは1968-1969年にかけて再びヴェネチアン・カッタウェイ/ラウンデッド・カッタウェイへと仕様変更されることになりますが、現行のギブソンカスタムではそれぞれのカッタウェイデザインがラインナップされています。

 バードランドは、前述のデビッド・T・ウォーカーの他にも、テッド・ニュージェント、エリック・クラプトンらの愛用が有名です。エリック・クラプトンがギブソンの名器バードランドを使用した演奏でまず挙げられるのは、1971年の「バングラディッシュ・コンサート」。ジョージ・ハリスンとホワイトアルバムの「ホワイル・マイギター・ジェントリー・ウィープス」(レスポールで録音)を何とナチュラルのバードランドでプレイしています。このとき演奏されたのはスプリットパラレログラム・インレイでハムバッキング・ピックアップの個体でした。本人はサスティーンが弱くて失敗だったと語っているようですが、この頃のクラプトンならではの何とも味のある演奏です。

 クラプトンは1990年代のブルースツアー以降でもバードランドを愛用しております。こちらはナチュラルフィニッシュでありながら、先のものとは異なりアルニコ5ピックアップ(PU-480)を搭載した仕様です。リロイ・カーの「ブルース・ビフォア・サンライズ」などではかなりハードでホットなスライドプレイを披露しており必聴だと思います。クラプトンは一貫して、ヴェネチアン・カッタウェイのものをチョイスしており、近年では歌モノのバッキングに使用するシーンも見受けられます。以前ギブソンカスタムがバーガンディフィニッシュのオリジナルモデルをクラプトンのためにスペシャルメイドしたこともECフリークでしたらご存知かもしれません。

 今回ご覧頂いている本器のピックアップはヴィンテージPAFをイメージしたナチュラルなレスポンスの57クラシックを採用。美しいフィギュアドメイプルのナチュラルフィニッシュでゴールドハードウェアを纏ったゴージャスな顔付き。ネック厚もそれほど深くないので、速いフィンガリングや複雑なコードプレイをしたときのストレスも軽減しています。ジャズやジャズブルース、ブルースなどはもちろん、歌モノのバッキングなどにも絶妙にマッチするギターですね。ショートスケールならではのメロウなトーンでありながらも、決してチープにならない豊潤なサウンドが秀逸です。スピード感のあるレスポンスと、全体にトーンバランスが良く、硬質で艶のある美しい響き。この軽やかでかつリッチな奥行きを感じるヴァイブレーションは、他モデルにはない唯一無二のものだと思います。

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!





<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店〜御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてインポートギターを担当している。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。