スターキー星の「月刊 GUITAR TALKING」第3回

Gibson Custom Shop Collector's Choice #15 1958 Les Paul Reissue Owned by Greg Martin Aged Double Dirty Lemon



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 みなさん、こんにちは。スターキー星です!

 今回はギブソンカスタムショップから先日入荷したばかりのコレクターズ・チョイス・ナンバー15のご紹介をしましょう。グレッグ・マーティンが所有する1958年製レスポールのリイシューです。

 近年新たにリリースされた「コレクターズ・チョイス」というシリーズ。まだまだ聞き慣れない方も多いと思います。もともとは2010年に発売開始されたモデルで、フリートウッド・マックのピーター・グリーンが所有し、後にゲイリー・ムーアの手に渡った「メルヴィン・フランクス・1959レスポール」がその第一弾でした。

 コレクターズ・チョイスの第一義的な特徴としましては、実存するたった一本の個体を完全再現しているところによります。従来の「ヒストリック・コレクション」シリーズが、様々なオールドの平均値を3Dプロファイリング(デジタル採寸による形状再現)し、「優れた標準モデル」としての価値を追及してレプリカされているのに対し、CCシリーズの方は、あくまでヒストリカルな「個体そのもの」に悉く執着しています。

 そういった意味ではアーティスト・シグネチャーモデルに近いのですが、ここでは決して著名なミュージシャンの冠やセールス上の人気そのものにこだわらず、「とある個体」自体が保有する魅力を至極追求しているラインナップということになりますね。なかなかロマンを感じます。

 グレッグ・マーティンは1968年に結成されたケンタッキー・ヘッドハンターズのリードギタリスト、とてもゴキゲンなカントリーロックバンドです。グラミーアワードも受賞しておりますので、その方面に明るい方であればご存知でしょう。

 本器は1958年後期のレスポールをモチーフにしています。ベーシックな部分は史上最高の完成度を誇る2013年ヒストリック・コレクション最新スペックを踏襲しており、1950年代当時と同様のアニリンパウダーを使用したレッドフィラーを摺り込むことで、とても雰囲気のあるバックカラーに仕上げられています。サウンドへ大きな影響を与えるロングスタッド&ロングアンカー、オールドスタイルのチューブレス・トラスロッドなど、こだわりのリファインが実現されている他、ハイドグルー(ニカワ)接着によるタイトなネックジョイントを採用。よりオリジナルに近づいたバインディング/インレイ/チューナがセレクトされています。

 そして、こちらのモデルの場合は、ネックシェイプやボディシェイプ等々が通常のヒスコレとはちょっと違った味わい深さが感じられるところ。一般的な58年モデルの復刻より、ややスリムに仕上げられたグリップと小振りなネックヒール。存在感を主張しながらも、握っていて安心感を覚える肉付きのラウンデッド・ネックシェイプです。無骨でかつスムース、そしてエレガントなボディカーヴィングは実際指先でなぞって体感して欲しいと思います。ブリッジからエルボーにかけての滑らかな曲線の美しさや、リムに近い部分のセクシーなラインには思わずビリビリと痺れてしまいます。アルニコ3マグネットによるカスタムワウンド・カスタムバッカーをマウントしており、まるでシングルコイルのようなタッチダイナミクス、ネイキッドでクリアーながらもグイっと粘りのある力強いサウンドが満喫できます。

 ウェザーチェックやバックルウェアーなど軽めのエイジドフィニッシュが全体に施されており、絶妙にフェイドしたバックカラーやレモンバーストの風合いと言い、その控えめで味のあるフィガードメイプルの表情と言い、まさにアメリカのヴィンテージショップでオリジナルバーストを抱えているような気分になります。月並みではありますが、ギブソンカスタムの最先端テクノロジーと伝統的なクラフツマンシップの結晶を存分に体感していただきたい一本です。
 
 ちなみにマメ知識ですが、コレクターズ・チョイスの場合、ヘッド裏には通し番号としてのシリアルナンバーがスタンプされていますが、バックパネルを開けるとそこにはプロファイリングされたオリジナル個体のシリアルナンバーが振られています。そのようなところにもリスペクトが感じられますね。例えば、モデルによっては「Beauty of the Burst」などの有名な書籍に元の一本が掲載されている写真が見つけられたりもします。お買い上げいただいた後にでも、是非ご自宅でじっくりご覧いただきたいところです。

 現在イシバシ楽器渋谷店では、ちょうど第11弾となるコレクターズチョイスでアメリカの匿名コレクター所有のミントバースト・ロージーの入荷がありました。他にもUSAのオフィシャルサイトでサンプル画像がご覧いただけますが、近日中にはサザンロックの雄、レイナード・スキナードのエド・キング所有の第16弾で通称「レッドアイ」の入荷も迫っておりますので、気になる方はお早めにお問い合わせ下さいませ。

 さて、最後になりましたが、今月は7月以来4ヶ月ぶりとなりますが、アメリカのテネシー州ナッシュビルにあるギブソン・ファクトリーに行ってまいりました。向こうに着く前から、氷点下のシカゴで乗り継ぎの便が欠航してしまい、振り替えの便が何と朝5時台…というトラブルもありましたが、何とか気力でミッションを遂行してまいりました。(画像11-13枚目)

 売れ行き好調で長らく品薄となっていたカスタムショップ商品に関しましては、ファクトリーで厳選した完成品をピックアップしてきており、既に今週から入荷が始まっています。現地選定の木材による各種スペシャルオーダー品も12月中には入荷予定ですので、ボーナスの使い道はもうキマリですね。

 ちなみに私、現地ではギブソン社公認のプロダクトスペシャリスト認定証(画像14枚目)をいただきました。2006年末〜2007年にギブソンの代理店が変更となって以来、エレキギター担当スタッフに関してこうした認定証が正規発行されるのは今回が初めてのこととなります。フェンダーのプロダクトスペシャリストも持っているので、これで二刀流でございます笑

 さぁ、ギターヘブンの扉をノッキンオン!!





<お問い合わせ>


石橋楽器 渋谷店
TEL 03-3770-1484
shibuya@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、池袋店〜御茶ノ水本店を経て、現在は渋谷店にてインポートギターを担当している。日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてフェンダーのプロダクトスペシャリストに認定されている他、ギブソン・ファクトリーも定期的に訪問して選定買付け等を行っている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、アップトゥデイトな情報のご案内、そして一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。