Ishibashi Mail Magazine Vol.130
今回紹介するアルバムはジャイルズ、ジャイルズ&フリップが1968年に発売したアルバム「THE CHEERFUL INSANITY OF GILES,GILES & FRIPP」です。日本ではあまり馴染みのないバンドですが、このバンドが無ければあのスーパーバンドは生まれなかったのです。 ジャイルズ、ジャイルズ&フリップは元々ドラマーのマイケル・ジャイルズとベースのピータ・ジャイルズの兄弟が作ったバンドが変貌していったバンドであり、1967年に奇才ロバート・フリップがバンドに加わりジャイルズ、ジャイルズ&フリップになったのです。 このアルバムを作るにあたっての有名な話があります。ギタリストであるロバート・フリップがビートルズの名盤「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」を聞いて感銘を受け、アルバムのストーリーを完成させたというのです。確かに曲と曲の間に不思議な会話やナレーションが多く含まれています。自分はこの部分があまり好きではありませんが、一部のプログレマニアにとっては、これがこのアルバムのキーポイントだなんて言われているのです。(笑) 曲調としてはロック度合いは非常に少なく、フリー・ジャズ等の要素が高いアルバムだと自分は思います。ただ1曲目の”Noreth Medow”や10曲目の”The Saga Of Rodny Today Part5”などの曲調を聞くと、そのスーパーグループの静かな曲に非常によく似ていることがわかります。 バンドは試験的に結成されたかは定かでないが、このアルバム1枚でメンバーチェンジを行う事となる。ギターのフリップとドラマーのマイケル・ジャイルズが残り、ベースには新人のグレッグ・レイク、キーボードにイアン・マクドナルド、そして新たな展開として作詞を専門にするメンバー、ピート・シンフィールドを加入させて、バンドをスタートさせることになる。そうです! このバンドこそが冒頭にも申し上げたスーパーバンド、キング・クリムゾンなのです。 このアルバムが発売された翌年の1969年、歴史に残る名盤「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING 」(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)を発売することになります。クリムゾンのファーストアルバムは当時、チャートの1位を独占していたビートルズの「ABBEY ROAD」をチャートから引きずり落としたことでも有名です。それも全くの新人バンドがやってのけたのですからビックリです。 ではこの「THE CHEERFUL INSANITY OF GILES,GILES & FRIPP」の良さは何処にあるんだという事ですが、やはり奇才ロバート・フリップはこのアルバムで音楽シーンを試していたのではないかと自分勝手に思うのです。このアルバムのマインドも入れつつ、有りえないほど攻撃的なサウンドと壮大なオーケストレーションを加えたアルバムが「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING 」に繋がったのです。そういう意味では正にターニングポイントのアルバムなのです。深い(笑) クリムゾンは74年に名盤「RED」を発売したのち解散。その後、再結成はしたものの、この頃のバンドマインドは一切バンドに入れず、新たなクリムゾン・サウンドで活動を続けてきた。やはりプログレマニアとしては、初期のクリムゾンかREDの頃のクリムゾンのメンバーでのサウンドも聞いてみたいものである。みんなジイさんになったし、みんなふくよかになった(失礼)。それでも生み出すサウンドは攻撃的なサウンドだと信じたいです。とにかくこの1枚を聞け!! バックナンバー |