Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.102

スターキー星のフェンダリアン 〜Talking Of Fender〜 第11回

Fender USA Vintage 1964年製 Stratocaster Lake Placid Blue




 みなさん、こんにちは。スターキー星です! 先日、少し遅めのお正月休みをいただいて地元の仙台に帰省してきました。向こうでは、マイナス6度という雪が舞う結構な寒さの中でも普通に路上ライブしていたりするんですよね。意外と東京の人より薄着だったりしますし…。最近になって、(花粉という名の)春の足音も少しずつ聞こえてきましたが、寒暖の差で体調を崩さないように健康には十分ご留意ください。

 さて、今回はフェンダー1964年製のストラトキャスター、カスタムカラーとして非常に稀少なレイクプラシッドブルーの一本をご紹介いたします。昨年11月のメルマガでカスタムショップ製チームビルトカスタムのレイクプラシッドブルーをご紹介いたしましたが、今回は何とオリジナルです。

 レオ・フェンダーの体調不良などを理由にフェンダー社がCBS社に売却された1965年以降、ストラトキャスターで言えば、ヘッドストックの形状がラージヘッドに変更されるなど大きな仕様変更がありました。フェンダーロゴのデカールに関しても、それまでの細い文字のスパゲッティロゴから、ややガッシリとした字体のトランジションロゴ、数年後にはより大きく目立つモダンロゴに変更されたことが有名でしょう。

 CBS傘下に入ったフェンダー社が、それまで以上に合理的な採算性を重視した量産体制へと徐々に移行していく中、CBSに買収される以前のものは「Pre CBS」モノとしてヴィンテージ市場で高く評価されています。レオ・フェンダー、フォレスト・ホワイト、フレディ・タヴァレス、ビル・カーソン、ジョージ・フーラトンら数々のフェンダーレジェンドたちの熱意が濃縮された紛いなきオールド/ヴィンテージですので大変な人気があります。

 こちらの一本は64年製ですので、現在では大変稀少になったブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)がフレットボードに使用されております。ハカランダは、1960年代後半になると、ワシントン条約(CITES)が指定するところの絶滅危惧種として輸出入規制が行われるようになり、フェンダー社では主にインディアン・ローズウッド指板へと仕様変更されます。ハカランダはインディアン・ローズウッドに比べ、独特の艶と深みがあり、そのフィンガリングのスムースさ、輪郭のはっきりした音の抜け・立ち上がりの良さに評判があります。

 本器はシングルラインのクルーソンチューナー、3パテントのスパゲッティロゴにクレイドット、アフター63ホールロケーションのグリーンガードというスペックの最終期のもの。パーロイドのドットマーカー、ホワイトガードの仕様に比べてよりトラディショナルな佇まいなのも見逃せません。ピックアップもブラックボビンですので、ややブライトなサウンド傾向の強いグレーボビンに比較して、甘く粘りがあるサウンドで、ラウンドラミネイト指板とのマッチングが最高です。ラウンドボードはスティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョン・メイヤーのフォロワーを中心に近年特に人気が高まってきていますが、1959年頃から1962年頃のスラブボード(フラット貼り)ほどコンプレッション感が強くなく、繊細でタッチダイナミクスのつけやすさが素晴らしいと思います。また、この頃からのヘッドストックは若干ですが厚めに仕上げられているものが多く、こちらの個体は実測で約14.5mm-15mm、弦のテンション感がやや緩く感じられます。ストリングスリテイナーにはナイロンスペーサーが挟まれており、エモーショナルなベンド・ヴィブラート、甘くマイルドで自然なトーンが絶品です。

 なお、こちらのネックデイトは「2JAN64B」(2はストラトキャスター、Bはナット幅/ネックシェイプを示す)です。ポットデイトは「304-6403」(スタックポール社、続く4桁が年式、製造週を示す)、ジョイントプレートのシリアルナンバーは1963-1965年頃まで使用されていたLシリアルで「L20665」となっております。

 まさにフェンダーの歴史を感じさせる一本。さすがに「本物」の風格が漂っております。良質なヴィンテージギターには、私たちをその気にさせてくれる、誰しもが思わずそれと認めてしまうような「人の心を揺さぶるトーン」があるのを実感させられてしまいます。角が取れているのに、輪郭はしっかりと立っており、甘さと辛さが共存するような絶妙なトーンバランス。心地よい艶のある倍音が美しく、歪ませたときもジャストなパワー感のあるブルージーなサウンドがたまりません。これまた稀少なオリジナル・ホワイトブロンドトーレックスが付属しています。

 レイクプラシッドブルーは主に1960年頃から製作された、とても人気の高いオプションカラーで、塗料にはデュポン社の「Lucite 2876-L」というアクリルラッカーが使用されていたと言われています。1958年頃のキャデラックに使用された塗料ですが、経年変化で緑がかった独特の色味に惹きつけられます。カスタムカラーは、サウンドも自然とどこかそれらしいトーンになるんですよね。
 
 コレだけおさえておけば、今日から貴方もフェンダリアン!!




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<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、御茶ノ水本店にてインポートギターを担当している。特にフェンダー・ギターへの造詣が深く、日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてプロダクトスペシャリストに認定されている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。