Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.102

楽器流行通信第10回


VHT V-Drive



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VHT V-Drive


 VHTといえば高級アンプメーカーとして、国内外のアーティストが好んで使用した由緒あるブランドである。近年は、同ブランドからお求め易い価格帯のフルチューブ、ハンドワイヤリング・アンプである「Special」シリーズなどが登場し人気を博している。イシバシ楽器が日本での輸入販売元となっているこのVHTブランドから、新たに歪みエフェクターが仲間入りする。それが今回紹介する「V-Drive」。これまでの歪み系エフェクターにはなかったユニークなコントロールツマミを持ち、この一台だけでいくつものドライブ・サウンドを演出することができる、マルチなドライブ・ペダルだ。

 音作りの基本はコントロール・パネルの上半分で行うが、このV-Driveには下半分に一般的な歪みエフェクターには見慣れないツマミがある。これらのツマミを簡単に解説しよう。

 肝となるのはSELECTツマミ。全部で11のポジションがあり、10種類のクリッピング・ダイオードを切り替え、さまざまなドライブ・サウンドが再現できる。残りの1つのポジションはクリッピング・ダイオードをバイパスすることで、クリーン・ブースターとして使用することが可能となる。

 TEXTUREツマミはSELECTツマミとリンクしており、歪みの設定領域を調整することでドライブ・サウンドの質感を変化させる。TONEコントロールだけでは再現しきれない、更に細かい倍音成分の出力を調整できるのだ。この組み合わせを使いこなすことが、このペダルの真価を発揮するためのポイントとなるであろう。

 DEPTHはローエンドのレスポンスをコントロールするツマミだ。使用するギターやピックアップ、アンプに合わせて歪みの低域成分を設定し、さまざまな音楽スタイルに合わせた音作りが可能となる。

 上段にあるツマミは見慣れたVOLUME、TONE、DRIVEのコントロールだが、TONEは従来のものとは異なり中音域を削ることなく高音域の調整をしてくれるので、下段のDEPTHとTEXTUREも併せて調整することで、これまでにない幅広い音作りが可能となる。

 このペダルの特長はもうひとつある。背面にはVOLTAGEというツマミがあり、これで駆動電圧を変更することができるのだ。通常9Vである電圧をあえて5Vまで落とすことにより、9V電池が減った状態のときに現れるアタックのやわらかいオーバードライブ・サウンドを再現してくれる。9V以上のアダプターを使用しヴォルテージをアップするエフェクターが多数存在する中で、まさしく逆転の発想によりマイルドな鳴りを表現するというのは、VHTペダル最大のオリジナリティーと言えるだろう。


ミサワマサヒロ
ミサワマサヒロ・プロフィール
音楽学校メーザー・ハウスにて、矢堀孝一氏に師事。ギブソン・ジャズ・ギター・コンテストのバンド部門にて優勝を果たす。その後、レコーディングやライブのサポートなどで活躍し、イシバシ・バンド・コンテストのイメージ・ソングの作曲&演奏も担当。現在は女性ヴォーカルを含めた5人編成のバンド、パスピエ(https://www.myspace.com/passepied)にて活動中。さまざまなデモ演奏でも活躍するギタリスト。