Ishibashi Mail Magazine

Ishibashi Mail Magazine Vol.98

スターキー星のフェンダリアン 〜Talking Of Fender〜 第7回

Fender USA 1978年製 Semi Vintage Starcaster Natural




 みなさん、こんにちはスターキー星です!

 もうすぐ10月も終わりですね。こうして少しずつ冬の足音が近づいてくると、自然と箱モノの人気が高くなってきます。なぜか毎年そうなのですが、寒くなるってくると、みなさん自然とウォームなサウンドに惹かれるものなのでしょう。

 そういったわけで今回ご紹介するギターはフェンダーUSAの1978年製スターキャスターです。資料によって若干の差異はあるものの、1976年頃から1980年頃までの約4年間程度しか製作されていない稀少なモデルとなっております。70年代中盤から80年代の前半にかけては、フェンダーでもギブソンでも、ユニークなモデルが数多くリリースされていたことはご存知の方もいらっしゃるかと思います。いずれもセールス面での大成功は収められず、短命に終わったモデルが殆どですが、今あらためて見ても、斬新なデザインで非常に意欲的なモデルが登場しています。それらのモデルは近年、現存する個体数も少なくなっていることから、市場では所謂「セミ・ヴィンテージ」として重宝される向きがあり、その価値が再考されています。

 さて、テレキャスターを生み出して以来今日まで、常にソリッドギターのオーソリティであり続けているフェンダー社ですが、60年代中盤にセールスが伸び悩んでいた時期にはホロウボディのギターも発表しています。1966年にリリースされたシンラインのコロナドが先駆けとなり、ハンドカーブドLTDやモンテゴといった17インチ幅の本格的なアーチトップも手がけるようになります。コロナドの場合は、センターブロックがない中空構造となっており、ギブソンES-330、エピフォン・カジノに近い構造です。それに対して、今回ご覧いただいているスターキャスターはギブソンES-335と同様にセンターブロックを持つ構造で、フェンダー社初のセミアコースティック・ギターとなっております。

 ES-335はボディの中心部に細長い木片を組み込むことで、強度面でのアドバンテージを得るとともに、比較的ハウリングを起こしにくいという特性を生み出し、そのソリッドでかつエアー感のあるサウンドから、ジャズ/ブルース/ブルースロック/ロック/ジャズ/フュージョン/ファンク/R&B…実に幅広いジャンルのギタリストに愛用されるギターとなりました。フェンダーとギブソンは今も昔もお互いに強く意識し合うライバルブランドですが、ギブソンの大ヒット作であるES-335に対するフェンダー社なりのアンサーモデルがスターキャスターであると言えるでしょう。

 しかし、そのセミアコをマイクロティルト付の3点ボルトオン・ジョイントで作ってしまうところが、しっかりフェンダーならではのポリシーを感じて嬉しくなってしまう部分です。ボディ形状は左右対称ではなく、ジャズマスターやジャガー、ムスタングなどでおなじみのセクシーにくびれたボディ、いわゆる「オフセットウェスト・コンターボディ」を採用し、シャーラー製ロトマチックペグが片側に6連並んだインパクト大のオリジナルデザイン・ヘッドストックを配しております。ネックはスカンク・ストライプのあるメイプルワンピース構造で、フェンダー初の25 1/2ロングスケール・22フレット仕様(ツバ出しではありません!!)が採用されています。こういったスペックだけを見てもかなり本腰を入れて製作されたモデルであることがすぐに分かりますね。

 ピックアップはテレキャスターカスタムや、シンライン、デラックスなどと同様に、オリジナルPAFを設計したハムバッキング・ピックアップのパイオニア、セス・ラバーによってデザインされたワイドレンジ・ハムバッカーがマウントされており、絶妙なパワー感が魅力です。コントロールノブは5つ。グレッチの様にフロントとリアのピックアップのボリュームを個別に設定したあとで、ミックス時のマスターボリュームコントロールが可能です。当時のカタログを見てみると、ウォルナット、サンバースト、ブロンド、オリンピックホワイト、ブラック、ナチュラルが正規ラインナップされています。本器は美しいフィギュアド・フレイムメイプルが映えるナチュラルフィニッシュで、そのラミネイト・メイプルボディは実に美しいカーブを描いており、とても味わい深い雰囲気があります。

 中身を覗いてみると、箱モノの老舗とは違いますので、熟練のノウハウのようなものはあまり感じられませんが、それでも完成度は十分に上位機種と呼べる仕上がりのモデルです。前述しましたようにES-335を意識したモデルではありますが、音色はそれと似ても似つかぬ、スターキャスターならではのユニークなものです。ウォームでかつ、美しい倍音とエッジの効いたトーン。音の粒立ちがはっきりしており、絶妙にタイトなサウンドが、L-5CESなどのジャズギターを彷彿させる部分もあります。ノーリン時代の70sES-335、特にメイプルネックの個体をお持ちの方であれば、キャビティ構造を比較したり、同じセッティングで弾き比べてみるのも面白いかもしれませんね。

 嬉しいことに、こちらのコラムに掲載したギターはメルマガの配信後すぐに売切れてしまうことが多いです。以上、スターキーがご紹介させていただきましたスターキャスター、気になる方はできるだけお早めにお問い合わせくださいませ。

 コレだけおさえておけば、今日から貴方もフェンダリアン!!
 




<お問い合わせ>


石橋楽器 御茶ノ水本店
TEL 03-3233-1484
ochanomizu@ishibashi.co.jp

<スターキー星:プロフィール>
 プロフェッサー岸本の愛弟子であるデューク工藤に師事、御茶ノ水本店にてインポートギターを担当している。特にフェンダー・ギターへの造詣が深く、日本国内最高レベルのノウハウを持ったスタッフとしてプロダクトスペシャリストに認定されている。彼自身のフェイバリットミュージックはブルースやブルースロックが中心で主に60〜70年代ロックを愛聴。
 皆様がますます充実したミュージックライフを送れるよう、一生愛用できるギター捜しを親切丁寧にお手伝いたします。