“ブティック・アンプ”と呼ばれる、少量生産によるハンドメイド・アンプの市場において、すでに高い評価を得ている[Fuchs Audio Technology]。主宰者であり、製品のデザイン/製作を手掛けるアンディー・フュークスのキャリアを足早に振り返ると、20代の頃はニューヨークでローカル・バンドのギタリストとして活動しつつ、電気製品の修理や製造に従事していたという。その後、ハイエンド・オーディオ機器を製造する[New York Audio Labs]で仕事を得て、真空管アンプの製造を行ない、後のキャリアの布石となる技術や知識を習得していった。その一方、電気技術師でもありながら自身がギタリストであったことから、自ら使うアンプは自作かモディファイを施しており、それらをクラブで演奏する際に持参していったところ、その自作アンプの評判が口コミで広がっていったことで、独立を決意。こうして1999年に、ニュージャージー州にて[Fuchs Audio Technology]が設立された。 フュークスは旧来のギター・アンプに対して敬意を払いつつも、電気製品としての原始的かつ稚拙な回路設計に対してテコ入れを施した。プリ管に専用のDC電源を供給する回路や、トランス周りにシールド対策として銅板をこさえるなどが一例だが、このようにハイエンド・オーディオ機器では当たり前とされている技術を惜しみなく投入することで、ギター・アンプとしてのトーンを保ちつつも、徹底したロー・ノイズ設計を実現している。 さらに今日のブティック・アンプ市場の生みの親とも言うべき2大巨匠……西のハワード“アレキサンダー”ダンブル、東のケン・フィッシャー([Trainwreck])という両名の作風をうまく採り入れながらも独自の解釈で消化した、[Overdrive Supreme](ダンブル風)と[Train-45]([Trainwreck]風)を作り出し、それらは高い評判を生むことになる。最初に愛用した有名アーティストはKenny Wayne Shepherdで、その後もDweezil ZappaやDerek Trucks、 Joe Bonamassaを筆頭に多くのミュージシャンたちを虜にした。 アンプにおいて成功を収めたフュークスが2008年頃に新規事業として取り組んだのがエフェクター・ペダル、こちらに対しては[Plush FX Pedal]という新たなブランド名が与えられた。これらのペダルもアンプ同様、高い精度で作られていることは言うまでもない。加えてギタリストが欲するトーンをドンピシャでつくセンスは、まさに達人技と言えよう。ペダルも多くの著名ギタリストによって愛用されている。
ブティック・チューブ・アンプの歪みをエミュレートしたペダル。ダンブル・アンプのユーザーであるロベン・フォードの如く芳醇なサウンドを出力してくれ、“Robben in a box(ロベンのサウンドを箱の中に閉じ込めた)”という愛称を持つ。自社製の[Overdrive Supreme](ダンブルをモチーフにしたチューブ・アンプ)を土台に音作りがされたという。[Plush Cream]よりはゲインが低く、サチュレーションも少なめで、中域の持ち上がったサウンドが持ち味。4コントローラーの中でのミソが「TOUCH」で、このツマミを上げると高域成分が増し、ピッキングに対して、よりセンシティブに反応するようになる。あまり歪まないアンプと繋いだ時に威力を発揮するが、歪ませた状態のアンプの前に接続すると、超濃密なオーヴァードライブ・サウンドを奏でてくれる。
Black Label SocietyやSpeedXなどで活躍しているNick Cataneseのシグネイチャー・ペダル。コントロール類の特徴としては、「LOW」/「MIDDLE」/「HIGH」という3バンドのイコライザーを備えていることで、これにインプット段のヴォリュームを決定する「GAIN」と、マスター・ヴォリュームの「OUT」が加わり、さながら2ヴォリューム・アンプのような操作感で歪みサウンドを作り込むことができる。「GAIN」の設定次第で、マイルドなオーヴァードライブ・サウンドから、へヴィ・ロックに最適な爆音まで出力可能。[Plush]の歪みペダルのラインナップ中、最も過激な歪みが得られるモデルで、特にダウン・チューニングをしてゴツゴツと低域リフを鳴らすようなフレーズにおいて、抜群の相性を見せる。またアンプをクリーン・セッティングにした時に、そのパフォーマンスは最大限に発揮する。