Ishibashi Mail Magazine Vol.54
このアルバムは79年に発売されたピンクフロイドのコンセプトアルバム、「THE WALL」をそのままライブで再現したアルバムである。公演は80年から81年にかけて4都市、29公演行われたうちのロンドン・アールズコートで行われた公演が収録されている。ちなみに邦題は「ザ・ウォール・ライブ・アールズ・コート 1980-1981」である。 「THE WALL」はピンクフロイドの分岐点的アルバムでこのアルバムをリリース後、バンドは空中分解の道へと進んでいく。その大きな理由としてあげられるのがこのコンセプトアルバムがあまりにもベースのロジャー・ウォータースの思いが強いアルバムとなり、他のメンバーとの不仲が強くなったことである。しかし、アルバム発売当初よりこの楽曲をライブで出来るのかと囁かれていたが、あっさりとやってのけるところがピンクフロイドである。 しかし、この公演の日程を見て解る通り29公演しかない。その理由は公演をやればやるほど赤字になってしまう。それほどのセットであり壮大な計画であった。そして通常のライブと違うところは曲が進むにつれ、ステージに壁(WALL)が詰まれ、最後に近づくとまるっきりメンバーが見えなくなり、エンディングにはその壁が崩れるという凡人には思いつかない効果である。このアイデアもウォータースの「ステージと客の間に存在するのは壁のようなものだ」と言う事から生まれたという。 フロイドのライブではギターリストがもう一人、ステージに立っていたのは有名な話であるがこのライブでもメンバーと別に4人のプレイヤーが演奏していた。そのうちの一人は後にTHIN LIZZYに加入することになるSnowy White である。そして、曲目でも特筆すべき点がある。アルバム「THE WALL」には収録されてなく本ライブでは演奏されていた曲がある。DISC1の”What Shall We Do Now? ”と”The Last Few Bricks”である。その辺からもいかにこのライブに力を入れていたのかがわかる。 しかし、毎回このアルバムを聞くたびに思うのだが20年近くもこんな凄い音源を眠らせておくなよと感じる。絶対にまだまだ凄い音源が眠っているに違いありません。最近のパターンであるがオリジナル・アルバムからどんどんグレード・アップして、最初は1枚物だったのに最終バージョンは2枚組みなんてパターンも多く見られる。買い直しするこっちの身にもなって欲しいですな! そしてウォータースはこのライブの10年後、ベルリンの壁崩壊の90年にベルリン・ポツダム広場にてこのウォール・ショーを再現している。当然、参加したフロイドメンバーは居ないが、ギターリストとしてSnowy Whiteが参加し、ギルモアのフレーズを弾きまくっていたのが印象的であった。 先日のコラムでも語ったが間もなくギルモアのライブアルバムの発売となる。ピンクフロイドの歴史も大きく変わった。歳もとった。しかし、奏でているあのフレーズは一向に変わらない。それだけでも価値がありますな。とにかくこの1枚を聞け! |