1978 Martin HD-28

1978 Martin HD-28

マーティンを象徴する装飾のひとつであるヘリンボーン・トリムはスタイル28に採用されていましたが、1947年に廃止となり、以後は黒と白によるマルチブル・バインディングに仕様変更となりました。ちなみにへリンボーンを英語で綴ると“Herring Bone”となり、“Herring”が魚のニシン、“Bone”は骨という意味で、その見た目が魚の骨のようだったことが名前の由来となっています。

このヘリンボーン・トリムを備えたD-28が、1976年に復活します。それが今回紹介するHD-28。この個体は再生産が始まった年から数えて3年目に作られた初期モノで、これ自体がヴィンテージと言っても過言ではないでしょう。元来D-28は装飾類が少ない、シンプルな外観が特徴ですが、ボディ・トップにヘリンボーン・トリムが巻かれることで、美しさに磨きがかかります。

HD-28には、もうひとつ注目すべき仕様があります。それが、ヘビー・ゲージ弦の流行に伴い、表板の耐久性の問題で、1944年に廃止されていたスキャロップ・ブレイシングの復活です。なお、この仕様の復刻にあたり、“ライトもしくはミディアム・ゲージ弦を使用してください”という注意書きがHD-28のボディ内に刻印されています。またメイプル材による小型のブリッジ・プレートなど、戦前のD-28に準じた仕様が復活。これらによって、HD-28は同時期に作られたD-28のレギュラー・モデルと明らかに異なったサウンド・キャラクターを持ちます。音に広がりがあり、低音が濁らず、明るめのサウンドが魅力です。

78年生まれのギターということもあり、見た目は激シブ!! 使用感もあり、その威風堂々とした風格は、ヴィンテージさながら存在感を放っています。ボディ・サイド&バックも、ハカランダを彷彿とさせる美しい木目をしており、ジグザク・バック・ストリップもカッコ良いです。  長年弾き込まれてきた個体ゆえに使用感もあり、リペア箇所も多め。トップ、両サイドにクラック・リペア跡があり、トップの傷も多く、木部剥がれもなかなかの具合い。

加えて4弦ペグの角度がやや傾いているなど、前オーナーによって非常に激しく使い込まれてきたことが伺えます。  しかしながら、このギターの長所はそのサウンドにあると言えます。もともとの素性の良さに、前オーナーが弾き込んだことが加わったことで、放たれるサウンドは非常にワイド・レンジで、その抜群のサステインがいつまでもボディに響き渡る様は、惚れ惚れします。

音の粒がひとつひとつまとまっていながら、力量を感じさせるサウンド。低音はドンと力強く、高音はマーティンならではの煌びやかさを備え、これらを両立しているところが本当に素晴らしいです。ボディが鳴っているせいもあり、弾いていて、お腹にズンズンと伝わってきますし、濃厚かつ豊潤な響きがたまりません。またリフレット済みなので、プレイアビリティもばっちりです!!

やはりギターは弾いてナンボ。特にドレッドノートはボディが大きいため、ガンガン弾き込まないと、鳴らないんだと、この個体を通じて、改めて痛感しました。ホンモノを是非あなたのコレクションに加えてみては、いかがですか?

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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