1955 Gibson CF-100E Sunburst

1955 Gibson CF-100E Sunburst

今回紹介するのは1950年代当時、非常に珍しかったエレクトリック・アコースティック・ギターの元祖的な存在、ギブソンCF-100Eです。  ギブソンは1950年代初頭、アコースティック・ギターにピックアップを搭載したモデルをいくつか製作していました。その仕様ですが、ピックアップはP-90シングルコイルで、マウント方法はボディ・トップのサウンド・ホール上に搭載するというスタイルでした。その中には今回のCF-100Eや、ビートルズの使用で有名なJ-160E、そして本数は少ないですがJ-200にピックアップをマウントしたJ-200Eも製造されていました。

CF-100Eはギブソン・フラット・トップ・アコギの中で初めてピックアップを搭載したモデルで、1951~1958年の間で生産されました。最近ではリイシュー・モデルも発売され、人気があります。ちなみにピックアップ非搭載のCF-100が1950年に先行して発売されていました。ピックアップ付きモデルに対しては、型番末尾にエレクトリックを意味する“E”が付きます。ボディはLG-2と同サイズで、先が尖ったフローレンタイン・カッタウェイ仕様となっており、ピックガードはこのシェイプに合わせてデザインされています。またピックアップが搭載されたことにより、サウンド・ホールの位置がブリッジ寄りに移動しているのも特徴。とてもカッコいいルックスで、シンガーソングライターを中心に人気の高いモデルです。

P-90ピックアップはアコースティック弦でも弦振動を拾いますが、マグネッティック・ピックアップという性質上、アコースティック専用のブロンズ弦よりエレキ弦の方が相性がいいです。ボリュームやトーンなどのコントローラーは思い切ってボディ・トップのブリッジ横の位置にマウントされ、アウトプットはボディ・サイドに直に搭載されています。通常後付けPUの場合、ボディ・エンドのブロックに穴を空け、エンドピン・ジャックなどを用いて、しっかりと固定されますが、このCF-100Eの場合、ボディ・サイドの薄い板に穴をあけていますので、横から衝撃を与えるとサイドが割れてしまいやすいので、注意が必要です。ボディ内の構造はLG-2のようにXブレイシング構造のため、生音でも良い音がします。ピックアップを通さなくても楽しむことができるところは、ギブソンならではの技術力でしょう。

今回の1955年製は、フレットが19フレットから20フレットに仕様変更された年のもので、コントロール・ノブも“バレル・ノブ”と呼ばれる、樽形状のノブからハット・タイプに変わった過渡期のモデルです。これらの仕様から50年代後半のモデルであるといううことが見た目でもわかります。

マーティンも50年代後半にディアルモンド・ピックアップをD-28などに搭載したモデルを発表しました。ギブソンとマーティンはお互いをものすごく意識しており、これが他のブランドにも広がり、アコースティック・ギター界の歴史を作っていきました。

ピックアップを搭載したアコギは後にオベーションやタカミネなどの登場により、“エレアコ”という新ジャンルを生み出し、ブームとなりましたが、現在はさらに技術が進歩し、ブリッジ・サドル下に後付けのピエゾ・ピックアップを取り付ける方法が主流となり、ギブソンやマーティン他、多くのアコギ・メーカーがこのスタイルを採用しています。エレアコを取り巻くピックアップやプリアンプはますます進化しているようですが、その布石を作った重要なモデルが今回紹介のギブソンCF-100Eです。そんな歴史的な背景を知っておくのもいいかと思いますが、いかがでしょう。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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