Vintage Guitar Gallery

1969 Gibson J-200 Natural

今回はギブソンらしい豪華な装飾と大きさを誇るJ-200をご紹介いたします。

1937年に“Super Jumbo（スーパー・ジャンボ）”というモデル名のもとで発表され、ボディ・サイズは当初16 7/8インチ（428.625mm）でしたが、1939年に17インチ（431.8mm）となり、同時に名前も“Super Jumbo 200”へ変更。価格は当時としては高額な200ドルでした。

ちなみに17インチ・サイズのボディ・シェイプは、アーチトップ・ギターのL-5からの流用。表板には良質なスプルース材、サイド＆バックにはブラジリアン・ローズウッド（ハカランダ）を使用しておりました。

スケールはギブソン十八番の24 3/4インチ（628.65mm）ではなく、L-5と同じ25.5インチ（647.7mm）を採用。ロング・スケールにしたことによって、大きなボディを鳴らすのに十分なテンションを確保。この組み合わせは想像しただけでも良い音がしそうです。

ボディ内の構造は、当初はダブルXブレイシングを採用していましたが、1942年には通常のシングルXブレイシングへ変更となります。しかし、この頃より戦争の影響を受け、一時製造が中止になり、戦後1947年に再生産されるまでに作られた本数は約100本ほどと言われております。

1947年に再生産されてからの仕様変更ですが、まず戦前モデルのボディ・サイド＆バックにはローズウッドが使われていましたがメイプルを使用するようになり、これがその後のJ-200のスタイルとして定着しました。

カタログ上のモデル名は“J-200”でしたが、ボディ内に貼られたラベルを見ると、50年代初期までの個体には“SJ-200”と記されています。ナチュラル・フィニッシュは1948年よりオプション仕様として登場。レギュラー・カラーのサンバーストに対して、通称“ブロンド”と呼ばれるナチュラル・フィニッシュは生産本数が少なく、もちろん今回紹介の個体もレア・カラー・モデルということになります。

J-200はなんと言っても装飾が豪華なのが特徴です。まず独特の意匠をしたブリッジですが、初期のものは両サイドがくり抜かれており、その形状から“ムスタッシュ（口ひげ）”という愛称で呼ばれています。その後インレイが両サイドに施され、60年代に入ると、エレキにも使用されているチューン・オー・マティック・ブリッジが搭載され、このスタイルは限定のリイシュー・モデルでも再現されています。

今回のJ-200はチューン・オー・マティック・ブリッジではなく、1969年から採用された高さ調整可能なアジャスタブル・サドル・ブリッジが搭載されています。

面白いのは、ボディ内の表板の裏面側に、ボディ・トップをミュートするためのバーが仕込まれており、これはこの時期のモデルにしか見られない仕様となっております。

ピックガードは年代によりデザインが異なりますが、花をモチーフにしたデザインが基本となっています。初期モデルは花の周りにループが彫刻されており、非常に凝っているのですが、今回紹介の1969年製の場合、花の位置が変わり、かなりシンプルな感じに仕上がっています。ただ現行モデルのようなプリント・タイプよりは雰囲気があるように思います。現在でも古い鋳型は残っており、たまに活用して、レア・モデルを復刻しているそうです。

今年の3月に私、デュークはアメリカのモンタナ州にあるギブソン・アコースティック工場へ行き、これまで世界中のギタリストを魅了する名器を作ってきた職人たちに会ってきました。これだけテクノロジーが発達した現在において、ほとんどが手作りだったところには驚き、この職人気質が長い歴史を支える原動力なんだなと実感しました。 工場見学と研修後に、ギブソン・アコースティック・モンタナ工場で試験を受け、晴れて合格し“ギブソン・アコースティック・スペシャリスト”として認定され、認定書を受け取りました。この資格を胸に刻み、今後も良いギターを紹介していきたいと思います。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し（現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍）、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60～70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS