1973 Martin OOO-28

1973 Martin OOO-28

前回は戦前のトリプル・オー・モデルについて解説しましたが、今回は戦後モデルの仕様変遷に触れつつ、1973年製OOO-28をご紹介いたします。  まず戦後に大きな仕様変更があります。ボディのトップ材がそれまでアディロンダック・スプルースを使用していたのをシトカ・スプルースへ変更。50?60年代にかけて、稀にアディロンダックが使用された個体も存在しますが、ほとんどがシトカと思っていいでしょう。

また、戦後になり金属の供給が安定したことで、ネックの補強用のロッド材がスティール製に戻ります。そして1944年よりスタイル28の指板はドット・タイプのポジション・マーカーに変更となり、総体的に見た目がシンプルになっていきます。

ボディ・トップ材の変更により、見た目の印象も変わりました。アディロンダック・スプルースはもともと明るめな色合いをしており、経年変化で焼けていくとオレンジっぽく変色するのに対し、シトカ・スプルースは茶色っぽくなる傾向があります。 Martin OOO-28 Binding さらに1947年には、ボディの外周を飾るバインディングがそれまでのヘリングボーン・トリムから、白/黒によるプラスティック・トリムへ変更。これにより顔つきがかなり変わりました。

1960年代になると、さらに目立った仕様変更が行なわれました。初頭頃からヘッドの角が取れて、丸くなっていき、加えてグロ?バー製102ペグのツマミもラウンド型のため、総体的に丸っこいルックスに見えます。グローバー・ロトマティック・ペグは50年代後半から採用され始めましたが、クルーソンなどに比べると質感、重さが違うため、音の立ち上がり方、サステインが異なり、このあたりはエレキ・ギターと共通する部分でもあります。

1964年には、それまでのロング・サドルから埋め込みタイプの短いものへ変更。従来のブリッジ土台の面積が上下にやや広くなったことで強度が増し、音色のキャラクターも変わりました。サドルの面積や埋まり具合いでトーンはかなり変わりますので、調整等がシビアな部分でもあります。

1966年にはヘッドの外形が再度角張り、ピックガードがベッコウ柄から黒のアセテート材になり、ヘッド・デカール・ロゴも変更されます。翌1967年にはネック補強材がTバーからスクウェア・ロッドへ変更され、1969年にはボディ・サイド&バック材がブラジリアン・ローズウッドからインディアン・ローズウッドに変わります。

1973年にナット材がプラスティックに変更され、その後1975年にはNASAが開発したミカルタが使われるようになります。  今回のOOO-28は一度ペグ交換された後、再度グローバー・ペグに戻されております。グローバー・ペグ、黒いピックガード、インディアン・ローズウッドを使用したボディ・サイド&バックと、1970年代の特徴がそこかしこに見られ、サウンドは軽すぎず、しっかりと各弦の音が出ており、コード弾きの時は音がまとまり、アンサンブルの中でしっかりと存在感を発揮します。ほどよく枯れた感じもあり、そんな音楽にも適応する使いやすさを備え、人気のある年代です。

1970年代のアコースティック・サウンドを求める人には最適です。時代の音がとてもよく出ており、ヴィンテージ・サウンドを体感できると思います。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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