1954 Gibson Southern Jumbo Sunburst

1954 Gibson Southern Jumbo Sunburst

J-45と同じく1942年に誕生し、ラウンド・ショルダー・ボディの代表器として、ギブソン・アコースティック・サウンドを支えるサザン・ジャンボ。当時はハンク・ウイリアムスやウディ・ガスリーらの使用で有名でしたが、近年では山崎まさよしさんが愛用していたことで人気となりました。

1940年代前半まで第2次世界大戦の影響で資材の調達が困難な時期でもあり、特に金属パーツが不足していました。その影響で通常ネックに仕込まれているはずの金属製トラスロッドが使用できず、替わりとしてエボニー材で補強していました。

この1944年製はまさにエボニー・ロッド期のもので、ヘッドにロッド・カバーがないのが、その証です。

マーティンにおいても、アジャスタブル・トラス・ロッド搭載器と、スクエア・ロッド搭載器があり、それぞれの音質を比べてみると、前者より後者の方がダイナミック・レンジが広く、力強い低音が出る傾向があります。

ヘッドの表面を見ると、もう一点目立つ特徴があります。それは“ONLY A GIBSON IS GOOD ENOUGH(満足出来るのはギブソンだけ)”という謳い文句が描かれたバナー・ロゴで、これは1940年代製のフラット・トップ・モデルの特徴でもあります。このバナー・ヘッドは1946年に廃止となり、翌年にはスクリプト書体によるギブソン・ロゴもゴシック・スタイルへと変更されます。また初期から1952年頃までのヘッドは、先端にいくほど厚みが薄く、根元の方は厚くなっており、ネックの強度を高めています。

スクリプト・ロゴ+バナー・ロゴのモデルは大変人気があり、初期のギブソン・アコースティックの象徴となっています。現在でも初期型のギブソン・アコースティックを復刻する際、このふたつの仕様は再現されています。

現在生産されているトゥルー・ビンテージやモダーン・クラシックのサザン・ジャンボと言えば、ネックにバインディングが入っていますが、この仕様になったのが1940年代後半からで、今回紹介の個体やウディ・ガスリーのシグネイチャー・モデルなど、初期型には入っていません。

ギブソン・モンタナにおいてマスター・ルシアーを務めるレン・ファーガソンによれば“バインディングの巻き数だけでも音色に影響がある”と言っております。実際に弾き比べてみますと、音色の響き方に影響があることがわかり、面白いチェック・ポイントでもあります。

この他にも年代により、ネックの厚みやブリッジ・スタイルの違いもあり、ギブソンのアコースティックはなかなか興味深いものがあります。次回もギブソン・アコースティック・ギターの魅力に迫りたいと思います。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS

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