1958 Fender Jazzmaster Sunburst

1958 Fender Jazzmaster Sunburst

フェンダー社はテレキャスター、ストラトキャスターに続く高級機種ジャズマスターを1958年に発表しました。前述したふたつのモデルと同じ25.5スケールを採用し、ヘッドはやや大き目で、“フローティング・トレモロ”と呼ばれる、ブリッジからアーム・ユニットの弦を固定するところまで、やや距離がある特殊なアーム・システムを搭載しています。また“ジャズマスター”というモデル名のとおり、ギブソンのジャズ・ギターを意識したような箇所が何点かあります。

ピックアップは今までのシングルコイルと異なり、やや横幅のあるスタイルで、その見た目はギブソンのソープバー・タイプのP-90ピックアップと少し似てています。ピックアップの構造上、コイルの巻き方を縦長ではなく、横長に巻き付けると音が太くなると言われていますが、ジャズマスター用のピックアップは縦尺より横に長いスタイルにした結果、サイズがハムバッカー相当の大きさになりました。サウンドはテレキャスターやストラトキャスターより太目で、マイルドな音色が特徴となっています。

ブリッジ・サドルから弦を固定するテイルピースまでの距離を長くしているところも、ギブソン・ジャズ・ギター風でもあります。しかしジャズマスターの場合はヴィブラート・ユニットが付いており、これによりロック・サウンドへのアプローチもすることができます。このユニットを使い、数々のカッコいい名フレーズが生まれました。

今回紹介する1958年製はジャズマスターが生産された初年度のものになります。最大の特徴がゴールド・カラーの“アノダイズド”ピックガード。素材自体はアルミなのですが、これを電気分解で陽極酸化して金属表面に薄膜を作ったものが“アノダイズド”と呼ばれる処理になります。

このピックガードは1959年までの2年間のみ採用され、それ以降は3プライのセルロイドを使用するようになります。アノダイズドは初期のプレシジョン・ベースなどにも使用されており、見た目の良さと稀少性で大変人気があります。ちなみにジャズマスターは1958年に発表される前年にプロトタイプが存在しますが、それらには黒いアノダイズド・ピックガーと、ストラト用のネックが搭載されており、ピックアップ・カバーも黒でした。

配線は3ウェイ・トグル・スイッチが1弦側のホーン部に備わり、反対側の6弦サイドにはプリセット・システムが搭載されています。このシステムにはフロント・ピックアップ専用のヴォリュームとトーンが備わっており、スイッチをONにすると、プリセット回路が優先されます。ヴォリューム・ポットが1MΩ、トーン・ポットが50KΩという値のものが使われており、音色の特徴はやや甘めの傾向。

ジャズを意識して作られたモデルのはずが、実際に市場に投入されると、ザ・ベンチャーズを筆頭とするサーフ・インスト系のミュージシャンらに愛用されました。その後、1970年代後半にはテレヴィジョンやエルヴィス・コステロを筆頭とするパンク/ニューウェーブ勢、1980年代半ば頃にはソニック・ユースやダイナソーJr.などのオルタナ系、そして1990年代にニルヴァーナに代表されるグランジ系ミュージシャンが使ったことで、それまでマイナーな存在であったジャズマスターの人気が急上昇! これほどさまざまなジャンルの音楽に幅広く使われたわけですから、楽器として幸せでしょう。

まだまだ新しい音楽を作れそうな力を秘めている歴史に残るギターであること間違いなし。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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