1957 Fender Precision Bass Sunburst

1957 Fender Precision Bass Sunburst

フェンダー・ベースの原点となるプレシジョン・ベースは、1951年にテレキャスターのボディ・デザインで誕生しました。今回ご紹介するのは一般的に“プレベ”と言われるデザイン(今度はストラト風シェイプ)になる1957年製のプレシジョン・ベースです。

このデザインに変更されるのは1957年で写真の個体が初年ものになります。発売当初は“ゴールド・アノダイズド”のアルミニウム製のピックガードが付いており、表面には薄いクリアー・コートが吹かれています。

この“アノダイズド・ピックガード”は、1959年にべっ甲柄の合成樹脂製のものに変わるため、わずか2年と短命に終わりました。しかしながらオリジナルのアノダイズドが付いた初期仕様のスタイルは人気があり、現在フェンダー社は1957年の復刻版を生産するほど、多くのベーシストより支持されております。

変更されたのは外見上のデザインだけではなく、ピックアップのデザインもスプリット・ピックアップに変更されました。このピックアップはふたつのコイルによりハムバッキング効果が得られ、この構造によりノイズも少なくなりました。さらに1本の弦に対してふたつのポールピースが下にくるように設計されたことにより、バランスの整れたトーンを再現します。

1957?59年までの初期仕様は3弦のポールピースのみ高くした、通称“スタガード・ポールピース”となっています。今回の紹介器も1957年製のため、3弦のポールピースがピックアップ・カバーよりハミ出ているのを確認できます。1959年以降、ピックアップ・カバーの表面とポールピースの高さはツライチとなり、ポールピース自体の高さもすべてフラットになりました。

ブリッジも1957年に変更されました。まずブリッジ・サドルですが、1956年までは2本の弦に対してサドルがひとつという仕様で円柱形のスティール製でしたが、1957年以降からは各弦に対してサドルがひとつあてがわれ、形は円柱と変わらないものの、細かく溝の入った、通称“スパイラル・サドル”と呼ばれる仕様になりました。

またブリッジ・プレートをボディに固定する止めネジの本数も、3本から5本へと変更。このように生まれ変わったブリッジにより、各弦ごとのオクターブ調整もしやすくなり、より正確な音程とトーンが得られるようになっています。

1957?58年のシリアル番号の中には通常と異るケースがあります。それはシリアル番号の前に“-”(マイナス)で始まるものが存在。これらは通称“ダッシュ・シリアル”と呼ばれています。

今回の個体も“-20708”とネック・プレートに入っているのが確認できます。ネック・デイトは57年12月で、グリップ形状はVシェイプ。ポット・デイトは“3047408”ですので、“304”(スタックポール社)の57年48週ということがわかります。

コンデンサーはこの年代まで使われることの多い“コーネルダラー”製のオイル・コンデンサーが配線されていました。

肝心のサウンドですが、メイプル1ピース・ネックならではの芯の詰まったアタック感、乾き切ったアルダー・ボディの深みのある音色など、実に魅力的。音の切れが良く、中域もしっかり出力してくれ、ベーシストなら必ず虜になること間違いなしの、本当に素晴らしいベースです。

半世紀経った今でも通用する、本物の音がここにあり、ロック、ポップス、パンク、R&Bと、すべてのジャンルに愛され続けるベースこそが、プレシジョン・ベースなのです。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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