1963 Fender Jaguar Sunburst
- Brand: Fender
- Model: Jaguar
- Color: Sunburst
- Year: 1963
- Search For: "Fender Jaguar"
1963 Fender Jaguar Sunburst
1960年代初頭フェンダー社は新モデルとしてジャガーを発表する。同時期に発表されたモデルではジャズ・ベースがコントローラーが新たになって再登場。
ジャガーは1958年に発表されたジャズマスターの要素を含みつつ、ミディアム・スケールを採用ているところが特徴。ストラトやテレキャス、ジャズマスターなど、主要モデルのいずれも25.5インチ・スケールを採用していたのに対し、ジャガーは敢えて24インチ・スケールにしているところが面白い。このモデルは当時流行していたサーフ・ミュージックの流れで開発され、広告の仕方もサーフィンをする若者をモチーフにし、当時の裕福な白人の若者をターゲットにしていた。
こうした時代背景の中で登場したジャガーだが、60年代後半になるとエリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベックなどのギター・ヒーローがストラトキャスターを使用し始め、人気は逆転した。音楽の流行に乗れなくなったジャガーは、70年代になると生産中止になり、80年代にはジャズマスターも生産中止となる。
しかしながら90年代に入ると、グランジ・ロックやオルタナティブ、ネオ・サーフといった音楽の台頭により、ジャガーやジャズマスターは再び注目を浴びることになる。特にカート・コバーン(ニルヴァーナ)という新しいロック・スターが登場したことにより、安定した人気を確保することになった。
今日では日本のバンドにおいて、ヴァーカリストなどが好んで持つ姿を見かけるが、これはそれだけ90年代のロック・スターたちが影響が強かった現われであろう。ジャガーはクリーン・トーンからクランチまで、守備範囲が広いため、今後も愛され続けられるに違いない。
今回はこのジャガーについて紹介しよう。写真のギターは1963年製で、指板はラウンド・ボード、クレイ・ドット・ポジション・マークという仕様を持つ。1962年に登場した時はスラブ・ボードで、ジャガーのロゴは最初からトランジション・ロゴが採用されていた。ボディは“オフ・セット・ウェスト”と呼ばれる左右のくびれ位置が非対称となったシェイプで、立って持った時にくびれたボディのラインが垂直に重なる、とてもバランスの良いシェイプである。
ビブラート・ユニットはジャズマスターと同様“フローティング・トレモロ・システム”を採用。ユニット内部に押し式のスプリングが入っており、表側のプレートのネジを回すとアーミングのバランス調整が取れるようになっている。
またこのブリッジには“トレム・ロック”と呼ばれる、アームを固定する機能が搭載されている。その構造だが、プレート表側に備わった丸いツマミをボディ・エンド側へスライドさせると、中のアーム・プレートがアーム・アップすることができなくなり、先程のアーミング調整用のネジを締め付けていくと、アームはほぼ固定される仕組みになっている。
アッセンブリー関係はジャズマスターからの流れで“プリセット・スイッチ・システム”を採用。このスイッチ・システムは、フロント・ピックアップに対してのみに利くヴォリュームとトーン・コントローラー及び切り替えスイッチが備わっており、ここで任意の設定をしておけば、スライド・スイッチをオンにすることで、そのプリセットした設定を呼び出すことができる。
なお、このシステム内のトーン・ポットの抵抗値が50kΩのため、プリセットをオンにした時の方がノーマル時より、甘くて太めの音色となる。ピックアップの切り替えはジャズマスターでは3点トグル・スイッチであったが、ジャガーはフロントとリア各PUに対してオン/オフ・スライド・スイッチが備わっている。加えてコントロール・パネル上の3つめのスライド・スイッチは、ロー・カット・スイッチで、これをオンにするとシャキッとした鋭い音が出力される。
ピックアップはジャガー独自のユニークな構造をしており、ピックアップ両サイドに“ヨーク”という鉄の板を挟むことにより、ピックアップの磁束を変形させ、S極からN極へ効率よく磁場を形成する優れものである。このピックアップから出る独特な歪みサウンドは、この構造による効果が大いに発揮されている。
今回紹介するジャガーは驚くくらいにコンディションが良く、使用された形跡がほとんど見られない。これが本当の“クローゼット・クラシック”と言っても過言ではないであろう。ケースもまた綺麗なホワイト・トーレックスで、おそらく40年間ケースの中に収納し、環境の良い場所で保管されていたのであろう。このギターを見て触れていると、タイム・マシーンに乗って、40年前に戻ったような不思議な感覚に陥る。フェンダー万歳!
Written by デューク工藤
本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。
御茶ノ水本店FINEST GUITARS