イエローとブラックの2色によるサンバースト・フィニッシュ。

ハカランダを用いた指板。

プラスティック・ノブのクルーソン・ペグ。

ノブはバレル・タイプ。

1956 Gibson Les Paul Jr. Sunburst

1956 Gibson Les Paul Jr. Sunburst

1952年に発表されたレス・ポール・モデルに続き、普及モデルとして、よりシンプルなデザインに仕上げられたレス・ポール・ジュニアが1954年に登場した。P-90のシングルコイル・ピックアップをブリッジ寄りに1発搭載。そのピックアップ・カバーの形状が、両サイドに三角形のボディ本体に固定させるための耳が付いていることから“ドッグ・イヤー”の愛称で呼び親しまれている。

レス・ポール・スタンダードに搭載されたP-90には、三角形の止め具が付いておらず、こちらは外観が石鹸に似ていたころから“ソープ・バー”と呼ばれている。中身は“ドッグ・イヤー“と変わらないのだが、P-90ピックアップは年代により中の構造は微妙に変化していっている。ボディの形状は、初期型がシングル・カッタウェイ・シェイプが採用されている。フィニッシュはまずウッド・フィーラーを全体に施して目止めをし、顔料系のイエローを吹き、その上から外周にブラックを吹き付けることでサンバーストに仕上げている。さもスポットライトがボディに当たったような雰囲気となり、廉価モデルとはいえ、高級感を醸し出している。

その後1958年にダブル・カッウェイ・シェイプにモデル・チェンジをし、フィニッシュはチェリー・レッドとなる。しかし染料系の塗料は色が飛びやすく、半世紀経った今、鮮やかにチェリーを残したものは大変少なく価値が高い。この塗料の特性に気付き、色が飛びにくい顔料系の塗料に変わるのは1960年になってからだ。1959年後半にはマイナー・チェンジがあり、ボディ外周の角のアールがより丸く加工されるようになる。そして1961年にさらに大きくモデル・チェンジされ、ボディがSGシェイプとなった。ちなみに“SG”は“Solid Guitar”の略語である。

モデル名が正式に“SG”となるのは1963年からで、ヘッドから“Les Paul”のロゴが消える。これはギタリストのレス・ポール氏とギブソン社との間で名前を冠する契約が更新がされなかったためである。今日では61年までのものを[レス・ポール・ジュニア]、63年以降のものを[SG/レス・ポール・ジュニア]と呼び分けている。

今回紹介する1956年製レス・ポール・ジュニアは、シングル・カッタウェイ・シェイプで、黒いピックガード(チェリーになってからはベッ甲柄)、ボディ・トップはブラック・サンバースト、バックとネック裏はシースルー・ダーク・ブラウン・フィニッシュ、ブリッジはスタッド・ブリッジ(バー・ブリッジ)という仕様を持つ。ちなみにスタッド・ブリッジはサウンド面で大きく影響し、サステインの良い、ロック・サウンドを出力する。

テッド・マッカーティが発案したストップ・テイルピースは、非常に優れたデザインとなっており、ブリッジも兼ねて使用することが可能であった。ブリッジとして使う場合は、弦をピックアップ側からいったん通し、ペグ方向へ折り曲げ、テイルピース上部に弦を乗せるというスタイルになり、これは俗に「ラップ・アラウンド」方式と呼ばれている。サドルがない分、駒の振動を気にする必要もなく、しっかりとしたテンションを保持してくれる。加えてマホガニー・ボディのマイルドかつ繊細な高域の振動を存分に拾ってくれるというのだから、まさに優れモノ。

オクターブ調整は、ブリッジ両サイドにあるスタッドが止まる凹型の箇所にイモ・ネジが付いており、六角レンチにより調整が可能となっている。ペグはクルーソン製で、1列に3個が連結したスタイルで、これはアコーステック・ギターなどにもよく使用されるポピュラーなものだ。コントロールは1ヴォリューム、1トーン。ノブの変遷は、54年初期はバレル・タイプ、56年からはゴールド・トップ・ハット、58年からはブラック・ハットという流れで、仕様は変わっていった。  今回採り上げたレス・ポール・ジュニアは、スペックを検証していくと、最初期型だということがわかる。キース・リチャーズやジョン・レノンといったロック・レジェンドらが愛用していたことからも、究極のロックン・ロール・ギターとして親しまれているレス・ポール・ジュニア。そのシンプルな外観や仕様から弾き出されるファットなトーンは、今後も多くのギタリストたちを魅了していくこと間違いなし。

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

御茶ノ水本店FINEST GUITARS

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