スモール・ヘッドで、“コンター・ボディ”デカールが貼られた、初期型仕様。

指板はブラジリアン・ローズウッドで、ポジション・マークはクレイ・ドット。

指板はラウンド貼り。Aネックは、ムスタングとジャガーに多く見られる。

頭に“L”が付くシリアル・ナンバーは、1963?65年頃まで採用された。

フロント、リアともにグレイ・ボビンで、PUデイトは64年と記されている。

ポットとジャックは金属製のコントロール・パネル上に搭載。

ダイナミック・トレモロのプレート上には[PAT PEND]の刻印が入る。

渋谷店の2007年当時に取り揃えていたムスタングのラインナップ。

1965 Fender Mustang Blue

  • Brand: Fender
  • Model: Mustang
  • Color: Blue
  • Year: 1965
  • Serial Number : L50xxx
  • Neck Date : 8 OCT 64 A
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1965 Fender Mustang Blue

1960年代中頃、米国では日本やヨーロッパから廉価ギターが輸入され、多くのエントリー・ユーザーを取り込んでいた。エレキ・ギターのトップ・ブランドとして君臨するフェンダー社は、自社のポジションは変えずにスチューデント・モデルの開発することで低価格帯のギターも提案していた。遡れば50年代中頃より生産を開始したのが[MUSIC MASTER]や[DUO-SONIC]。そして1964年8月より発売開始された[MUSTANG]は、ミュージック・マスターやデュオ・ソニックにはなかったトレモロ・ユニットが搭載された。無類のカー・マニアであったレオ・フェンダーは、同年発売されたフォード社のムスタングと同じようなカラー・バリエーションを用意し、共に歩みを始めることとなる。

今回紹介するムスタングは1965年製であるが、スペック的には1964年初年度仕様を持つ。ヘッドの形状は1965年まで採用されていた「スモール・ヘッド」と呼ばれるもので、66年以降のヘッド形状(ストラトと同じくラージ・ヘッド)とは異なり、プリCBSを彷彿とさせる。ヘッドの丸い部分には、[OFFSET CONTOUR BODY]のデカールが貼られているが、当の本器のボディにはコンター加工はなく、コンター仕様となるのは1969年になってからである。このシールは1967年製より撤去されていることから、間違って貼られてしまった経緯が伺われる。

ポジション・マークはクレイ・ドット。この仕様は1964年からフェンダー全モデルで採用となるが、指板サイドと指板面でクレイとパールが混じったものがあり、クレイ/クレイ、クレイ/パール、パールのみと3タイプが存在する。これはフェンダー社は仕入れたパーツを、最後まで無駄にせずに使い切るためと言われている。また、ネックにおいては同年式モデルのジャガーのものを流用していたという話もあり、当時からリサイクルに取り組んでいたところにもレオの天才っぷりが発揮されている。

ネックの形状は、Aネック(ナロウ・タイプ)とBネック(カマボコ型の標準)がある。まずAネックだが、パーカッシブなサウンドが特徴となっている。一方のBネックは中低域が出やすく、扱いやすいサウンドが持ち味だ。指板にはハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)が65年頃まで使用され、この材特有の立ち上がりの良さに加え、粘りがあり、ウォームなサウンドが初期モデルの特徴となっている。

Written by プロフェッサーKenny 岸本

平成8年入社。ヴィンテージ・ギターに関しての知識はイシバシでNo.1! プロ・ミュージシャンのお得意様も多く、彼のマインドに惚れ込み、多数お店に通っていただいている。また、英語力もまずまずのため、直接ギター工場のマスター・ビルダーたちと話し合いすることも。彼自身のフェイバリット・ミュージックはカントリー・ロック、ブルーグラスなど。