モデル・ロゴは、“Les Paul”は筆記体、“Junior”はブロック体。

3連型のクルーソン・ペグをマウント。ノブはプラスティック。

“ドッグ・イヤー”カバーによるP-90ピックアップ、ストップ・バー・ブリッジ。

ピックガードを取り外すと、焼け跡が左右対称形になっている。

キャパシターは通称“バンブル・ビー”と呼ばれているタイプが付いている。

1959 Gibson Les Paul Jr Cherry Red

1959 Gibson Les Paul Jr Cherry Red

1954年中期にレス・ポール・スタンダードの兄弟機として発売されたのが、レス・ポール・ジュニアである。スタンダードがアーチトップ構造であったのに対し、ジュニアはフラット・トップで、1枚板のマホガニー材を使用。その当時使用していた材だが、現在入手困難品種に指定されているホンジュラス・マホガニー。材の特徴だが、まず見た目は魚の鱗のように角度によって「キラッ」と光を放ち、そして何より軽量であることが挙げられる。

ボディには1マイクのみをマウントした男侠あふれる仕様。ブリッジはスタッドがボディへ直に打たれたスタイルで、なおかつテイルピースが一体型であることから、弦振動が直接ボディに伝達。これにより本体の鳴りは非常に優れている。指板には、当時は標準仕様だったブラジリアン・ローズウッドを使用。ドット・ポジション・マークに、バインディングなしと装飾類をシンプルに仕上げることで作業コストを削減し、これにより価格もスタンダードに比べて低価格設定となっている。

50年代のレス・ポール・ファミリーは、カスタム、ジュニア、スタンダード、スペシャルというラインナップ。この中でスタンダードは1952?60年までの間に9,557本を生産したのに対し、ジュニアはそれの約2倍の生産量だったという。このことからもエントリー・ユーザー向けの商材だったことが窺い知れる。ちなみに1959年当時のレス・ポール・ジュニアの価格は$132.50で、スタンダードが$265、カスタムは$395であった。

1958年中頃には、今回紹介するダブル・カッタウェイ仕様へと変更となった。58?59年の中頃まではボディのエッジが立ったシェイプをしており、59年中頃から60年に行なわれたマイナー・チェンジで、そのエッジ部が丸くなった。

1961年には、スタンダード同様にSGシェイプへと変更。そして、再び登場するのは25年後の1986年で、ドッグ・イヤー・タイプのカバーによるP-90や、チューン・オー・マティック・ブリッジの採用、ゴールド・ノブに、メタル・ツマミのチューナーなど、50年代のものとはまったく違うモデルとなってしまう……。  現在では、ギブソン・ヒストリック・コレクションが1993年よりスタートし、当時のモデルを研究して、見事な復刻モデルを完成させている。中でも、1999年以降のモデルでは、無垢のマホガニー材に一番先に塗られる目止め剤として、当時のような杢目が滲んだ感じになるようなフィラーが使用されるようになった。これにより、50年代当時と遜色ないリアルなフィニッシュを実現している。このフィニッシュを提唱したのが、かの有名なトム・マーフィーで、彼のアイデアが至るところに、ヒストリック・コレクションには詰め込まれている。また、ヒスコレでは写真のようなバンブルビー・キャパシターも採用しており、普段目に触れない内部パーツにおいても、オリジナルの雰囲気を損なわないように配慮している。  写真撮影のためにピックガードを外したところ、その下から経年変化でボディが焼けていない箇所を発見。ところが塗料の残り方が通常とは違うではないか! 検証してわかったのが、このギターを左用として使用するために、ピックガードを左右反対に付け替えていたということ。まさにこのギターは、荒波にもまれた歴戦の勇者であったわけだ。  80年代LAメタル・シーンに君臨したY&Tのサイド・ギタリスト、ジョーイ・アルベスもレス・ポール・ジュニアを愛用していた。あまり有名なギタリストではないかもしれないが、彼が奏でるリフのひとつひとつにレス・ポール・ジュニアの特徴が良く出ていたと思う。そして何よりも忘れてはならない筆頭ユーザーが、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズ!

Written by デューク工藤

本連載を執筆していた当時は渋谷店に勤務し(現在は御茶ノ水本店FINEST GUITARS在籍)、プロフェッサー岸本が一番弟子と認めた存在。数々のレジェンダリーなヴィンテージ・ギターを師匠と共に見て触わり、オールド・ギターに関する知識を蓄積。自身のフェイバリット・ミュージックは60~70年代のロックとブルースで、音楽趣向においてもヴィンテージ路線は貫かれている。

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