Gibson The FIREBIRD Custom Built 2001年製

プロフェッサー岸本によるギター重点解説 Gibson The FIREBIRD Custom Built 2001年製

Gibson FIREBIRDはエレキギターの代表機種が連想されるが、同名称で製作されるこのギターは正真正銘アコースティックギターである。ヘッド部分には羽ばたくFIREBIRDが冠され、指板のポジションマーク、ピックガードまで炎をモチーフにした豪華な装飾となっている。

ボディー形状はギブソンのトラディショナルデザインとなるスクウェアーショルダーで、始まりは60年代初頭のDOVEやHUMMINGBIRDまで辿り着く。これらも鳩やハチドリをモチーフとなる共通した鳥類デザインで、日本の70年代のフォークムーブメントでは、多くのアーティストもトレードマークとして演奏し、現在に至るまで根強い人気を博している。

特筆すべきは、ギターのネーミングにもなっている“Firebird”である。このギターが製作されたギブソン・モンタナ工場は、イエローストーン国立公園の入り口に位置する。1988年、イエローストーン国立公園では大惨事となる山火事が発生した。自然鎮火に任せた山火事は、公園総面積の36%となる約3,213km²を消失し、豊かな大自然は一面焼け野原に、、、、皆絶望した。しかし、そこには新たな希望の種が生命を宿し、自然の息吹が不死鳥のように復活する。この出来事からインスパイアされ、どんな困難にも立ち上がる不死鳥こそが、このFirebirdなのである。

ギターに使用される材料を見ていくと、プレミアムAAAグレード(最上級木材)のシトカスプルースによるリッチなサウンドを演出し、横板/裏板にも最上級AAAグレードのウエスタンメイプルが使用される。このウエスタンメイプルは比較的温暖な地域に生息するメイプル材であることから、レスポールに多く使用されるハードロックメイプル(寒冷地に生息する硬化材のため、音色もサスティーンの効いた硬質なサウンド)と比較すると、柔らく温かみのある倍音成分が魅力である。更に、工場内のカスタムショップにて厳選されたプレミアムグレードにあたるこのウエスタンメイプルは、誰もが目を奪われる見事なキルトメイプルが使用されている。

60年代に登場したこのボディー形状は、最大の競合メーカーであるMARTIN社のアコースティックギターに対抗し市場導入され現在に至るが、特にこのFirebirdは、モンタナ工場でギター製作に従事する職人たちの“大自然への敬意”が込められたメモリアルなギターとなっている。