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ピックアップは磁性体である弦の機械的な振動 を電気振動に変える変換器であった。これに対し てスピー力ーはアンプの出力端子から送り出され る電気信号を機械的振動に変化させ、さらに音響 的な振動、即ち音波に変化させる、電気ー機械ー 音響変換器である。スピー力ーはその構造、性能、 用途などにより多くの分類方法か考えられるが、 エレクトリック・ギターの再生用として多く用い られているものは直接放射スピー力ーと言われて いるものである。これは振動板としてふつう0.3 mm〜0.5mm程度の厚さの紙を項角100度〜160度ほど の円すい形に成形したもので、この事からコーン ・スピー力ーとも呼ばれている。現在主流をなす このコーン・スピー力ーは製品として発表された のは1925年であり、その後原理的には殆んど変化 は見られない。しかしながらいまだ多くの改良点 は残されていて、種々の用途に応じて改善されつ つある。オーディオ用として使用されるスピー力 ーと楽器用とは音を再現するという目的にもかか わらず、その構造、特性は必然的に異なるもので なければならない。このスピー力ーの章でその違 いを見るためにも、またスピー力ーの根本的原理 を明らかにするためにも、基本に戻っていくらか 深く追求してみたい。またスピー力ーを取りつけ るボックスやバッフルの必要性とその特性などに ついても触れてみたいと思う。楽器用としての代 表的なスピー力ーのいくつかを例にとりその特性 も明らかにしてみよう。 |
●コーン・スピーカー
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●最低共振周波数
コーン・スピーカーに表われる図III-18における
周波数はスピー力ーの特性を決定する重要なもの
である。前に述ぺた単一共振系、そして図III-18
より共振周波数か次のように与えられる。 ● ![]() は振動系に付属するすべての質量であり、sは スティフィネス即ち弾性の強さを示す。スピー カーの低音域の差異性限界は、このfoによって 決定される。そして、このf_{o}における共振の鋭 さはこの共振周波数付近の特性を決定する。さ らにスピーカーを取り付けるボックスはf_{o}を元 に設計をする必要がある。極論すれば、ボック スは低音域のみに必要であり、普通の密閉箱、 また位相反転バッフル、ホーン・バッフルなど の設計はf_{o}をもとに行う。 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ● ![]() ![]() 即ち、この力が振動板を動かす駆動力である。 力と速度の比を機械インピーダンスと呼ぶが、 図III-18のコーン・スピーカーの機械インピーダンスは 次の値である。 ● ![]() またボイス・コイルのインピーダンスは次の通りである。 ● ![]() 振動系が速度Vで動くときの力は、ZmVである。 即ち35式のボイス・コイルの電流による力はこれに等しい。 ● ![]() 次にボイス・コイルの端子に着目してみよう。 電気端子に加えられた電圧 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ● ![]() 38式に注目すれば、式は次のように改められる。 ● ![]() 即ち機械系の要素も40式には含まれており、こ れにより電気系、機械系の関係は同時に一つの電 気回路として表現される。図III‐21は図III‐20を等 価的に置き換えたものである。これにより中域以 下の周波数において電気インピーダンス特性は殆 ど完全に表現できる。図III‐22に示したのが電気イ ンビーダンス特性であり、一般に自由インピーダ ンスと言われるものである。機械系に共振か生じ ると最も振動速度が速くなる。ボイス・コイルに 生じる逆起電力は振動速度に比例し、共振時に 最も大きくなる。これは電気端子より加えた電流 を打ち消す方向に働く。即ちコイルに流れる電流 は減少し、見かけ上電気インピーダンスは増大す る。そこで共振時にインビーダンスは最も大きな 値を示す。特性に生じているピークはボイス・コ イルが動くために現われ、コイルが動かなければ 全く存在しない。今振動板を強く押さえて、振動 を起こさないように測定してみると図III‐22に示 した点線のような特性を示す。これはボイス・コ イル自身の電気インピーダンス特性であり、制動 インピーダンスと呼ばれる。そしてボイス・コイ ルが動くために生じるピークの部分を動インピー ダンスと呼ふ。40式より電気端子からみたインピ ーダンスは次のように与えられる。 ● ![]() 即ち、これが自由インピーダンスであり、最初 の2項が制動インビータンス、最後の項が動イン ビーダンスである。41式を実際に周波数に対して 考慮してみると、その共振周波数は34式で与えた ものと若干異なつているが、その差は小さい。41式 を見ても動インピーダンスの分母の虚数部か0に なる周波数においてインビーダンスか大きくなる ことかわかる。 ![]() ![]() |
次に実際にコーン・スピー力ーから放射される
音について考えてみよう。今までの等価回路では
各要索を一つにまとめて表わしているが、現実に
は振動か空気を動かすための付加質量や放射抵抗
も存在するが、実際に放射抵抗は極めて小さく、
前回路において付加質量は加え合わされたものと
考えて良い。これらの昔響インピーダンスを負荷
として音波を発生するが、振動板の微小面積より放
射される音を考え全面積について積分し、全体の
音圧を求めてみるとスビー力ーを円板と仮定して
中心軸上の任意の距離rの位置で次のようになる。 ● ![]() ρは音波を伝える媒質の密度であり、ここでは 空気の密度である。Sは振動板の面積、 ![]() ![]() ● ![]() 前にも述べたように2×10^{-4}μbarを基準にとる と音圧レベル・SPLは次のように与えられる。 ● ![]() 次に簡単な理論による音圧特性を書いてみよう。 スピーカーの駆動力を ![]() ● ![]() Zmは前にも述べたように単一共振系としてお り、Zm=rm+j(ωm-s/ω)である。このインピーダン スの虚数部、即ちリアクタンスの周波数特 性を図III‐23に示す質量によるリアクタンス成分 は周波数に比例し、コンプライアンス成分は逆比 例する。ぞして共振周波数におけるリアクタンス は0となり、機械抵抗のみか存在する。まずω<ω_{0} の共振周波数より低い帯域においてはコンプライ アンス成分か大きく、機械抵抗、質量成分を無視 するとZm≒S/jωと考えることかでき、45式は次のように なる。 ● ![]() 駆動力はボイス・コイルを流れる電流に比例す るので、周波数に対して定電流を与えてやると一 定になる。即ち46式において変数となりうるもの は、いま周波数のみであって、共振周波数より低 い周波数範囲での音は、周波数の2乗に比例する。 次にω<ω_{0}の共振周波数より高い範囲では、Zm≒S/jω と考えることかでき、その結果45式は次の ようになる。 ● ![]() ![]() ![]() ● ![]() |
いままで述べてきた音圧特性は、スピー力ーの
中心軸上1mの距離とした場合であり、余りに
スピーカーに近づくと42式の関係は成立しなくな
る。またその逆に遠く離れると、スピー力ーの回
リの障害物により反射した音も直接音と同時に聞
こえ、理論的値には一致しない。また中心軸上を
はすれると音圧の値は異なってくる。このことは
スピーカーが角度に対して特性か異なる指向特性
を有しているということである。振動板か平面の
円板であれば指向特性は比較的簡単に解くことが
できる。ぞれは一般に指向性関数として定義され
るが、それより求められる円板の指向性を例とし
て図III−25に示す。図III‐25ではdを円板の直径、
λを音波の波長としており、完全に埋論的に求めら
れたものである。周波数が高くなれぱなる程指向
性は鋭くなり、逆に極端に低い周波数では殆んど
指向性を有しない。これは密閉箱に取りつけられ
たスピーカーの後方にいても低昔は良く聞こえる
が高域の音は、はっきりしないということからも
わかる。![]() |
実際に測定した一般的なコーン・スピー力ーの
特性を観察してみよう。図III‐26に無響室において
JlSボックスに取り付けて測定した軸上1mの点
における音圧周波数特性、30度、60度の指向周波数
特性、高調波歪特性、インピーダンス特性を示す
か、用いたスピーカーは口径20cmのごく一般的な
コーン・スピーカーである。このような特性の良
否判断は非常に難かしく,実際にすばらしい音を
発するスピーカーでも特性か良好であるとは限ら
ない。最終的判断は人間の聴覚に頼らざるを得な
く、物理的特性はその基礎データに他ならない。
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このスピー力ーの章の目的はギター・アンプと
組み合わされている楽器用スピー力ーについて考
えてみる事である。そのためにここまでスピーカー
の原埋や一般的コーン・スピーカーの特性など
についてみてきた。そこでさらに楽器用スピー力
ーとしての特質をみるために、オーディオ用の八
イファイ再生に必要なスピーカーの性能について
全体的に考察してみよう。
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