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●ギブソン・レスポール・モデル
レスポールはヴァイオリンのストラディバリウスを解析して
得られた技術を応用したとされ、
ギタリスト"レス・ポール"とギブソン社との共同開発によるものである。
モデルには、スタンダード、デラックス、カスタム、
ザ・レスポールなどが用意されている。ヘッドの形状は左右対称で、伝統的なギターのヘッドを持ち、 左右3ヶずつ2列にクールソン社製チューニング・マシンを並べてている。 ネック主部とは約16〜18度くらいの角度で、1本の木材より切り出されている。 ←左の図。この木取りは伝統的な方法であるが木材のむだが多い。 ネック材にはホンジュラス・マホガニー、メイプルなどが使われている。 ヘッドの表面には薄い化粧板が張られ、白蝶貝のブランド・ネームと 5点のインレイが入り、外周には5重のバインディングが施されている。 (スタンダードにはインレイとバッティングはない) アジャスト・ロッドはヘッド部分で調整するタイプで、 アジャスト・ロッド・カバーにはレスポールの機種名の文字が入っている。 フィンガーボードはスタンダード・モデルがローズウッド、 カスタムがエボニー製で、断面のRは約230mmくらいで 比較的ゆるやかなカーブを持っている。 初期のカスタム・モデルには"フレット・レス・ワンダー"と呼ばれる高さの 低いフレットのものがあったが奏法の変化で普通のタイプになっている。 ポジションマークは、スタンダード・モデルが逆台形、 カスタム・モデルは長方形である。 |
ネックのバインディングにはサイド・ポジション・マークが施され、
上の図↑のようにフレットがバインディングの内側にあるものと、
バインディングの上までフレットが伸びた
"オーバー・バインディング"タイプがある。
オーバー・バインディング・タイプのフレットは有効長があるため、
チョーキング時の弦のはずれを防ぐ効果を持つ。
ナットはスラスチック製がほとんどである。
ネック主部はメイプル、マホガニーが使われている。ネックとボディのジョイントはセットネック方式であり ヴァイオリンのように多少の角度をもってセットされている。 ボディは比較的小型で重く、シングル・カッタウェイの形状を持つ ソリッド・ボディである。 ボディ本体はマホガニーのベースの上にアーチ状に削り出した 単板メイプルを接着している。 ボディ外周にはセルロイドのバッティングがあり、 ボディの接着面をおおっている。 ブリッジはチューン・0・マチックと呼ばれ、 2本のナットでボディにマウント、上下アジャストを可能にしている。 駒は断面が3角形に近い形状を持ち前後に アジャストできるようになっているが、 ブリッジが細いため前後のアジャスト範囲は狭い。 このため、ブリッジはネックに対し1弦側に比べ 6弦側が遠くなるように多少斜めにボディにセットされている。 テールピースはネジで上下アジャストができる引っかけ式で、 弦のブリッジへのテンションを変えられるようになっている。 弦はテールピース下部の穴に通して固定する。 弦長は24 3/4インチ、22フレットまである。 ピックアップはハンバッキング・タイプ・ダブルコイル・ピックアップで、 そのサウンドは俗に"ギブソン・サウンド"と言われるほど知られている。 本体には調節可能なポールピースが付き、 スプリングを介して2本のビスでピックアップ・エスカッションに密着され、 4本のネジでボディ上に固定されている。 ピックアップは0.06mmの銅線を約4000ターン巻いたものを2個づつ使っている。 磁石にはアルニコ系材料が使われ、鉄のヨークとポールピースとで 磁気回路を作り出している。 ボリュームには250〜500kΩのBカーブ、 トーン・コントロールにはAカーブの可変抵抗器を使用していて、 それぞれのピックアップごとに付けられている。 ノブ(つまみ)はギブソン・スピード・ノブと呼ばれ、 すばやいアクションに応じている。 またピックアップ切換えのトグル・スイッチはボディ左端上部に、 アウトプット・ジャックはボディ・サイドに付けられている。 これらの電気系統を結ぶ配線用の穴はボディ材を張り合わせる際に加工し、 ボディ内部をつらぬいている。 塗装は"ブラック・ビューティー"と呼ばれる黒を中心に、 チェリーサンバースト、ホワイト、ゴールド、ナチュラル仕上げなどが 用意され、全てラッカーで仕上げられている。 |
| ○レスポールモデル振動系 |
| ・分析 |
左の図←のようにレスポール・モデルはヘッド=ネック主部、
ネック=ボディ間に角度がつけられている。
このためチューニング・マシン=ナット、
ブリッジ=テールピースの角度a、bが大きくとれ
安定した振動とサスティンを得る事ができる。
この角度を大きくとるとブリッジへかかる力は大きくなり
振動はボディにより伝わるようになるが、
あまり角度をとりすぎると駒付近の弦の機械抵抗が
大きくなり振動損失が大きくなる。
つまり倍音成分やサスティンが失われる。
また、駒、ナットでの摩擦が大きくなるため
チューニングがとりにくくなる。
その上、ヘッド=ネックの接合部が折れやすくなる。
このため、最近のモデルは初期のものに比べヘッドが浅くなり、
この部分にヒール的な部分をつけ強度を保っている。
逆にこの角度を小さくとると弦振動はナットからチューニング・マシンへ、
あるいはブリッジからテールピースへもれたり、
反射がおこり弦振動に悪影響を与え、
サスティンを著しく低下する。弦振動は少なからずチューニング・マシンとテールピースにより、 ヘッド、ボディに伝えられているため、 チューニング・マシンなどをグローバー、シャーラーといった 高級な質量あるものに替えられることで 音質を変化されることもできる。 ボディはトップがアーチド・トップのメイプル、 バックが柔らかいマホガニーで作られている。 この固く重いメイプル・トップが長いサスティンを生みだす。 これはブリッジの下部に質量があると振動は消費されにくく、 一部は反射してブリッジから弦へと押し戻されるためである。 残りの振動エネルギーは次の様な形で ボディのすみずみまで伝えられる。
レスポールのトップは断面が右の図→のようになっている。
トップの中央に与えられた振動は外周にゆくほど減衰するが、
その分トップの厚さが小さくなっているので、
均一の厚さの場合よりも減衰しにくく、
ボディ各部へむらなく振動を伝えている。
これはアコースティック・ギターの力木の働きに類似している。
トップから伝えられた振動はマホガニーのバックにより
消費(ボディを鳴らす)され、柔らかいサウンドを生み出す。このようにレスポールのボディの構造は、 ボディで適度に振動を消費させ、かつサスティンも得るという、 バランスのとれた形となっている。 ネックは16フレット付近でボディに接合されている。 ネックは振動系を支える意味でも十分な強度を要求される。 音色の好みは別として、マホガニー・ネックよりも メイプル・ネックの方がテンションに対する チューニングの狂いは少ない。 |
| ○レスポールモデル電気系 |
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レスポール・モデルにはハンバッキング・タイプの
ピックアップが2個装備されている。
3ピックアップのものもあるが、通常は2ピックアップ・モデルである。
ネック側をリズム・ピックアップ、ブリッジ側を
リード・ピックアップと呼んでいる。
リズム・ピックアップのポールピースは、
ほぼ弦長の1/4、つまり24フレット上に位置している。
リード・ピックアップはブリッジに近い方が
より高調波成分をひろいやすいが、
あまりブリッジに近いと出力が弱くなるため、
レスポールではある程度、ネック側によせている。
前述のようにピックアップの位置で音色はかなり変化するが、
当然ながらリズム・ピックアップはソフトで低音が豊かなサウンド、
リード・ピックアップは歯切れの良い
ブライトなサウンドになっている。 また、ハンバッキング・タイプの特徴でもあるが、 磁気回路がU字形で、2ヶ所で弦振動をとらえるため、 ポールピース=ヨーク間の距離によっても ピックアップする倍音関係は変化する。 デラックス・タイプのように、この間隔の短いものは、 当然高域よりのサウンドになる。
ピックアップ・カバーは金属でできているため、
カバー上にうず電流が発生、高域がわずかに失われている。
またカバー自身の共振、カバーによる重量変化も
サウンドに影響を与えている。
このためカバーを外して使用する場合があるが、
シード効果、コイルの保護など、カバーがあった方が望ましい。レスポールのピックアップはバネでボディより浮いているが、 ブリッジからの振動でわずかに振動している。 このピックアップの振動と弦との振動との合成されたものが レスポール・サウンドとなるわけである。 左の表←は、レスポールにマウントされている ピックアップの電気的特性である。 このように、7200Hzにピックアップがあることと、 全体に高域が伸びていない事もレスポール・サウンドの特長である。 しかしハンバッキング・ピックアップは シングル・コイル・ピックアップに比べて出力が大きく レスポール特有のディストーション・ サウンドを生み出す源になっている。 弦は全て、テールピースを通してアースに落とされている。 もしアースに接続されていないと、 いわゆるアンテナになり外来ノイズをピックアップに 誘起してしまうわけで、このアースにより、 逆にピックアップ上がシールドされノイズをシャットアウトしている。 スイッチやボリューム、トーン・コントロールは金属カバーにより 外部からのノイズに対しシールドされている。 |
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