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●ギブソンRD・アーティスト


●RD・アーティストのコントロール系


●ギブソンRD・アーティスト
ギブソン社がロバート・ムーグと共同開発したギターで、 随所に新しい設計思想が見られる。
ボディはメイプル製ソリッド・タイプで、 ギブソン・ファイアーバード・リバース・モデルに 似たボディ・シェープを持っている。 スケール長は25・1/2インチで、 フェンダー・ストラトキャスターなどと同じ長さを持ち、 レスポールの24・3/4インチより長くなっている。
ネックはメイプル貼り合わせ、 フィンガーボードはエボニー製で22フレットを持ち、 セット・ネック式となっている。
ブリッジ、テールピースはほとんどレスポールと同じで、 チューン0マチック・ブリッジ、 ストップ・テールピースが採用されている。
ピックアップにはハンバッキング・タイプを2個、 コントロール・ノブには ギブソン・スピード・ノブを4個使用している。 トグル・スイッチはピックアップ切換用と、 エクスパンションーコンプレッション用の2個がついており、 ノブは白と黒に色分けされている。
コントロール系はアクティブ・タイプのイコライザー、 コンプレッサー、エクスパンダーなどを内蔵し、 内部のバッテリーにより駆動されている。
RDシリーズはこの"アーティスト"の他に、 イコライザーのみ内蔵した"カスタム"、 従来の回路と同じパッシブ・タイプの "スタンダード"の合計3機種あり、 ボディ、ネックの仕様にも若干の違いがある。



○RD・アーティストのコントロール
ボディのコントロール部の4個のノブは右上がネック側ピックアップ、 左上がブリッジ側のピックアップのボリューム・コントロール、 下側の2個はトーン・コントロールでトレブル、バスになっている、 右のトグル・スイッチがピックアップ・セレクター、 左はエクスパンダー、コンプレッサーとノーマル、 イコライザーinの3段切換スイッチとなっている。 ブリッジ側リード・ピックアップにはエクスパンダー、 ネック側フロント・ピックアップにはコンプレッサーが それぞれ同時にかかるようになっている。 またリード・イコライザー・ポジションでは上記のエクパンダー、 コンプレッサーは必ず、ノーマル・サウンドが働くようになっている。 トレブル、バス・コントロールは全体に働き、 それぞれのボリュームはピックアップ切換スイッチが センターの位置でも独立して働く。 (パッシブ・タイプでは片方のボリュームを 下げると他方も下がってしまう。) なおバッテリーは0006P(9V)1本で、 ジャックを差し込むとスイッチが入るようになっている。
上の図↑はRDのブロック・ダイヤグラムである。 まず、ハイ・インピーダンス、ハンバッキング・ピックアップからの 出力信号はFET一石で構成されたソース・フォロワー回路により、 ハイ・インピーダンスからロー・インピーダンスへと インピーダンス交換される。 フロント・ピックアップ側の信号はここで二方向に分かれ、 一つはノーマルな信号として、 もう一つはコンプレッサー回路へと接続されている。 コンプレッサー回路とは、レベルの高い信号は低く、 低い信号はレベルを高くする動作をするこてで、 見かけ上サスティン・タイムを長くするものである。 右の図。
この回路は増幅回路と電子アッテネータ、 信号レベルの大きさを直流電圧に変換する回路で構成されており、 入力信号レベルをただちに直流電圧にし、 この電圧で電子アッテネータをコントロールしている。 コンプレッションされた信号とソース・フォロワーからの ノーマルな信号はファンクション・スイッチへと接続される。




一方、リード・ピックアップ(ブリッジ側)からの信号は やはり一つはノーマルな信号として、 もう一つはエクスパンダー回路へと送られる。 このエクスパンダー回路は前述のコンプレッサー回路とは逆の動作をし、 大きいレベル信号はより大きく、 小さいレベル信号はより小さくする役目をもつ。 この動作のコントロール電圧はコンプレッサー回路の 検出回路のみのものを共用している。 つまり、フロント・ピックアップの 出力信号のエンベロープが決定される。 このエクスパンダー動作により、 見かけ以上のサスティンは短く感じられる。
以上の動作を図で表わすと←左の図のようになる。
さて以上の信号はファンクション・スイッチにより、 ノーマル信号かコンプレッション、 エクスパンション信号に切換えられ、 それぞれのボリューム・コントロールに入り、 セレクター・スイッチによりピックアップ切換が行われる。 次に信号はイコライザー回路に入る。 この回路は上記ファンクション・スイッチがノーマル、 エクスパンション、コンプレッション時にわずかに 高域がリード・イコライザーに入れると 2kHz付近にピークができるような特性を示す。 (右の図→)
つまり、ハンバッキング・タイプ・ピックアップの 高次倍音の不足を補っているわけである。 イコライザー回路からの信号はトーン・コントロール回路に入る。 この回路はオーディオに使用されているBAX型で、 600Hz付近を中心にして左の図←のような特殊性を示す。



以上のようにして音楽としての電気信号に変換された信号は、 電源スイッチ付のアウトプット・ジャックから アンプへと送られるわけである。 RDの回路全体は、やや高めのインピーダンスで設計され、 FETなどを使用する事で消費電流を低く抑えている。
このようにRDシリーズ"アーティスト"は周波数特性のみならず、 立ち上がり、減衰のエンペロープ、 つまり時間特性をも制御するという新しい思想とともに 設計されているといえる。


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