懐かしのキーボード達
《シンセサイザー以前/メロトロン(Mellotron)》

1950年代の後半に登場した世界初といえるサンプリング・キ ーボード”チェンバリン(Chemberlin)”の技術を引き継ぎ、1960年代にイギリスで製造 されたのがメロトロンです。テープレコーダの原理を応用したその楽器は、言葉で説明 すると簡単ですが、その発想は大胆かつユニークで、実際に製造するとなると、メカ部 分には相当の技術とアイディアが必要とされます。その方式は、鍵盤ひとつひとつに対応した 音程の音を録音し、それをまた再生するというものです。従って、テープも再生用のヘッドも 鍵盤の数だけ必要なわけです。テープの長さには限りがありますので、8秒以上の再生は 不可能でした。再生が終わったテープは、またすぐに頭まで戻す必要があるわけですが、 その辺の機能も実にユニークで、詳しくは画像をご覧下さい。音色は当然予め録音され た音以外は出ないわけですが、一本のテープに3種類(だったと思います)の音が録音されており、パ ネルのレバーを操作して再生ヘッドを微妙にずらすことにより、ワンタッチで音色を変 える事が出来るという点は優れた発想でした。現在で言う音色メモリーを可能にしていたわけです。 またオプションで他の楽器の音が録音されたテープが発売されており、 テープを取り替える(実際の作業は大変)ことにより、音色変更も可能でした。 有名なプログレッシブ・バンドであるキング・クリムゾン(King Crimson)のファースト・アル バムで聴くことの出来るストリングス系の音は、殆どメロトロンを使用しているとの事 です。その後、技術の進歩により、テープ部分(だけではない)がICチップに変わり、 イミュレータなどのサンプリング・キーボードの登場へと繋がり、今日のサンプリング 音源楽器の祖になったと云えます。
Mellotron 日本では最も一般的な形のModel 400
しかし多くのレコードで聴かれるメロトロン・サウンドはこの機種ではなく、 Mellotron Mark II のものだそうだ。(知らなかった!)
Mellotron で、こちらがそのMellotron Mark II
中央を境にスプリットされている。各々35鍵。
Mellotron Chamberlin M-1
こちらが元祖サンプリング・キーボードのチェンバリン
Mellotron メロトロンの改良型のBirotron
8トラックテープを利用してエンドレス再生型にしたものらしい。 実際に発売されたのか???
Mellotron メロトロンのユニークなメカニック部分
鍵盤を押すと、その下にある回転バーの間にテープが挟まりテープが走行する。 と同時に、鍵盤下のパッドがテープを再生ヘッドに押しつけ、音の再生が始まる。 鍵盤を離すと、スプリングの働きによって瞬時に元の位置までテープを戻す仕組みである。 鍵盤を押す力によって、テープのヘッドへの密着度が変わり、微妙に音量などが変化したらしい。 製作者が意図としていたかどうかは分からないが、 今にちで云うところのアフター・タッチ機能が備わっていたとも云える。スゴイ事だ!
Mellotron ホワイトカラーのそのボディは、 アイスクリームを売っていた冷蔵庫に似ていたので、 本当に「冷蔵庫」と呼ばれたりしていた。 そう言えば知り合いのミュージシャンは雪印マークのシールを貼ってたなー...
Mellotron こんなスケルトンのメロトロンもあったのですね。 デモ用か、特注で作ったものだろうか...

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