Dr.藤野  ドクター藤野のリペアー講座

金属パーツのメンテナンスについて
●金属パーツのメンテナンスについて

今回はギターの金属パーツの手入れについてお話ししましょう。アコースティック・ ギターの場合は一般的に金属パーツと言えばペグくらいですが、エレキ・ギターや エレキ・ベースの場合は、ブリッジ、テールピースはもちろん、ネック・ジョイント 部(ボルト・オン・タイプの場合)、さらにピックガードの止めネジなど各所に金属 部品が使われています。これら金属部分もボディ、ネック、指板などの木部同様、 定期的に手入れをしていくことが大切です。錆び、腐食などからパーツを守り、 長持ちさせることができましょう。 極端に凝った掃除は不必要ですが、定期的な拭き掃除を欠かさないようにしましょ う。楽器の金属パーツ用の専用クリーナーも販売されています。それらを利用され ると良いでしょう。ちなみに金属パーツはたいていの場合メッキが施されていま す。メッキの特徴を理解しておく必要もあります。普及品に多く使われているクロー ム・メッキの場合、さほど神経質になる必要はないでしょうが、ビンテージ・リイ シュー・モデルなどに見られるニッケル・メッキや、高級仕様のモデルに使用される ゴールド・メッキの場合、多少気遣いが必要です。まずニッケル・メッキの場合、 経年による表面の曇りを避けることはできません。逆に言えば、ビンテージ・テイ ストを求める楽器に、ニッケル・メッキのパーツをあえて使用していると言えます。 注意点は、とにかく汚れを放置しないことです。指紋の痕がメッキ表面に残ってし まうような例を見かけますが、これは汗の塩分でメッキが腐食してしまったためで す。またゴールド・メッキも経年によって輝きが鈍くなることは避けられません。 しかし手入れを怠らなければ、それを渋い輝きとして維持することは可能です。や はり汗や汚れを落としてあげることが大切です。ちなみにゴールド・メッキは強く 磨きするのも禁物です。色が落ちてしまって、ニッケルのような輝きになってしま うことがあるからです。 またブリッジ、テールピース、ピックガード、ネック・ジョイントなどに使われてい るネジにも注意しましょう。まずブリッジ廻りなど、直接手が触れがちな部分は、汗 によって気が付かないうちに駒の上下ネジやオクターブ微調整ネジが錆びて、ドライ バーやレンチを受け付けなくなったり、物理的に固まってしまうことがあります。 演奏後は汗を良く拭き取るように心がけ、定期的に毛先が長く柔らかい歯ブラシなど で埃を除去するようにしましょう。また、たまにはネジを廻し、錆付きによって動か なくなってしまうことを防ぎましょう。その際に、ネジをどれだけ回転させたか覚え ておく必要があります。弦高やオクターブ・ピッチが当初の状態から変わってしまわ ないようにするためです。 ピックガード、ピックアップ、ブリッジなどをボディに止めている木ネジや、ネック ・ジョイントの木ネジは盲点かも知れません。表面上は錆びていないように見えて も、ボディに埋まっている部分が、木部に含まれていた水分によって錆びて風化して しまうことがあるからです。いざ、ネジを動かそうとしたら、ネジが途中で折れてし まいボディに先端が埋まったままになってしまうこともあるのです。これらのネジも 定期的にチェックしておくと安心です。この場合も、位置関係が元に戻せなくならな いように、最初の状況を良く覚えておきましょう。自信がない場合は専門家に依頼し た方が良いかもしれません。またドライバーは、ネジのサイズに合ったものを必ず使 ってください。違うサイズを無理に使うとネジ山をつぶしてしまうことがあります。 一般的にギターに使われているネジは、ネック・ジョイント・ネジのような大きなネ ジなら2番、ピックガード止めメジのような小さなネジなら1番のドライバーが合うは ずです。1番、2番のサイズを用意しておくと便利です。

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