Dr.藤野  ドクター藤野のリペアー講座

ハカランダ材について
●ギターの材料の話/その1「ハカランダについて」

ギター・プレイヤーであればギターの使用材も気になるところです。 音はもちろん、耐久性や見栄えにも大きく関係してきます。 古くからその名が知られるハカランダ(=ブラジリアン・ローズウッドorリオor Bahia Rosewood ) 材は、ビンテージ・ギターの世界ではもちろんの事、 近年では高級ギターの材料としても使われています。

<ボディ材として>
ハカランダ(Jacaranda=英語読みはジャカランダ)は、エレクトリック・ギターにおいては フェンダーのオール・ローズウッド・テレキャスター、ギブソンのセミ・アコースティック・ギター などに用いられたものが知られています。 アコースティック・ギターにおいてはサイド、バック,材に使われています。 マーチン以外のメーカーの殆どにおいて1965年か1966年で使用されなくなっています。 例外はもちろんかなりの数が有るのですが、標準仕様としてはマーチン社の1969年までと 言われているのが一般的に有名です。 (ちなみにハカランダ製のテレキャスターは1968年製だそうです)。 なぜ使用されなくなったのかと言うと、ブラジル政府が資源保護(経済的な理由だったと言う説も 聞いたことがあります)のために丸太の状態での輸出を禁止したため結果的に材料コストが 高くなってしまい大量生産に使えなくなったようです。 マーチン社では丸太の状態での貯木量が豊富だったらしく、 約5年あまり標準仕様としてハカランダ材を使用できたようです。 文字で音を表現するのは、なかなかできることでは無いと思います。 しかしながら、一般に言われる「立ち上がりの早い」「はぎれのよい。」 「抜けの良い乾いた音」「パワーがある」といった表現は、皆それぞれ的を射ていると思います。 伝説が生まれただけのことは有る木材とだけは、申し上げられます。 機会があれば是非確かめてみてください。
Jacaranda  Jacaranda  Jacaranda
典型的なハカランダ材。

<フレットボード材として>
ハカランダはボディ同様にフレットボードにも非常によく使用されてきた材料です。 エボニー(黒檀)がデラックス・タイプとすればハカランダはスタンダードな用材であったらしく、 ごく一般的に使用されていた材料のようです。 指板材料も音の要素の大きな部分ですがハカランダ指板 にはやはり特徴があり特ストラトスタイルのギターや ベースでは話題になる事が多いようです。これも御自身で 確かめられると良いと思います。



<ハカランダ話 余談>
まず60年代の輸出規制とハカランダが使われなくなった(でもゼロだった訳ではない。)事の 真実については正直分かりません。と言う事をさきに申し上げておきます。 (その件に付いてご質問を頂いたわけでは有りませんが...)

1994年にロンドン郊外の楽器材料業者を訪ねる機会が有りました。 経緯はさておき、其処にはハカランダの丸太材があり、 製材後のコグチの輪切りを手に入れる事ができました(下画像参照)。 我が家の物置に仕舞い込んで10年、その事を思い出し写真を撮ってみました。 直径50センチ、厚さ7センチ程のコグチからは、「Made in Brazil」と言う文字や、 母国語であるポルトガル語表記の「BRASIL」という文字が読みとれます。 木目側は濃い茶色で、90度ずれた角度からは、ハカランダの木目の特徴である、 あのヒゲと呼ばれる黒い木目を見る事が出来ます(度を越した病気の世界の写真で済みません)。 ひとつだけお伝えしておきたいい事があります。 それは「匂い」についてです。 生のハカランダ材にはかなり強烈な芳香性があります。 作られてから長い時間を経ているハカランダ材ギターでも感じるあの匂いです。 そう言えば、俗称インデイアンローズにも強烈な匂いがありますけど、 木って本当に良いですね。

Jacaranda Jacaranda
Jacaranda Jacaranda
ブラジル産ハカランダ材の輪切り。ブラジル・カラーとブラジルの外周が印刷されている。
因みにハカランダはスペイン語読み。英語圏、ブラジルではジャカランダと発音する。

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