ジャズセレクトマウスピースのそこんトコどーなの?

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リガチャー編

とある大学のとあるジャズ研究会。
春先に見られる、あるある風景。
ジャズ研一年生・アルト吹きのコバヤシ君はセンパイにサックスの相談を持ちかけました・・・

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「センパイ!ジャズ研に入ってもう一ヶ月ですが、なんか周りの人みたいに音量が出なくて・・・それにジャズっぽい音もでないし」

「なんだお前、マウスピース何使ってんだ?」

「セルマーです。高校の先生にオススメされた、エスハチジューのシーワンスターってやつです」

「あ~~~ダメダメ!そんなブラバンで使うようなマッピじゃズージャーはできないよ!ツェー年だからってジャズ研に入ってワンスターなんかじゃ通用しないよ!」

「え~、今まで吹奏楽部でサックス吹いてましたからしょうがないじゃないですか~!じゃあ何を買えばそのズージャーっぽい音がでるんでしょうか?」

Daddario Woodwinds ALTOSAX MP SELECT JAZZ ダダリオ ウッドウィンズ RICO RESERVE セレクトジャズ アルトサックス マウスピース

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「そ~だな~最近のオススメはダダリオかな。」

「はぁ~、ダダダリオですか?」

「ダ・ダ・リ・オ! 最近発売されたダダリオのジャズセレクト・マウスピースだよ。まぁ、チャミズの店に行けば置いてあるかもしれないなあ」

「チャミズ?御茶ノ水のことですね!じゃあ御茶ノ水の楽器屋に行って早速買ってきます!」

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「センパイ買ってきました!」

「早いじゃないか。ほら、早速吹いてごらんよ」

「そりゃあもう楽しみで楽しみで試奏もしないで買ってきたんですよ♪さあ、箱を開けて・・・って、うぁああぁぁぁあああぁぁあ!!!」

「なんだなんだ、うるさい奴だな・・・」

「リ、リリリリガチャーが入ってません!」

「そりゃ当然。ダダリオはリガチャーもキャップも付いていないからね。店員さんにちゃんと聞かなかったの?」

「そんな~・・・がっくり。」

「このツェー年はロイトーだなあ」

「えっ?何か言いました?」

「いやいや別に何でもないさ(汗 それよりセルマーのリガチャーは使えないの?」

「う~ん・・・使えないことはないですけど、ネジがギリギリです」

「それならいっその事リガチャーも買ってきたら?」

「そうします!センパイ!リガチャーは何がオススメですか!?」

「う~~~ん、リガチャーね・・・何がいいだろう?」

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さてさてジャズ・アルトのマウスピースと言えば、昔からメイヤーが常識!! 10年前ならセンパイは当然メイヤーと断言し、コバヤシ君も楽器屋で「メイヤーのゴーエムエム下さい!」といっていたでしょう。

渡辺貞夫・キャノンボールアダレイ・クローバーワシントンJr・フィルウッズなど後世に残る名盤を残したスーパースター達が愛用したマウスピースでしたが、ニューヨーク期のハンドメイド工法から大量生産に移行し、現在ではそのサウンド・クオリティは変化してしまいました。ましてや「アタリ」のメイヤーを探そうとなると一苦労!ツチノコを見つけるより難しいかもしれません!(おおげさ)

時代は流れ2014年9月に発売されたダダリオ・ウッドウインズのジャズセレクトマウスピースがメイヤーに取って代わるマウスピースとして話題!巷の噂では「あれ・・・今買うならダダリオじゃね?」なんて声もチラホラ・・・

ダダリオは「完全機械工作」を謳い、高い精度から得られるコントロール性の高さと倍音豊かなダークサウンドが話題を呼び、アマチュアはもちろんプロプレイヤーにも使用者が徐々に増えてきております。しかも他のハンドメイド系マウスピースに比べ半額以下のお値段!

実際に店頭でのお問い合わせ・購入される方も増えてきておりますが、実はこのマウスピース・・・ リガチャーがついてないんです!!!

リガチャーなけりゃ吹けないじゃん!!

どのリガチャーがいいんだYO!!

ってなことでダダリオのマウスピースが良いのは他のサイトや雑誌でも取り上げられ周知の事実。そこで御茶ノ水ウインドパルの管楽器担当ミスミが実際に、触って・はめて・吹いてみて、ジャズセレクトマウスピースに合うリガチャーを独断と偏見にまみれたレビューしちゃいます!

リガチャーって何?という方は以下のリンクをぜひご覧下さい。
→リガチャーについて

今回の試奏セッティングは特殊な楽器やヴィンテージ品ではなく、どこでも手に入る身近なセッティングで行いました。

サックス YAMAHA YAS-480
マウスピース D'Addario Jazz Select D5M
リード  D'Addario(旧RICO) Jazz Select 3SUF

さてさて新人アルト吹きのコバヤシ君は理想のリガチャーに出会えるのでしょうか・・・

HARRISON ハリソン A3GP

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ダダリオにはA3が使用可能。仕上げはゴールドプレート。オリジナルハリソンハーツの生産が終了し、復刻版として流通しているハリソン。リードへの接地面積が少ないH字でリードをしっかりと留めており、明るく華やかなサウンドが得られる。 遠鳴りするのでクラシックプレーヤーに好まれるハリソンだが、ダダリオのサウンドをもう少し明るくしたいな、と考えるプレイヤーにオススメ。ボリュームもでるため多人数のホーンセクションでの演奏時に音抜けが欲しい場合、良いのではないだろうか。リードはかなり自由に振動する為、コントロールにも注意が必要。しっかり息を入れると、そば鳴り感はあまりなく、よく響いているのが分かる。「良く鳴る」というよりは「良く響く」という印象。サウンドへの追求の為かなり華奢な造りとなっているので取り扱いには注意が必要。決してリガチャーを握ってチューニングをしてはいけない。H字の付け根が切れてしまったりネジが折れてしまうことはよくあることである。この華奢さがリードとMPに余計な負担をかけず繊細なサウンドに一役買っているといえる。

商品ページ

ROVNER ロブナー 1RL

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ロブナーには様々なタイプのリガチャーが存在するが、今回は最もポピュラーはダークタイプの1RLをレビュー。リードを「面」でペタっと押さえる為音色も柔らかく、高域をかなり絞ったようなダークなサウンドになり抵抗感は強め、音はまとまりコンパクトなサウンドになる。音がまとまると言うことは、アンサンブルも取りやすい。ダダリオの持つダークな個性を見事に引き出してくれる。バリバリ鳴るタイプではないがアコースティックなバンドでバラードを吹くときなどは最高であろう。ハリソンのようなホールでも響き渡るサウンドとは正反対に位置するリガチャーであるといえる。しかし、しっかり息を入れても気持ちよく鳴るリガチャーではないので好みが大きく分かれやすい。ちなみに、安くても良いリガチャーといわれたらこのロブナーであろう。多少のことでは壊れないし、汎用性も高い。

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ウッドストーン GP

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ダダリオにはメイヤー用が適合。今回はゴールドプレートのものをレビュー。 大久保の石森管楽器が製作しているオリジナルリガチャー。プロプレーヤーにも使用者が多く口コミで広がったせいかアマチュアユーザーにも人気が非常に高い。工作精度が非常に高くリードとMPをタイトに包み込みカッチリとしたサウンドを生み出す。素材に様々な素材を使い(このモデルはブラス製)豊かなヴォリュームと柔らかく伸びの良いサウンドが特徴。仕上げも数種類ありコパー、GP、サテンGP、ソリッドブラス、ソリッドシルバーなどがあり音色も吹奏感もまちまちである。初めて吹いたときはリードの反応もよく「お、これは!」と思うものもあるがpp吹奏時の反応はイマイチである。豪快なサウンドを得意としているが繊細さは不得意。ダイナミクスもff方向にはよく伸びるがpp方向にはあまり伸びない。抵抗感も意外に強く疲れてくるとしんどく感じるであろう。

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Vandoren OPTIMUM バンドレン オプティマム

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リードのブランドで有名なバンドレンだがMPやリガチャーも造りが良く好評。3種類のプレッシャープレートを使い分けることにより様々な音色を作り出す。プレートが独立している為リードを純粋に下からの力で押さえることが可能となっている。リードに対しタテで押さえるものは良く響き遠鳴りがよい。音抜けが欲しいときや広いホールで吹くときなどに力を発揮する。ヨコで押さえるものはややコンパクトな吹奏感となりダイナミクス、音色に幅が付けやすい。点で押さえるタイプのものはリードがとても自由に振動し、よく鳴る。遠鳴り感はあまり感じられないがそば鳴りの音はバツグンでジャズやマイクをつけての演奏に向いているだろう。どのタイプもダダリオのダークな部分をよく引き出し重厚なサウンドにしてくれる。リガチャー自体の質量が大きいことも関係があり金メッキ仕上げもヴォリュームの向上に一役買っている。しかしながらリガチャー自体の質量による重さがある程度の足かせとなり軽快さや息の入りのよさは若干失われているように感じる。

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FRANCOISU LOUIS ULTIMATE フランソワルイ アルティメット

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ベルギー製のリガチャー。はしごを丸めたような個性的な形状をしている。造りは接地面積が少なく極力リガチャーとMPに負荷をかけずにリードとMPの個性を良く引き出すようになっている。渡辺貞夫、ジョシュアレッドマンなどが使用し、ジャズプレーヤーの間では一時話題となった。ジャズで良く使われるMPとの相性はバツグンで反応が良くヴォリュームの幅も大きい。サブトーンを吹いたときの感触は秀逸でまさにジャジーなサウンド。リードが良く振動するためリードの個性が出やすくサウンドに個性が付けやすい。ジャンルを問わず様々な環境で力を発揮してくれるリガチャーである。しかし、押さえる力が弱い為リードが暴れやすくコントロールには神経を使うことになるかもしれない。チューニングをするとリードがズレやすく面倒なのがたまにキズ。リードを押さえるプレートが3種類付属(薄い金属プレート、厚い金属プレート、ゴム板の貼られたもの)しており交換可能。ただし交換はドライバーを使わなければならないので面倒。気に入ったプレートが見つかれば、他の二つはお蔵入り確定。特殊な形状のため、普通のキャップが使えない。

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さてさて、ここまで五つのリガチャーをご紹介しましたが新人アルト吹きのコバヤシ君は理想のリガチャーに出会えたのでしょうか?チョットお話を聞いてみましょう!

「おいコバヤシ!いいリガチャーは見つかったのかよ?」

「あっ!センパイ、楽器屋で色々なリガチャーの説明を聞いて実際に吹いてもみたんですけど・・・」

「・・・けど?」

「どれも個性があって一個に絞れない・・・っていうか吹けば吹くほど悩んじゃって」

「あ~あるある!俺もそうだけど試奏室からなかなか出てこない人多いよね~」

「やっぱり!でも、リガチャー選びのコツってあるんですかね?」

「そうだな~、ズバリ一言で言うなら【どんな音を出したいか】だね。今のセッティングから、音を明るくしたいのか・暗くしたいのか。息がたくさん入るようにしたいのか・抵抗感を持たせたいのか。音量が出るようにしたいのか・コンパクトなサウンドにしたいのか。しっかりとイメージを持つことが大事なんだよ」

「セ・・・センパイ!!」

「ん?」

「初めていいこといいましたね!」

「オイオイ・・・」

「もっと色んな音楽を聴いて、色んなリガチャーを試して、自分のサウンドを見つけたいと思います!アドバイスありがとうございました!」

・・・・・

さあ、まだまだコバヤシ君の理想のリガチャーは見つからないようです。どのリガチャーも個性的ですが、運命の赤い糸で結ばれたリガチャーに出会えるのはいつでしょうか、もしかして巡り巡って今回ご紹介したリガチャーの中にあるかもしれませんね!

続く

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登場人物プロフィール

コバヤシ君

この春とある大学に入学したジャズ研究会の期待の新人アルトサックス吹き。中学~高校はずっと軍隊のような吹奏楽部でサックスを吹いていた、所謂「ブラバン上がり」まじめで素直な性格で人当たりは良いが、まだまだ世間を知らない一年生。

センパイ

就活真っ最中のこの時期になぜか部室にたむろし、ズージャー語を巧みに操る怪しげな4年生。音楽関連の知識は豊富で面倒見はよく、後輩からの信頼も厚い。セッションはもちろん合コンへの参加も積極的。