Vintage Sax / セルマーの秘密: セルマーの歴史・特徴など

こちらの記事は以前あったヴィンテージサックス特集ページの再掲載です

2014-12-09

ヘンリーセルマー(フランス製)

現在でも圧倒的な支持を得る、最高峰のサックスです。
1922年からサックスはスタートし、ジャズでは最も使用頻度の高い、マーク6を生みだし、現在も新しいモデルを開発、製造しています。
別に記載した、アメセル(アメリカンセルマー)も部品はこのフランスセルマーのものを使用しています。

製造されたモデルは・・・

MODEL 22(モデル22)は1922年から1925年位の間でシリアル番号4450位まで。

MODEL 26(モデル26)は1926年から1929年位の間でシリアル番号4450から11950位まで。

CIGAR CUTTER(シガーカッター)は1930年から1933年位の間でシリアル番号11950から18700位までで、メーカーの付けた正式名称は別にあったようですが、オクターブメカニズムに、紙巻きタバコを切るカッターの穴とそっくりな形状があるため、この名称が付けられました。アメリカに行っても、この名称で通じます。

RADIO IMPROVED(レディオインプルーヴド)は1934年から1935年位の間でシリアル番号18700から21750位まで。ここまでのモデルはあまり画期的な機能はなく、同年代のCONN(コーン)などとキーの配置などは殆ど類似していて、サックスの中では旧世代の部類に入ります。現代の音楽には音量や旧式なメカニズムの為、やや演奏には厳しいものがありますが、甘く、ナチュラルなサウンドは実に素晴らしいものがあります。

BALANCED ACTION(バランスアクション)は1936年から1947年位の間でシリアル番号21750から35800位まで。このモデルからテーブルキーが現代のモデルの原型となった方式を採用し、操作性が格段に良くなりましたが、まだ主管のキー配列はインラインのままです。現代の音楽にも実用として充分使える、メカニズム、サウンドを持っています。

SUPER BALANCED ACTION(スーパーバランスアクション)は1947年から1953年位の間でシリアル番号35800から55200位まで。主管のキー配列もオフセットになり、左右の手が自然な構えでフィンガリングが可能になり、操作性が向上しました。アメリカでもこのモデル辺りからアメセルとしてジャズマーケット用にリアッセンブルされた楽器がプロの間で評価が高まります。

MARK6(マーク6)は1954年から1973年位までの間でシリアル番号55200から230000位まで。連動式テーブルキーの採用や反応、操作性の良いオクターブメカニズム、更に楽なフィンガリングを可能にする主管キーのオフセット角度の変更など、現在のサックスの模範ともなるサックスが誕生し、サックスマーケットでの地位を確立した楽器です。
マーク6にはフランス製とアメリカでリアッセンブルされたアメセルがあり、フランス製はクラシックマーケットを意識した作りで、アメセルはジャズマーケットを意識した作りとなっています。(フランス製でもフィルウッズなど著名なプレイヤーがジャズミュージックで使用しています)
フランス製には彫刻付きのモデルと無しのモデルがあり、High F#キー付き、無しのモデルがありました。比率としてはHigh F#キー付きのモデルが多いようです。
アメセルは逆にHigh F#キー付きは非常に数が少なく、殆どのモデルはHigh F#キー無しのモデルです。
フランス製とアメセルのサウンドの違いは塗装の仕方、塗料の質にあるようです。
どちらもラッカー系の塗料ですが、フランス製は殆どが焼き付け塗装を行っており、かなり塗膜も厚めで、腐食には強い反面、やや硬めの鳴りと、音が抜けるまでに時間がかかります。アメセルは自然乾燥で塗膜も薄く、その分、腐食や剥げやすい欠点はありますが、管体の振動を損なわないので、音抜けが良く、鳴りが良くなっています。
パッドのリゾネーター(タンポの中心に取り付けた反射板)は初期のモデルにはメタル製のものが付いているものもありました。多くのモデルはナイロン製です。

MARK7(マーク7)は1974年から1980年位の間でシリアル番号220000から320000位まで。音楽もエレクトリック化が進み、音量も上がってきた中でよりパワーの出るモデルとして、開発されたようです。ロック、フュージョンでの人気は根強いものがあります。アメセルとしてのモデルはこのマーク7のモデルをもって終了しました。

1980年に登場した、スーパーアクション80からは、手作りで組み立てるのは変わらないものの、機械精度、工作精度の向上などにより、音程の精度、均一な鳴り、バランスといったものは、改善が加えられ、モデルチェンジを重ねていますが、量産しやすい設計など、1970年代の楽器に比べると、現代風の明るい鳴りで、日本的に言うと、わび、さび、といったものが失われているようです。

50年、60年代に録音されたジャズアルバムの、あのサックスの音が出したい、となってくると、現在のサックスでは表現出来ないものがあり、相変わらずビンテージサックスは根強い人気を持っています。

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