楽器屋さんに聞けシリーズ ?伝説の名器スピードキングってどうなの??

LUDWIGの名器、スピードキングを分析してみました

2018-04-10 こんにちは、渋谷WESTの松岡です。


今回のネタは
LUDWIG L-201 SPEEDKINGペダルについて!



数々の超人ドラマーたちが愛用していたことでも有名。
2014年廃盤になり、その長い歴史の幕を下ろしてしまいましたが、
動きもスムーズでパワフルなハイテクペダルが主流の今、
今もなお愛用者も多いこのペダルの秘密を探ってみました。


■とにかくフォルムがカッコいい!



私も若かりしころ、
ルックスにあこがれて衝動買いした思い出があります。
しかし当時の演奏技術では使いこなすことが出来ず、
すぐに手放してしまったという苦い思い出も(笑)

しかしながら、このスマートなフォルムは
ドラマーなら絶対憧れるはずのグッドデザインだと思います!



■デビューは1937年と言われる80年前の設計

そもそもこのSPEEDKING、
WFL社設立のファーストプロダクトであったという話もあり、
設計はなんと戦前のモノ。

それが21世紀まで生産され続けていたのは驚きです。

ちなみにWFL時代デビュー時のSPEEDKINGは
プレートデザインは全く違っていましたが、
基本的な動作の仕組みはほぼ一緒とみられます。


※この初代の現物は私は見たことがありません、
お持ちの方いれば是非ご一報ください!


1950年ごろに下記のような形状に変化し、
廃盤になるまでこのデザインが採用されていました



このWFL時代のプレートデザインは
1960年代中頃くらいまで採用されていたようです。



また60年代後期ごろから、裏面の補強が施され、
リブが2本から4本に強化されたようです。



その後、フープを噛ませる部分のフィン形状がロングタイプに変更。
噛みしろが深くなっており、当時のLUDWIGドラムのフープの長さに合わせられたようです。

※後述しますが、この噛みしろの深さゆえのトラブルもあります。

また、コネクティングリンクの長さと厚みも、
1980年ごろに変更になっているようです。


金属の厚みが薄く、長さも長い。


1980年ごろより金属が分厚くなり、短くなりました。
※実はもう少し細かい分類があるようですが、、、
データ不足ゆえ大まかに2タイプで分類しております。




その後、1990年代半ばにフレーム、
ボードの一部にブラックの塗装が施され、最終形態に。
2014年まで生産されることとなります。

細かい仕様変更こそあるものの、
基本構造・デザインはは約60年変更無し!



ドラム業界における伝説的なペダルであったのは確かです。


■ペダルとしての特徴

さて、このSPEEDKING、
ペダルとしてどんな特徴があるのでしょうか?

構造面から分析してみましょう!


・ダイレクトドライブの元祖



今のペダルの構造で例えると、所謂ダイレクトドライブに近い構造。
しかし、センターのシャフトからビーターホルダーにかけて一体になっており、

※このパーツは正確にはロッカーシャフトというようです。
その部分を直接コネクティングリンクでプルするという、
かなり独特なカム形状で有ることがわかります。

スピーディかつダイレクトなアクションは
この形状ならではのものでしょう!


・押しバネ式のツインスプリング

一見、バネはどこじゃ?となるルックスですが、、、
実は2本のポストの中にちゃんと仕込まれています!

ペダルを裏返すと、、、

スプリング調整のネジがあり、
マイナスドライバーで調整可能です。

このネジを外してみると、、、


こんな感じでロッドとスプリングが挿入されています。



※このパーツはグリスだらけなのでご注意!


このロッドがバネを「押す」ことにより、
反発力を生みスムーズな返りを実現しています。



このように楕円上になったセンターのシャフトの末端が
ロッドを押し下げバネを縮める事により反発します。

実は、この押し下げている幅はせいぜい5mm程度、
なのでこのバネは非常に反発力が強めなうえ、
左右2本になっているのでしょう。

バネを「引く」ではなく「押す」構造、
それによる反発の感覚の違いが、
独特な踏み心地に影響していると考えます。


・ビーターがど真ん中に来る構造

このスピードキングの特徴として忘れてはいけないのが、、、



ペダルの中心線にビーターが来る構造。

これによりナチュラルでファットな音色が
引き出されるのではない でしょうか??

これらの構造は唯一無二
原始的と言えば原始的ですが、
独特のアクションと音色はこの構造に秘密がありそうです。


■踏み心地は実に独特

このスピードキング、
現代のペダルに比べると「クセ」を非常に感じると思います。

特に今のペダルに慣れているとノイズは多く、
調整もバネの強さのみと、シンプルすぎる故、
戸惑うプレイヤーも多いでしょう。

しかし、このペダルの特徴として、
「ビーターをヘッドに押し付ける奏法にはあまり向かない」事を
頭に入れておくと良いかもしれません。

どちらかというと、
パワーよりスピードで踏むと良い感じ、
名前通りスピードキングってとことでしょうか??

音量を出したいときは、とにかく瞬発力で踏むこと、
パンチを打ってすぐ戻す!そんな感じを意識すると、
意外なほどに音量も稼げます。

また、前後にスライドする奏法はあまり得意では無いようで、
ダブルを踏むときは足首を上手く使って力まず踏むことが肝心です。

スイベル系の動きとの相性は良いように感じます。

どのペダルでも共通ではありますが、
使いこなすにはある程度熟練が必要なペダルでは有るでしょう。

特に音色の良さは他のペダルでは味わえないと感じます。
使い方をマスター出来れば、
絶対に武器になるペダルであることは間違いないです。


■スピードキングマメ知識

私も所有していたスピードキング、
良くあるトラブルの例をいくつかあげてみました。


・コネクティングリンクがヘッドに当たる



一番頻発するトラブルです。
原因は70年代以降の噛みしろの深いロングフィンによるもの。
当時のLUDWIGのフープであれば問題ないんですが、
ほとんどのドラムはフープの幅が狭いのです。

昔は調整パーツが市販されたいたようですが現在は有りません。

そんな時


強引な方法ですが「割りばし」を噛ませます。
とにかくスペースを作ればOK、DIYするほかありません。
急ぎの場合、こんな方法でも十分対処できます。



・ビーターが良く抜ける

勿論これはペダル側に問題がある場合もありますが、
実は「ヘッドに押し付ける奏法」をしていると良く起こりがち。
スピードキングはやはり「オープン奏法」が合っているよう。
音色面でも「いい音」が得られますし、
技術的にも向上できるチャンスだと思います。
脱力してリラックスして打てることが肝心です。


・ノイズがうるさい

かかとの部分のパーツがカチャカチャいいます。
これは仕様です(笑)
これも含めてスピードキングなんです。


いかがでしたか??

こんな感じで解説してきましたが、
このスピードキング、現在当店に10台もあり(2018年4月10日現在)
色々調整しているうちに、
改めて魅力に取りつかれてしまい記事にしてみました。

ジョン・ボーナム好きの私としては避けては通れない道
何故このペダルであんなフレーズをあんな音で踏めるのか??
なんて思っていましたが、
テクニック次第でどうにでもなると気づき、
またスピードキング買って練習しようかな?
なんて思いながら長々とブログを書いてしまいました(笑)

皆さんもこの機会に
SPEED KINGの世界にどっぷりハマってみてはいかがでしょう??

ではまた!


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■この記事を書いた人

松岡 武 Takeshi Matsuoka

中学生の頃突然ドラムに目覚め、そのままのテンションで音楽の専門学校に入学。卒業後よりお茶の水イシバシに勤務し13年、2016年6月より渋谷WEST勤務。20代のころはジョン・ボーナムにあこがれすぎて24インチのライドをバカバカ打ち鳴らしてました。豊富な現場経験を生かしたその人に合った楽器のチョイス、チューニングやメンテナンスポリシーで、様々なタイプのドラマーをサポート致します!


MATSUOKA