Ishibashi Mail Magazine Vol.14

GIBSON ES-335TD
小沼ようすけ 音楽コラム「ソロギター・トーク」配信記念編
GIBSON ES-335TD

1958年、ギブソン社によって今までにない新しい構造を持つギターが開発
された。それがセミアコースティックギターである。モデル名に使用される
"ES"とは[エレクトリック スパニッシュ]の略で"ES"の歴史は1940年代まで
遡ることとなる。40年代にはES-300、ES-350等のフルアコと呼ばれるエレク
トリックスパニッシュ、つまりエレアコが製作されていた。
50年代中期には、これらのフルアコのモデル名末尾に”T”が追加され、
より薄いボディー形状をもつ”シンボディー”がライナップに加わる。
これが、シンラインシリーズの始まりである。

1955年に登場(NAMMで発表)したES-225Tを皮切りに、シンラインシリーズの
原型が固定化されてくる。意図的にトップの振動をコントロールするための
ラミネート構造を持ったメイプルプライウッドの使用や、当時のレスポールに
使用されているメタルのブリッジなどが使用され始める。このES-225Tはアーチ
トップとソリッドギターの特徴を持ち合わせたトーンであったが、この進化系が
セミアコの誕生へと繋がっていく。

1958年にES-335TDは発表され(プロトタイプの57製も存在する)、57年に開発
されたハムバッキングピックアップ(通称パフ)、プレイを重視したダブル
カッタウェイ構造、そして注目すべきはボディー内にセンターブロックが
採用されたことである。発売と共に発票されたカラーはサンバーストと
ナチュラルで、現在最も目にするチェリーは60年まで製作されていない
(プロトタイプ、カスタムメイドは存在してもおかしくないが、、、)。
センターブロックには、ソリッドのメイプル材が使用されソリッドギターに
近い振動系を再現することで、コシのあるサウンドを実現した。
このメイプル材によるセンターブロックはスノコ状のスプルース材を挟み込んだ
形で接着され、ボディー内部に角材のメイプルを埋め込む製作上の難しさを
回避し、サウンド面にもトップの振動を止めない影響を及ぼしている。

トップ材には3プライのラミネートメイプルが使用されることで、低音弦側の
フィードバックを防ぐと当時に充実感のあるサスティーンを再現している。
あえてスプルース材を使わない理由はここにあった。また、新構造のダブル
カッタウェイはネックがほぼ最終フレットまで露出する事で、より斬新な
プレイをコントロールできるよう設計されており、この構造を可能としたのも
センターブロックにメイプル材を使用する事で一段とジョイント強度を高めている。
特に振動系には重要な部分として、ストップテールピースの採用が上げられる。
レスポール等のソリッドギターに使用されているものと同じ物が採用されて
いるが、メイプル材のセンターブロックであるからこそ、スタッドをボディーに
打ち込むことを可能とし、レスポール特有のロングサスティーンをも可能として
いるのである。

1962年にモデルチェンジが行われ、数カ所のマイナーチェンジが行われる。
ドットポジションマークからブロックポジションマークへの変更、ピックアップは
”パテントアプライドフォー(通称パフ)”から、特許ナンバーの入ったデカール
タイプ(通称ナンバード)へと63年頃より移行される。ES-335の特徴として触れて
きたセンターブロックも構造が変更され、姉妹機であるES-345やES-355に搭載され
ていたバリトーンスイッチ(トーンコントローラー)の可変トーンを司るユニットが
収まるスペースがリアピックアップ下部にもうけられた。

ネックの握りも60年より薄目のネック形状へと変更されており、このネックの薄さと
ナンバードピックアップに使用されるコイルの変更とセンターブロックの形状変更
により、ドットポジションマーク仕様とブロックポジションマークの仕様では
サウンドが異なる。ドットポジションマーク仕様のサウンドの特徴として、より
タイトでサスティーンのあるサウンドが上げられ、ブロックポジションマーク
仕様では、センターブロックのリアピックアップ下部のスペースによる若干の
セミホロー効果と、ストップテールピースからブランコテールピースに変更された
事による弦のテンションの違から、やや甘めで色気のあるサウンドが特徴といえる。

1965年にもマイナーチェンジが行われ、ヘッド角が17度から14度へと変更された。
またこの頃より、ネックの形状が細い形状となり、ナローネックと呼ばれている。
ナローネックのモデルでは、パーカッツシブなサウンドが特徴で、歯切れの良い
カッティングには最適である。また、66年にはさり気なくニッケルからクロームの
メッキ加工への変更も行われるが、気が付いてしまうと非常に気になるところでもある。
 1969年になると、他モデル同様にマホガニー3ピースネックが作用され、68年からは
Fホールのサイズもやや大きめのモデルと若干の仕様が行われる。
このことは、以前まではリアピックアップのキャビティーからアッセンブリーの
ポット類などの出し入れを行っていたが、Fホールを大きくしこの穴からも出し入れ
できることで作業の簡略化が図られている。
70年代に入ると、ウォルナットカラーや72年頃のピックアップカバーにGIBSONと
刻印の入ったモデルも登場する。75年までのナンバードピックアップ(ステッカー
タイプ)、マホガニーネック、ABR-1ブリッジ仕様がヴィンテージギターとして
現在カテゴライズされている。

現行のギブソン社では、カスタムショップにてES-335は生産をつづけられており、
中でもヒストリック・コレクションのES-335では上記の仕様が受け継がれている。
歴史に準じたトップの製作工程を辿るため、ギブソン工場がミシガン州カラマズーに
有った頃から使用されているプレス機械を用いてトップ材をプレスし、その殆どが
手作りで製作されている。購入の際、迷ってしまう59年モデルと63年モデルであるが、
仕様の違いから来るサウンドと演奏ジャンルによって選択する事が出来るほど、
ヒスコレの完成度は高い。また、昨年にカスタムショップから発売されたクラプトンが
クリーム時代に使用していたES-335を完全復刻したモデルは、即日完売状態で最高の
完成度であった。

 クラプトンがニューヨークのクリスティーズにてオークションにかけたこの1964年の
ES-335チェリーは、アメリカ最大の楽器チェーン店”ギターセンター”によって落札
され、ギターセンターはギブソンカスタムショップへ、このES-335を持ち込むことと
なる。カスタムショップスタッフは、ネックシェイプから、ボディーの傷、ケースに
至るまで見事に再現する事に成功し、発売までこぎ着けることが出来た。ヒストリック
コレクションに打ち込むギブソン社の姿勢こそが、この一大事業を成功へと導いたと
いえるだろう。

まさにレジェンダリ〜!


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<プロフェッサー岸本:プロフィール>
平成8年入社。現渋谷店のサブマネージャー。
ヴェンテージギターに関しての知識はイシバシでNo.1!
プロミュージシャンもお得意様にとても多く、彼のマインドに惚れ込み
多数お店に通っていただいている。
また、英語力もまずまずの為、直接ギター工場のマスター・ビルダーと
話し合いする事も。彼自身のフェイバリット・ミュージックは
カントリーロック、ブルーグラス等。
「親切丁寧な接客」をモットーに、ヴィンテージギター、高額ギターの
ご相談等、いつでも渋谷店にてお待ちしております。



59年製 ES-335TD

59年製 ES-335TD

HC 59 ES-335

HC 59 ES-335

67年製 ES-335TD

67年製 ES-335TD

HC 63 ES-335

HC 63 ES-335

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