Ishibashi Mail Magazine Vol.36

ノイの城 / 平山照継


 80年代の初頭、私はNOVELAというバンドに入れ込んでいた。以前このコーナーでも
紹介したが中性的でハードロック。しかも私の大好きなプログレの要素も入っていると
いう一石二鳥のバンドであった。”プログレ・ハード”なるよく解らんジャンルはこの
頃に出来たのではないかと思う。

 とにかくデビューライブから絶頂期を迎える83年の中野サンプラザでのライブまで
コンサートに行きまくったバンドである。そんなNOVELAにも陰りが見えてきたのが
83年後半頃で、このアルバム「ノイの城」はちょうどその頃に発売された。バンドの
スポークスマンであるギターリスト、平山照継の初ソロアルバムである。
 音楽的にはNOVELAとは全く異なり、ハードさはほとんど無い。その代わりに加わった
新たな音楽性は女性ヴォーカルである。今聞くと大変アニメチックな歌い方ではあるが
イギリスのバンド「ルネッサンス」のアニー・ハズラムに通じるところがある。

 楽曲はこれまた私の大好きな組曲になっており、アルバムに起承転結がはっきりと
表れているのだ。その楽曲に柔らかな女性ヴォーカルがプラスされ、最終的にはオー
ケストレーションで幕を閉じるというプログレの典型的パターンでもあった。

 前記の83年のNOVELAのサンプラザ公演は2枚組みのライブアルバムになった。しかし
この後、結成からのヴォーカリストでもある五十嵐久勝が脱退することになる。NOVELA
としてのライブ活動がままならない時にライブを体験したのが、この平山照継のソロ
バンドでのライブであった。確か84年の4月、渋谷にある東横劇場で行われ、そのとき
より活動バンド名が「テルズ・シンフォニア」となった気がする。

 このライブも非常に完成度が高く、とても感動した思い出がある。ソロ名義での曲は
この「ノイの城」しかまだ存在していなかったので、ライブではカバー曲も行われて
いた。このときもルネッサンスの名曲、”オーシャン・ジプシー”を演奏したのが
とても印象的であった。ヴォーカルはアルバムでも歌っている下町香織で、ライブでも
アルバム同様の歌唱力で感動したのを覚えている。

 そしてバンドはこの後より「テルズ・シンフォニア」となりアルバムを数枚出して
いる。一方、NOVELAは85年に新メンバーにてアルバムを出すが、以前のパワーや楽曲の
素晴らしさは感じられず、私も聞かなくなってしまい、その後すぐに解散を迎えること
となる。

 いまでもたまにNOVELAは活動しているようだし、テルズ・シンフォニアも見てみたい。
再結成が盛んな時代だけに是非に見てみたいバンドの一つでもある。最近、このアルバム
がリマスターされ、発売されたようである。しかも曲が多く収録されているらしい!
また買い直しをしなければならないのか・・・ ずるいョ、レコード会社さん!
とにかくこの1枚を聞け!


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