Ishibashi Mail Magazine Vol.29

MURASAKI / 紫

 オキナワン・ハードロックの中心的バンド、”紫”のファーストアルバム。結成は70年初期
であるが、75年にアルバム発売時のメンバーとなる。このバンドがアルバム発売前に本土上陸
になるのは、75年の8月に大阪で行われた「8・8 ROCK DAY」でのことであった。

 「8・8 ROCK DAY」とは当時、ヤマハが主催していたアマチュアバンド・コンテストで、この
コンテストに沖縄で当時人気実力共にNo.1であった”紫”が出演したのだから、全ての注目は
このバンド以外なかった程だ。”紫”のバンド構成はVo,Gt×2,Ba,Key,Drの6人組で、その中の
Keyのジョージ紫がバンドのスポークスマンである。そしてこの「8・8 ROCK DAY」で行われた
ライブ・パフォーマンスは2枚組のレコードになっており、その中に”紫”は4曲収録されている。
 その中の1曲にディープ・パープルの”ハイウェイ・スター”が収録されているのだが
これがまた完成度が高く、とても日本のバンドがプレイしているとは思えないほどである。
もともと”紫”は沖縄のタイガーというクラブで、米兵相手に活動を続けていたことから、英語
の発音等は全く持って問題なく、当時ありがちな日本語英語ではなかったのが凄い!

 そして76年にこのアルバムでメジャーデビューとなる。アルバムにはディープ・パープルの
”レイジー”も収録されており、当然全曲英語で歌っている。とにかくグルーヴ感が多くの日本の
バンドと異なり、デビュー・アルバムとは思えないほどの玄人さを出している。そしてLPには
無かったことだが、CDには同じく76年に発売されたシングル(当時初の30cm盤/45回転)の
”FREE”を含め、3曲が追加収録されているので要チェックです。
 そしてこのアルバムの代表曲は、何と言っても1曲目の”Double Dealing Woman”で、ライブ
ではオープニングやアンコール1曲目に良く使われていた。

 そしてバンドの快進撃スピードは異常に速く、同年暮れに2枚目のアルバム「IMPACT」の発売と
なる。このアルバムにも”Mother Nature's Plight”という名曲が収録されている。沖縄民謡を
曲中に入れるなど独自のアイディアが盛り込まれたアルバムになっている。こちらも必聴ッス!

 私が”紫”をはじめて見る事になるのは、77年の夏に行われた「NEW WAVE CONCERT」という
ライブで当時人気絶頂のBOW WOWと、”気絶するほど悩ましい”を出した頃のCharとのジョイント
・コンサートであった。当然、”紫”は特別待遇っぽくトリを務め、BOW WOWもCharも決して
ひけを取らない演奏であったが、"紫”の存在感はとんでもないものだったのを記憶している。
バンドはこの年に2枚組のライブ・アルバムをリリースするが、翌年の78年に突然解散してしまう。
毎回、言うがこの当時の日本のバンドの寿命はほぼ3年なのである。実に悲しい!

 この後、メンバーは沖縄にいたもうひとつの人気バンド”コンディション・グリーン”への
加入や、スポークスマンのジョージ紫は自らバンドを作ったりと活動を続けていく。
しかし、どれもパッとすることもなく5年の月日が流れたが、いきなり83年8月に一時再結成され
沖縄と東京の日比谷野音にてライブを行う。勿論、見に行ったがこれまたすぐに解散。
その後、2度ほど限定結成をしているが今はどうなっていることやら・・・。最近、沖縄のバンド
の活動が良く目立つ時代であるが、これと同じ時代が30年ほど前にもあったことを忘れないで
欲しいのである。そしてなんとこの”紫”のこのアルバムと「IMPACT」、2枚組ライブアルバムの
「DO IN OUR THING」がデジタルリマスター・紙ジャケ化になると聞いた。嬉しいではないか!
とにかくこの1枚を聞け!


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