Ishibashi Mail Magazine Vol.27

Chapter:21 CHRONICLES LIVE 1975 / RICK WAKEMAN

 プログレ界の2大キーボーディストといったら、EL&Pのキース・エマーソンとこのリック・ウェイ
クマンの名前が真っ先に出てくる。オルガンを中心プレイするエマーソンに対し、ウェイクマンは
シンセが中心である。この映像ではそのシンセのプレイが一際目立っている!

 70年代中期、リックの在籍していた”YES”はやや低迷期にあり、メンバーが挙ってソロ・アル
バムを製作していた時期でもある。イエスのなかでも73年よりソロアルバムを製作していたリックは
そのソロの曲を度々"YES”のライブの自身のソロパートに取り入れていたのは有名である。
 そして74年に発売したソロアルバム「JOURNEY TO THE CENTRE OF THE EARTH」を発売した後に
行われたツアーがこのライブ映像である。

 75年2月、場所はオーストラリアのメルボルンで行われたこのライブは、メルボルン・フィル
ハーモニック・オーケストラを従えたライブで大変大掛かりな物になっている。そしてこの一ヶ月
ほど前の1月にはほぼ同じメンバーで来日している(見られなくて残念!)
何よりもビックリすることはこの時代にオーケストラを従えてツアーするソロアーティストが
いただろうか?またビックリするところはそれだけではない。昔からだがリックの衣装がそれだ。
中世を意識しているのだろうか、長いマントのような衣装で演奏する姿はかなり強烈な印象で
あった。

 演奏曲目は主に「JOURNEY TO THE CENTRE OF THE EARTH」が中心で、実際のステージはバンドで
演奏する第1部と、オーケストラで演奏する第2部の2部構成だったと聞いている。そして注目すべき
はリックのキーボード郡である。前記に述べたキース・エマーソンは時期にもよるがハモンドに
ムーグとそれほど多くの機材に囲まれていなかったが、リックは反対にいつでも全開の機材に囲まれ
ている。主なものはグランドピアノ、メロトロンが2台、ミニムーグも2台、ハモンドC-3、ホーナー・
クラビネット、そしてRMIのエレクトリック・ピアノである。RMIは80年にヤマハのCP-80が登場する
までは高額エレピの代名詞で、よくプログレ・アーティストは使用していた。
 ジェネシスのトニー・バンクスも使用していることで有名である。また、グランドピアノは高さを
整える為か台の上に載っているのも面白い。
 そんなリックの機材を更に見たい人は73年に発売したソロアルバム「THE SIX WIVES OF HENRY Ⅵ」
の中ジャケを見てください。(アナログ盤か紙ジャケCD)俺はこの時代にこんなに機材を持っている
ぞと言わんばかりに、しっかりと機材が説明入りで映っております。

そしてもうひとつ特筆すべき点は、ヴォーカルのゲイリー・ホプキンスである。ロッド・スチュワート
ばりのシャガレた声が特徴であるが、この後日本のあるバンドに加入する。フリーやフェイセスに在籍
していた山内テツ(Ba)が日本に帰国した際に作ったバンド、”テツ&グットタイムス・ロールバンド”
というバンドのヴォーカリストにもなっている。そしてこのバンドのギターリストは四人囃子の脱退した
森園氏でもあったのも有名。

 この映像のほかにも90年のLIVEも映像化されているが、バンドセットのみで迫力に関してはこちら
に軍配が上がる。そして私が初めて生リックを見るのは、この映像の15年も後の90年にナントも不思議
なバンドでの来日の際であった。メンバーはヴォーカルにジョン・アンダーソン、ギターにスティーブ・
ハウ、ドラムにビル・ブラッフォード、そしてキーボードにリックであるが、ココまで揃っていても
バンド名は”YES”ではなかった。その名も「ANDERSON,BRUFORD,WAKEMAN,HOWE」正にいい加減にして
くれという状態であった。クリス・スクワイヤーが居ないことで”YES”と名乗れないなどと、いかにも
ビックバンドの悩みと言ったところであろうか。

 最近ではまたオリジナルメンバーでの"YES"が活動をしている。しかし、その一方でスティーブ・ハウ
は先日"ASIA”で来日していた。もう何がなんだかわからないが、この時代の音楽が聴ければ良しと
しなければやってられないゼ!


[CHRONICLES LIVE 1975 / RICK WAKEMAN]

1.CATHERINE PARR
2.GUINEVERE
3.JOURNEY TO THE CENTRE OF THE EARTH
4.CHTHERINE HOWARD
5.MERLIN THE MAGICIAN
6.ANN BOLEYE/REPRISE FROM THE FOREST

Rick Wakeman (Key)
Jeffrey Crampton (Gt)
Roger Newell (Ba)
Barney James (Dr)
Garry Hopkins (Vo)
Ashley Holt (Vo)
John Hodgson (Perc)

Melbourne Philharmonic Orchestra
Melbourne Chamber Choir
Verdon Williams (Conductor)


LDジャケット。DVDとは大幅に違う

90年のライブ映像。だいぶオッサンになっているリック。

ピアノソロアルバム「Country Airs」。ヒーリング音楽としても有名


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