Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [BRAIN SALAD SURGERY / EMERSON, LAKE & PALMER]



 今回ご紹介するアルバムは、1973年に発売されたEMERSON, LAKE & PALMERの通算5枚目のアルバム「BRAIN SALAD SURGERY」です。同じアーティストのアルバムは2度紹介しないというポリシーでしたが、最近はそれに反することが多く起こっているのがとても悲しいことです。

 EMERSON, LAKE & PALMERは3人の人気ミュージシャンによって1970年に結成されたバンドでした。THE NICEに在籍していたキーボーディストのキース・エマーゾン、当時人気絶頂のKING CRIMSONでベース&ボーカルを担当していたグレッグ・レイク、そしてATOMIC ROOSTERで活躍していた若手ドラマー、カール・パーマーの集結によって出来たスーパーバンドであります。

 結成の年に行われた“ワイト島ポップ・フェスティバル”ではデビューばかりとは思えないほどのパフォーマンスを披露し、ヘッドライナーであるジミ・ヘンドリックスを食うほどの人気であるとも言われている。バンドの人気はうなぎのぼりで、1972年に発売したアルバム「TRILOGY」(No.46で紹介)を発売後に日本初上陸を果たします。年代的に見ることは出来ませんでしたが、東京公演が行われた後楽園球場(現ビッグエッグ)で台風が直撃し、大阪公演である甲子園球場では客がなだれ込み、ステージを中断するほど荒れたライブとなったのは有名な話です。

バンドは1973年に自らレーベルを作ります。それが“マンティコア・レーベル”です。レーベルには同じプログレッシブバンドである、PFMやBANCOなども在籍していました。その“マンティコア・レーベル”第1弾の作品こそが今回紹介する「BRAIN SALAD SURGERY」です。前作の「TRILOGY」と大きく違うところは、超大作組曲“Karn Evil 9”が収録されてるところで、レコード(アナログ盤)ではB面1面のみでは収録しきれず、A面の5曲目から始まるという強力に長い曲なのです。

 しかし曲は長さを全く感じさせない起承転結がしっかりしている曲で、プログレ史上に残る名曲と私は思うのです。1曲目の“Jerusalem”で始まり、3曲目にはグレッグが切々と歌うバラード“Still...You Turn Me On”。そして“Karn Evil 9”へとつながっていく、その流れは本当に完璧なものと言えるでしょう。

何故ここまでこのアルバムへ思い込みがあるというと、「TRILOGY」の紹介の際にも書きましたが、中学生だった私が初めて買った洋楽のLPだったからなのです。初めて買うとき2枚のLPで悩みました! 1枚がDEEP PURPLEの「MACHINE HEAD」、そしてもう1枚がこのアルバムでした。このアルバムに決めた最大の理由はLPジャケットが見開き変形ジャケットであったのです。(笑)非常に中学生らしい決め方ではありますが、その後のロック人生に大きく変化をもたらすバンドになったことは言うまでもありません。

翌74年、「WELCOME BACK MY FRIENDS TO THE SHOW THAT NEVER ENDS... LADIES AND GENTLEMAN」というクソ長いタイトルのライブアルバムを発表し、バンドのスケールはさらに大きくなっていきます。1977年にはロックバンド史上初のオーケストラを帯同させてのツアーを敢行しますが、結果は金銭的に大きな損害を出して、その勢いは徐々に衰退していってしますのです。1980年ついにバンドは解散し、偶然にも私がこの業界に入った年でもありました。

1992年の再結成ツアーも勿論見に行きましたし、ナントいっても2016年4月にエマーソンはソロで来日する事になっていて、その公演も実に楽しみにしていました。しかし2016年3月10日、キース・エマーソンが他界! そのニュースは突然やってきたのでした。ここ最近、自分の中でのロックスターが数多く亡くなっていくのを本当に寂しく思います。自分たちにできることは、この残された音楽たちをずっとずっと聞きつづけていくことが大切なこととも今は感じるのです。とにかくこの1枚を聞け!!

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