Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [ RADIO K.A.O.S / ROGER WATERS ]



 今回紹介するアルバムは元ピンク・フロイドのベーシストでもあるプログレ界の大御所、ロジャー・ウォーターズが1987年に発売した「RADIO K.A.O.S」です。

 ロジャー・ウォーターズはデビッド・ギルモアと肩を並べるピンク・フロイドのフロントマンであった。コンセプトアルバムというものを世に定着させたのはロジャー・ウォーターズと言っても過言ではないと私は思うのです。そしてその代表作が「The Dark Side Of The Moon」であり、不動のものにしたのは「The Wall」なのであります。

 今回紹介する「RADIO K.A.O.S 」も、もちろんコンセプトアルバムなのであります。コンセプトの内容は話すと長くなるので、アルバムのライナー等を参考にしてください(笑)サウンド面では前作のアルバム「The Pros And Cons Of Hitch Hiking」でギターにエリック・クラプトンを起用し、ツアーも大成功に収めたが、今回紹介するアルバムのサウンドは前作に比べ大幅に変更されている。

 このアルバムの発売時、音楽シーンの流れはMTVに占拠されている時代でありました。ヒットチャートが先行し、多くのプログレッシブロックバンドもその音楽性を変更せざるを得ない状況であった。YESやGENESISもポップになり、ダンサブルになったのはこの時代である。もちろんロジャー・ウォーターズを同様であった。悪い意味ではなく新たな新境地をを切り開いたと言うか、永ちゃん風にいうと”新たなドアを開けた!”とでも言いましょうか・・・

 プログレッシブロックというと使う楽器もメロトロンやMoogシンセといったものが代表的ではあるが、このアルバムの特筆すべき点は、80年代最も最先端であった楽器”シンクラヴィア”の導入である。”シンクラヴィア”とは簡単に言うとシンセ、サンプラー、シーケンサーが一緒になったような楽器で、いわばワークステーションの元祖ともいえる楽器なのです。現代の機材を駆使して使っている方に言わせれば、”シンセ、サンプラー、シーケンサーが一緒になった楽器”なんて十数万で揃うじゃんと言うかもしれませんが、この時代はこれでも数千万円はしたのです。

 その”シンクラヴィア”を駆使して録音されたこのアルバムは、今までのロジャー・ウォーターズ・サウンドとは明らかに違っていたのです。チャートっぽい曲調もあるが、泣かせるメロディーラインもある。実にうまいコンセプトの流れなのであります。それでいてシッカリと参加アーティストにもこだわっている。クリムゾンでSAXを吹いていたメル・コリンズやマイク&ザ・メカニックスのポール・キャラック、クラプトン・バンドのギタリストでもあるアンディー・フェアウェザー・ロウなどが参加している。

 ただ唯一の誤算がアルバム発売時に行われたツアーであった。なんと再結成ピンクフロイドの”A Momentary Lapse Of Reason”のツアーと開催時期が合致してしまったのである。因縁なのか偶然なのかは解らないが、やはりネームバリューには勝てず、ピンクフロイドの圧勝であったそうだ。この辺からデビッド・ギルモア率いる新生フロイドとウォーターズの確執が更に深くなったともいえる。

 そしてアルバム発売の3年後、1990年東西ドイツの統合を記念して行われた「The Wall - Live In Berlin」では”The Wall”の完全再現をあらゆるアーティストと共に行い、ライブの最後に演奏されたこのアルバムのラスト曲、”The Tide Is Turning (After Live Aid)”は正に圧巻であった!

 時代は流れ、ギルモアとウォーターズは和解したが、キーボードのリック・ライトは2008年に他界した。プログレファンにとっては実に悲しい事である。なぜならピンクフロイドの再結成は2度とないのだから・・・ とにかくこの1枚を聞け!!
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