Ishibashi Mail Magazine

もう一度、この一枚を聞け! バックナンバー

「イシバシ・メールマガジン」初回発行以来、継続している人気コーナー”この1枚を聞け”の全てのバックナンバーを掲載しました。アルバム発売当時の時代背景やエピソードも満載!ややマニアックな一枚をもう一度要チェックです!


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この一枚を聞け! [TOKYO TAPES / SCORPIONS]



 今回紹介するのはスコーピオンズの1978年初来日公演を収録したライブ盤「TOKYO TAPES」です。邦タイトルは”蠍団爆発!〜スコーピオンズ・ライブ”と毎回笑わせてくれる70年代のタイトルとなっています。

 スコーピオンズのデビューは1972年、ギタリストのルドルフ・シェンカーを中心に結成された。結成当時のもう一人のギタリストにはご存知、弟のマイケル・シェンカーが加入していた。73年にマイケルがUFOに加入し、その後に加入したのが奇才ウルリッヒ・ロスである。

 現在ではウリ・ジョン・ロートなどと呼ばれているが、50代過ぎの方はたぶん皆、ウルリッヒ・ロス若しくはウリ・ロスと呼んでいただろう。この頃のスコーピオンズのサウンドといえば、やはりウリのギターサウンドが中心で、ジミヘンばりのアグレッシブさにフェイズやディレイを駆使したサウンドは非常にインパクトのあるものであった。それに加えてサイドギター(懐し!)的な役割のルドルフが強烈に動くステージアクションでバンドに花を添えていた。

 実は私もこのアルバムの収録がされた1978年4月24日に会場の中野サンプラザに足を運んでいる。78年の4月は来日アーティストラッシュで24日にこの公演を見て、その4日後に武道館へチープトリックの初来日公演を見に行っている。対照的なのはスコーピオンズはロック好きなお兄さんお姉さんが集まるライブなのに対して、チープトリックはアイドル歌手を見に行っているような雰囲気であった。そのチープトリックの初来日公演もライブ録音され「AT BUDOKAN」としてリリースされ名盤になっている。まさにライブ盤が非常によく売れた時代であったことがよく解る。

 1曲目の”ALL NIGHT LONG”から飛ばしまくっているアルバムであるが、4曲目に名曲である”IN TRANCE”が収録されている。ウリのギターが強烈に前面に出ていて素晴らしい出来のバラードになっている。そしてこの曲を聴くと当時の日本人のライブを聞く姿勢も伝わってくるのだ。曲中にボーカルのクラウス・マイネが観客をあおり一緒に歌うシーンがあるのだが、今と違ってこの時代はやはり皆、恥ずかしがっているのだ!高校生だった私も当然であるが、やはり周りの目が気になってしまうのです。その証拠に観客のあおりのシーンになると録音したレベルが少し上がるのです。少しのノイズも乗るので良くわかります。マニアックな話ですが、懐かしい思い出です。

 しかも後にも先にもウリ・ロスを見るのはこれが最後になります。日本公演直後にウリは脱退し、バンドにはUFOを脱退した弟マイケルが戻ってきたのです。79年にはニューアルバム「LOVE DRIVE」を完成させ、2度目の来日がマイケルを含めたメンバーで決定したのです。しかし! 直後にマイケルはあっけなく脱退し、新ギターリストにマティヤス・ヤプスでの公演となったのです。以前にもレビューで話したことがあるのですが、この時のマティアスへのブーイングはとても酷いものでした。

 そして、スコーピオンズは40年以上の活動に終止符を打つと発表し、”Final Sting World Tour 2012 ”をスタートさせた。オフィシャルページにはアジアの文字も刻まれているが、果して日本には来てくれるのだろうか?やはり最後にはクラウスが唄う”荒城の月”をもう一度聞きたいものだ。それまでは・・・とにかくこの一枚を聞け!
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